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第64話 雑魚と呼ばれた者の意地
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「泣けるねえ、笑えるねえ、最後に残ったのがこんな雑魚だとはねえ!!」
ヴェルガは笑いを抑えるように、くっくっ、とくぐもった声を響かせる。
必死で文字を書き続ける俺を前に、彼には完全な余裕が生まれていた。
「キミを守るモンスターは、あとはそこの骨だけ! 面白いねえ、そんな雑魚はねえ、宮殿の文字召喚術師だってすぐに召喚できるレベルだよ!」
そうして、ヴェルガの表情から急に感情が消えた。
それまで楽しんでいたものに、いきなり興味を失ったような、そんな変貌。
「面白かった戯れも、もう終わりだねえ。せっかくだ、そこの雑魚たちには私の持てる限り、最大の力を見せてあげよう」
ヴェルガの背後に、炎、水、雷、聖光、闇……その他、様々な属性の魔法球が出現する。
その数、十。
『雑魚と呼ばれる死後』の数と同じだ。
「キミは私に負けてしまったけどねえ、かなりねえ、強かったと思うねえ? 私とやりあわなければ、王国で名の知れた文字召喚術師になれたかもねえ? だが、私、勝つ! キミ、死ぬ!」
火炎球が『雑魚と呼ばれる死後』の一体に投げつけられる。
身体が業火に包まれ、絶叫と共に骨はバラバラになった。
水流球が別の『雑魚と呼ばれる死後』の身体を貫き、電撃球が骨を真っ黒に焦がす。
彼らの断末魔が聞こえる中で、俺は手を休めない。
あと十五秒……! あと十五秒で終わる!
「これで最後の一体だねえッ!」
聖光球が最後の『雑魚と呼ばれる死後』の身体を破壊した。
あと十五秒で全てが書き終わる。
だが、盾となる仲間はもう存在しない。
ヴェルガは興奮したように目を見開いて、ゆっくりと歩み寄ってくる。
俺はうなだれ、全ての抵抗をやめた。
ヴェルガから俺の表情は見えない。
彼は恐怖に歪んでいるであろう俺の顔を想像して、ふひっと気色の悪い声を漏らす。
だが、うなだれ、ヴェルガから見えない俺の口元は――笑っていた。
「……まだ終わりじゃないぞ、ヴェルガ。――遠隔召喚ッ!」
俺はバッと顔を上げ、腹の底から叫ぶ。
遠隔召喚のやり方は、初めて遠隔召喚を見たとき、いつか使えるかもしれないと思って、アリカに聞いておいた。
それが今ここで、役に立ったのだ。
「なっ……!」
俺の予想外の行動にヴェルガの顔が引きつった。
だが、俺の目の前に現れたモンスターがたった一体であることを確認して、余裕の笑みを取り戻す。
「悪いねえ、その一体じゃねえ、数秒ももたないだろうねえ!!」
ヴェルガの周囲に再度、炎や、水、その他大量の属性球が出現する。
しかし、俺が絶望することはない。
俺の前に遠隔召喚されたのは、確かにたった一体のモンスター。
だが、そいつは大きな戦力になるA級モンスターでありながら、今まで戦闘に参加せず、『雑魚と呼ばれる死後』がやられる様を、遠くから観察していた切り札である。
「あと十五秒だッ! 稼げるな? ――『堕落した王冠』ッ!!」
そう、俺を守る最後の砦。
それは王座に座り、今まで場を静観していた『雑魚と呼ばれる死後』たちの王。
俺が記述を再開したのと同時、彼は王座から立ち上がり、魔術師エイドス・ヴェルガを正面から見据える。
「我が臣民たちがやられていく様、しかと見届けた。臣民の死は無駄にせぬ。召喚主が渇望する十五秒の猶予、我がここに創出してみせよう――ッ!!」
「あんな雑魚どもを束ねる見せかけの王など、私の魔術の前には、一秒たりとももつまいッ!」
エイドス・ヴェルガの渾身の魔法球が『堕落した王冠』を襲う。
何の備えもなければ、一瞬で『堕落した王冠』を屠る一撃。
だが――。
「我が臣民たちの犠牲を甘く見るなッ!!」
『堕落した王冠』は武器を持たない右手を振りかざし、最初に襲い掛かったヴェルガの火炎球をいとも容易く切り裂いた。
「な、何が起こって――」
困惑するヴェルガには事態が把握できない。
水、雷、聖光、闇、風、土――全ての魔法球は一瞬のうちに切り裂かれ、『堕落した王冠』に傷一つつけることができなかった。
ヴェルガの顔から余裕が消え失せた。
俺の記述は最後の行に入る。焦った彼は聖巨人に攻撃するように命令を下した。
しかし、『堕落した王冠』は聖巨人が放つ光弾さえも寄せ付けず、大きな右拳による一撃さえ、一本の指で受け止める。
動転したヴェルガは再度、魔法球の攻撃を集中させるが、やはり一撃も当たることはない。
彼の顔が青白くなっていく。
『堕落した王冠』、その能力をヴェルガは知らなかった。
すでに知っている者からすれば、単純なことである。
『雑魚と呼ばれる死後』を倒す時に用いた攻撃手段は全て無力化される。ただ、それだけのこと。
ヴェルガは目を見開き、己の持てる全ての力を絞り出す。
現れたのは、さらに多種の魔法球。
そして、その中には『雑魚と呼ばれる死後』に対して使われなかったものも混じっていた。
いくつかの魔法球が『堕落した王冠』の身体を貫通し、骨の王は地に伏す。
ついに壁を形成するものはただの一人もいなくなった。
「はぁはははははははははッ!! 見ろッ!! やったぞッ!! 私に勝てるものなんかいないんだからねえ!!」
狂ったように歓喜の笑いを見せるヴェルガ。
だが。
「――ご苦労だった。配下たち」
笑っていたヴェルガの動きがぴたりと止まった。
彼の瞳は、ゆっくりと俺の姿を捉える。
俺と、顕現の始まった羊皮紙を。
光に包まれた羊皮紙を前にして、俺はエイドス・ヴェルガを睨みつける。
顕現待ちはない。記述はもう終わった。
――俺たちの、勝利だ。
仲間たちの多大なる尽力の上に今、最強のモンスターが召喚される。
「残念だったな、エイドス・ヴェルガ。さあ、どちらが最強の文字召喚術師か、今ここではっきりさせようじゃないか」
ヴェルガは笑いを抑えるように、くっくっ、とくぐもった声を響かせる。
必死で文字を書き続ける俺を前に、彼には完全な余裕が生まれていた。
「キミを守るモンスターは、あとはそこの骨だけ! 面白いねえ、そんな雑魚はねえ、宮殿の文字召喚術師だってすぐに召喚できるレベルだよ!」
そうして、ヴェルガの表情から急に感情が消えた。
それまで楽しんでいたものに、いきなり興味を失ったような、そんな変貌。
「面白かった戯れも、もう終わりだねえ。せっかくだ、そこの雑魚たちには私の持てる限り、最大の力を見せてあげよう」
ヴェルガの背後に、炎、水、雷、聖光、闇……その他、様々な属性の魔法球が出現する。
その数、十。
『雑魚と呼ばれる死後』の数と同じだ。
「キミは私に負けてしまったけどねえ、かなりねえ、強かったと思うねえ? 私とやりあわなければ、王国で名の知れた文字召喚術師になれたかもねえ? だが、私、勝つ! キミ、死ぬ!」
火炎球が『雑魚と呼ばれる死後』の一体に投げつけられる。
身体が業火に包まれ、絶叫と共に骨はバラバラになった。
水流球が別の『雑魚と呼ばれる死後』の身体を貫き、電撃球が骨を真っ黒に焦がす。
彼らの断末魔が聞こえる中で、俺は手を休めない。
あと十五秒……! あと十五秒で終わる!
「これで最後の一体だねえッ!」
聖光球が最後の『雑魚と呼ばれる死後』の身体を破壊した。
あと十五秒で全てが書き終わる。
だが、盾となる仲間はもう存在しない。
ヴェルガは興奮したように目を見開いて、ゆっくりと歩み寄ってくる。
俺はうなだれ、全ての抵抗をやめた。
ヴェルガから俺の表情は見えない。
彼は恐怖に歪んでいるであろう俺の顔を想像して、ふひっと気色の悪い声を漏らす。
だが、うなだれ、ヴェルガから見えない俺の口元は――笑っていた。
「……まだ終わりじゃないぞ、ヴェルガ。――遠隔召喚ッ!」
俺はバッと顔を上げ、腹の底から叫ぶ。
遠隔召喚のやり方は、初めて遠隔召喚を見たとき、いつか使えるかもしれないと思って、アリカに聞いておいた。
それが今ここで、役に立ったのだ。
「なっ……!」
俺の予想外の行動にヴェルガの顔が引きつった。
だが、俺の目の前に現れたモンスターがたった一体であることを確認して、余裕の笑みを取り戻す。
「悪いねえ、その一体じゃねえ、数秒ももたないだろうねえ!!」
ヴェルガの周囲に再度、炎や、水、その他大量の属性球が出現する。
しかし、俺が絶望することはない。
俺の前に遠隔召喚されたのは、確かにたった一体のモンスター。
だが、そいつは大きな戦力になるA級モンスターでありながら、今まで戦闘に参加せず、『雑魚と呼ばれる死後』がやられる様を、遠くから観察していた切り札である。
「あと十五秒だッ! 稼げるな? ――『堕落した王冠』ッ!!」
そう、俺を守る最後の砦。
それは王座に座り、今まで場を静観していた『雑魚と呼ばれる死後』たちの王。
俺が記述を再開したのと同時、彼は王座から立ち上がり、魔術師エイドス・ヴェルガを正面から見据える。
「我が臣民たちがやられていく様、しかと見届けた。臣民の死は無駄にせぬ。召喚主が渇望する十五秒の猶予、我がここに創出してみせよう――ッ!!」
「あんな雑魚どもを束ねる見せかけの王など、私の魔術の前には、一秒たりとももつまいッ!」
エイドス・ヴェルガの渾身の魔法球が『堕落した王冠』を襲う。
何の備えもなければ、一瞬で『堕落した王冠』を屠る一撃。
だが――。
「我が臣民たちの犠牲を甘く見るなッ!!」
『堕落した王冠』は武器を持たない右手を振りかざし、最初に襲い掛かったヴェルガの火炎球をいとも容易く切り裂いた。
「な、何が起こって――」
困惑するヴェルガには事態が把握できない。
水、雷、聖光、闇、風、土――全ての魔法球は一瞬のうちに切り裂かれ、『堕落した王冠』に傷一つつけることができなかった。
ヴェルガの顔から余裕が消え失せた。
俺の記述は最後の行に入る。焦った彼は聖巨人に攻撃するように命令を下した。
しかし、『堕落した王冠』は聖巨人が放つ光弾さえも寄せ付けず、大きな右拳による一撃さえ、一本の指で受け止める。
動転したヴェルガは再度、魔法球の攻撃を集中させるが、やはり一撃も当たることはない。
彼の顔が青白くなっていく。
『堕落した王冠』、その能力をヴェルガは知らなかった。
すでに知っている者からすれば、単純なことである。
『雑魚と呼ばれる死後』を倒す時に用いた攻撃手段は全て無力化される。ただ、それだけのこと。
ヴェルガは目を見開き、己の持てる全ての力を絞り出す。
現れたのは、さらに多種の魔法球。
そして、その中には『雑魚と呼ばれる死後』に対して使われなかったものも混じっていた。
いくつかの魔法球が『堕落した王冠』の身体を貫通し、骨の王は地に伏す。
ついに壁を形成するものはただの一人もいなくなった。
「はぁはははははははははッ!! 見ろッ!! やったぞッ!! 私に勝てるものなんかいないんだからねえ!!」
狂ったように歓喜の笑いを見せるヴェルガ。
だが。
「――ご苦労だった。配下たち」
笑っていたヴェルガの動きがぴたりと止まった。
彼の瞳は、ゆっくりと俺の姿を捉える。
俺と、顕現の始まった羊皮紙を。
光に包まれた羊皮紙を前にして、俺はエイドス・ヴェルガを睨みつける。
顕現待ちはない。記述はもう終わった。
――俺たちの、勝利だ。
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