クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

文字の大きさ
64 / 86

第64話 雑魚と呼ばれた者の意地

しおりを挟む
「泣けるねえ、笑えるねえ、最後に残ったのがこんな雑魚だとはねえ!!」

 ヴェルガは笑いを抑えるように、くっくっ、とくぐもった声を響かせる。

 必死で文字を書き続ける俺を前に、彼には完全な余裕が生まれていた。

「キミを守るモンスターは、あとはそこの骨だけ! 面白いねえ、そんな雑魚はねえ、宮殿の文字召喚術師だってすぐに召喚できるレベルだよ!」

 そうして、ヴェルガの表情から急に感情が消えた。

 それまで楽しんでいたものに、いきなり興味を失ったような、そんな変貌。

「面白かった戯れも、もう終わりだねえ。せっかくだ、そこの雑魚たちには私の持てる限り、最大の力を見せてあげよう」

 ヴェルガの背後に、炎、水、雷、聖光、闇……その他、様々な属性の魔法球が出現する。

 その数、十。

『雑魚と呼ばれる死後』の数と同じだ。

「キミは私に負けてしまったけどねえ、かなりねえ、強かったと思うねえ? 私とやりあわなければ、王国で名の知れた文字召喚術師になれたかもねえ? だが、私、勝つ! キミ、死ぬ!」

 火炎球が『雑魚と呼ばれる死後』の一体に投げつけられる。

 身体が業火に包まれ、絶叫と共に骨はバラバラになった。

 水流球が別の『雑魚と呼ばれる死後』の身体を貫き、電撃球が骨を真っ黒に焦がす。

 彼らの断末魔が聞こえる中で、俺は手を休めない。

 あと十五秒……! あと十五秒で終わる!

「これで最後の一体だねえッ!」

 聖光球が最後の『雑魚と呼ばれる死後』の身体を破壊した。

 あと十五秒で全てが書き終わる。

 だが、盾となる仲間はもう存在しない。

 ヴェルガは興奮したように目を見開いて、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 俺はうなだれ、全ての抵抗をやめた。

 ヴェルガから俺の表情は見えない。

 彼は恐怖に歪んでいるであろう俺の顔を想像して、ふひっと気色の悪い声を漏らす。

 だが、うなだれ、ヴェルガから見えない俺の口元は――笑っていた。

「……まだ終わりじゃないぞ、ヴェルガ。――遠隔召喚ッ!」

 俺はバッと顔を上げ、腹の底から叫ぶ。

 遠隔召喚のやり方は、初めて遠隔召喚を見たとき、いつか使えるかもしれないと思って、アリカに聞いておいた。

 それが今ここで、役に立ったのだ。

「なっ……!」

 俺の予想外の行動にヴェルガの顔が引きつった。

 だが、俺の目の前に現れたモンスターがたった一体であることを確認して、余裕の笑みを取り戻す。

「悪いねえ、その一体じゃねえ、数秒ももたないだろうねえ!!」

 ヴェルガの周囲に再度、炎や、水、その他大量の属性球が出現する。

 しかし、俺が絶望することはない。

 俺の前に遠隔召喚されたのは、確かにたった一体のモンスター。

 だが、そいつは大きな戦力になるA級モンスターでありながら、今まで戦闘に参加せず、『雑魚と呼ばれる死後』がやられる様を、遠くから観察していた、、、、、、切り札である。

「あと十五秒だッ! 稼げるな? ――『堕落した王冠』ッ!!」

 そう、俺を守る最後の砦。

 それは王座に座り、今まで場を静観していた『雑魚と呼ばれる死後』たちの王。

 俺が記述を再開したのと同時、彼は王座から立ち上がり、魔術師エイドス・ヴェルガを正面から見据える。

「我が臣民たちがやられていく様、しかと見届けた。臣民の死は無駄にせぬ。召喚主が渇望する十五秒の猶予、我がここに創出してみせよう――ッ!!」

「あんな雑魚どもを束ねる見せかけの王など、私の魔術の前には、一秒たりとももつまいッ!」

 エイドス・ヴェルガの渾身の魔法球が『堕落した王冠』を襲う。

 何の備えもなければ、一瞬で『堕落した王冠』を屠る一撃。
 だが――。

「我が臣民たちの犠牲を甘く見るなッ!!」

『堕落した王冠』は武器を持たない右手を振りかざし、最初に襲い掛かったヴェルガの火炎球をいとも容易く切り裂いた。

「な、何が起こって――」

 困惑するヴェルガには事態が把握できない。

 水、雷、聖光、闇、風、土――全ての魔法球は一瞬のうちに切り裂かれ、『堕落した王冠』に傷一つつけることができなかった。

 ヴェルガの顔から余裕が消え失せた。

 俺の記述は最後の行に入る。焦った彼は聖巨人に攻撃するように命令を下した。

 しかし、『堕落した王冠』は聖巨人が放つ光弾さえも寄せ付けず、大きな右拳による一撃さえ、一本の指で受け止める。

 動転したヴェルガは再度、魔法球の攻撃を集中させるが、やはり一撃も当たることはない。

 彼の顔が青白くなっていく。

『堕落した王冠』、その能力をヴェルガは知らなかった。

 すでに知っている者からすれば、単純なことである。

『雑魚と呼ばれる死後』を倒す時に用いた攻撃手段は全て無力化される。ただ、それだけのこと。

 ヴェルガは目を見開き、己の持てる全ての力を絞り出す。

 現れたのは、さらに多種の魔法球。

 そして、その中には『雑魚と呼ばれる死後』に対して使われなかったものも混じっていた。

 いくつかの魔法球が『堕落した王冠』の身体を貫通し、骨の王は地に伏す。

 ついに壁を形成するものはただの一人もいなくなった。

「はぁはははははははははッ!! 見ろッ!! やったぞッ!! 私に勝てるものなんかいないんだからねえ!!」

 狂ったように歓喜の笑いを見せるヴェルガ。

 だが。

「――ご苦労だった。配下たち」

 笑っていたヴェルガの動きがぴたりと止まった。
 彼の瞳は、ゆっくりと俺の姿を捉える。

 俺と、顕現の始まった羊皮紙を。

 光に包まれた羊皮紙を前にして、俺はエイドス・ヴェルガを睨みつける。

 顕現待ちはない。記述はもう終わった。

 ――俺たちの、勝利だ。

 仲間たちの多大なる尽力の上に今、最強のモンスターが召喚される。

「残念だったな、エイドス・ヴェルガ。さあ、どちらが最強の文字召喚術師か、今ここではっきりさせようじゃないか」
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

処理中です...