クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

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第72話 客をもてなせ!

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 『地獄骸』に担がれ、人間では実現できないスピードでダッシュして暗黒城に戻ってきた俺はすぐに暗黒城の技術班を招集した。

 暗黒城の外観を担当している『失敗した錬金術師』を筆頭に、材料生産のための各種モンスターが集まっている。

 そしてなぜか、目を輝かせてワクワクしているレーナが『失敗した錬金術師』の横で両拳を握ってやる気を見せていた。

 だが、もうレーナを説教している時間はない。無駄にやる気に溢れているようだし、彼女の手も借りたい。ご一行様はもうすぐそこまで迫っているのだ。

「『失敗した錬金術師』、お前はご一行様が到着する前に、城の外観をもっと煌びやかに改築しろ。火精霊や電気精霊の力を借りて、思いっきり視覚的な豪華を演出するんだ」

 俺の指示に『失敗した錬金術師』は戸惑ったように言う。

「し、しかし、召喚主。それほどの改築をする時間はありませんよ」

「あの速度だと、ご一行様が到着するのは早くても今日の夜。城の前面だけのハリボテでいい。なんとか仕上げてくれ。ご一行様には楽しんで帰ってもらうぞ」

 俺が苦渋の決断を口にすると、『失敗した錬金術師』は尊敬するように瞳を輝かせ、俺を見つめる。

「さすがは召喚主さま! 観光事業にも乗り出すとは敏腕魔王様ですね!」

「やりたくてやってるわけじゃないんだって……」

「ォォォ、ォォォォォ……!!」

「とにかく、手の空いている者は手分けして、城の外観、内観を改造!」

「ォォォォォ……!」

「ご一行様が怖がりそうな姿の奴は、観光ツアー中は隠れてさせることにする!」

「ォォォォォォォオオオオ!!」

「――って、おい、誰だ! 『ゴースト』をここに呼んだ奴! ご一行様が怖がるから、しばらく隔離!」

 技術班もとい、観光地化計画班の中に混じっていた『ゴースト』を『雑魚死後』の誘導で暗黒城の中でも後方の部屋へと案内させる。

 あの『ゴースト』、試しに文字召喚してみた時に生んでしまった、ただ唸ることしかできない奴だが、どこかで機会を見てあいつにも活躍できる場を与えてやりたいものだ。

「とにかくこれ以上、魔王が怖いものだと印象を与えるのは絶対ダメだ。親しみやすい良い魔王であるということをご一行様には感じてもらって、観光地見物を満喫して帰ってもらおう」

「シュウトさま、意外とノリノリじゃないですか……?」

 レーナが小首を傾げて問うてくるが、

「何か言ったかな? 今回の元凶よ」

「ひっ! なんでもないですないです~~!」

 一睨みするとレーナは『失敗した錬金術師』の背後に素早く隠れ、そこから顔だけ出してじーっとこちらの様子を窺っている。

「ちなみにレーナ、お前が言っていたお土産販売計画だが、どこまで進んでいる?」

「へ? そうですねー、もう販売する商品は量産し終わっています! いつでも売り出せますよ!」

 と、危険はもうないと判断したのか、俺の前までやってきたレーナはなぜか誇らしげに胸を張ってふふんと鼻を鳴らす。

 制服っぽい彼女の服の上からでもわかる大きな胸が揺れるが、俺は視線を少し逸らして続ける。

「そういう頼んでもいないことの準備は早いよな、お前……ともかく、そのお土産販売はレーナの小遣い稼ぎじゃなく、暗黒城の事業一環として行う」

「えーーー! わたしのお小遣いがーーー!」

「……ちゃんと利益は分配するし、販売もお前だけじゃなく、暗黒城の面子で協力して回す。それなら問題ないだろ?」

「シュウト様の知名度を利用して、ガッポガッポお金持ち計画が……」

 ほんと、そういうところは頭が回るよね。この弟子。
 本音も聞けたので、同情の余地はなし。

「それは決定事項だ。お前が独占しようとするなら、営業許可は出しません」

「うぅ……わかりましたよ。で、でも、それならわたし以外もちゃんと止めてくださいね!」

 なんだか嫌な台詞が聞こえた。

「……わたし以外?」

「そうですよ、お師匠とオルビークちゃんもこの機会を狙ってお土産品作ってますから!」

 衝撃の事実発覚。そして、レーナが小汚く仲間を売った瞬間だった。

「ど、どいつもこいつも……『地獄骸』!」

「はっ!」

「今、名前の挙がった奴ら、全員ここに連れて来てくれ」

「畏まりました」

 そうして驚異の跳躍力を見せ、暗黒城の外壁に張り付いた『地獄骸』は奴らがいそうな場所から的確に侵入し、その後、「きゃー!」やら「やめるのじゃー!」やら抵抗の声がしばらく聞こえたのだった。
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