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第73話 魔王の威厳とは
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「……お前ら、全員おんなじこと考えてたのかよ」
俺の前に正座をしている人数はさっきよりも増えて、三人になっていた。
レーナ、アリカ、オルビークの三人娘である。
全員が項垂れており、逃げ出さないように配下モンスターたちが周囲を囲んでいる。
『地獄骸』が暗黒城に突入して数分もしないうちに、アリカとオルビークは首根っこを掴まれて、俺の前に突き出された。
無論、その理由は各々が観光名物の製造の計画を練っていたからだ。
「わ、私の一攫千金の夢が……」
「わらわの潤沢な道楽資金調達が……」
「皆、俺をダシにしてセコい計画考えすぎだろ!」
俺が頭を抱えて叫ぶと、アリカは不服そうに口を突き出して小声で言う。
「シュウトさまだって、あれだけ好き放題やったんだから、すごく心配した私たちに少しは優しくしてもいいんじゃないですかね?」
「ぐっ……」
それを言われると、返す言葉がない。
確かにアルギア召喚宮殿での一件は冷静さを欠き過ぎていたし、アリカを含む配下たちには大変な迷惑をかけた。
「わらわも過酷な戦闘の疲れを癒すために、少しくらい楽しいことをしたいのじゃ……」
オルビークも弱々しい声色でそう言うが、口元はにやにやとしていて明らかに演技である。
だが、その言葉も頭ごなしに否定はできない。
だから、俺は観念したように頭をかきながら息を吐いた。
「わかった、わかったよ。全員に土産物でも観光名物でも、なんでも作る許可を与える。他にも何かやりたい催し物があったら全て許可する。あれだけの戦闘の後だ。休息も兼ねて、各々好きなことをしていいぞ」
「やりましたーーー! さすがお師匠とオルビークちゃん、見事シュウトさまの良心につけ込みましたね!」
「ふふふ、簡単すぎたわ、レーナ。シュウトさんは優しいから楽勝よ!」
「シュウトの扱いは容易いの! これでせっかく考案した観光名物がダメにならなくて済んだのじゃ!」
許可が下りた瞬間に好き放題言い出す三人娘。
「あのー、全部聞こえてるんですけど……」
「だからなんですか、シュウトさま! むふふ、もう許可は下りました! 前言撤回はなしですからね!」
そう言って、和気藹々としたレーナたち三人娘は観光地化計画班のモンスター何匹かを手伝いとして無理やり引き連れ、俺が言動を撤回する前に逃げろとばかりに暗黒城内にさっさと駆け込んでいった。
俺は真顔で振り返って、控えていた『地獄骸』に問う。
「俺、魔王の威厳なさすぎじゃね……?」
「それは、その、そうですな……あー」
答えに詰まる『地獄骸』と暗い顔の俺を置き去りに、残った観光地化計画班のモンスターたちも無言でそれぞれの作業場へと向かうのだった。
俺の前に正座をしている人数はさっきよりも増えて、三人になっていた。
レーナ、アリカ、オルビークの三人娘である。
全員が項垂れており、逃げ出さないように配下モンスターたちが周囲を囲んでいる。
『地獄骸』が暗黒城に突入して数分もしないうちに、アリカとオルビークは首根っこを掴まれて、俺の前に突き出された。
無論、その理由は各々が観光名物の製造の計画を練っていたからだ。
「わ、私の一攫千金の夢が……」
「わらわの潤沢な道楽資金調達が……」
「皆、俺をダシにしてセコい計画考えすぎだろ!」
俺が頭を抱えて叫ぶと、アリカは不服そうに口を突き出して小声で言う。
「シュウトさまだって、あれだけ好き放題やったんだから、すごく心配した私たちに少しは優しくしてもいいんじゃないですかね?」
「ぐっ……」
それを言われると、返す言葉がない。
確かにアルギア召喚宮殿での一件は冷静さを欠き過ぎていたし、アリカを含む配下たちには大変な迷惑をかけた。
「わらわも過酷な戦闘の疲れを癒すために、少しくらい楽しいことをしたいのじゃ……」
オルビークも弱々しい声色でそう言うが、口元はにやにやとしていて明らかに演技である。
だが、その言葉も頭ごなしに否定はできない。
だから、俺は観念したように頭をかきながら息を吐いた。
「わかった、わかったよ。全員に土産物でも観光名物でも、なんでも作る許可を与える。他にも何かやりたい催し物があったら全て許可する。あれだけの戦闘の後だ。休息も兼ねて、各々好きなことをしていいぞ」
「やりましたーーー! さすがお師匠とオルビークちゃん、見事シュウトさまの良心につけ込みましたね!」
「ふふふ、簡単すぎたわ、レーナ。シュウトさんは優しいから楽勝よ!」
「シュウトの扱いは容易いの! これでせっかく考案した観光名物がダメにならなくて済んだのじゃ!」
許可が下りた瞬間に好き放題言い出す三人娘。
「あのー、全部聞こえてるんですけど……」
「だからなんですか、シュウトさま! むふふ、もう許可は下りました! 前言撤回はなしですからね!」
そう言って、和気藹々としたレーナたち三人娘は観光地化計画班のモンスター何匹かを手伝いとして無理やり引き連れ、俺が言動を撤回する前に逃げろとばかりに暗黒城内にさっさと駆け込んでいった。
俺は真顔で振り返って、控えていた『地獄骸』に問う。
「俺、魔王の威厳なさすぎじゃね……?」
「それは、その、そうですな……あー」
答えに詰まる『地獄骸』と暗い顔の俺を置き去りに、残った観光地化計画班のモンスターたちも無言でそれぞれの作業場へと向かうのだった。
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