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第76話 魔王シュウトさま饅頭
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暗黒城の二階は俺たちの居住スペースである。
いつも朝食を食べているのも二階のダイニングだ。
そのため、中央の大階段を上っていくと、二階の居住フロアへ通じる廊下へは即席の壁が作られ閉鎖されていて、そのまま三階に上がることしかできなくなっていた。
どうやらこの階は使用されないらしい。「関係者以外立ち入り禁止!」と書かれた小さな出入り口はあるが、さすがに仮にも魔王の城と認識されている場所で、禁止された区域に侵入する度胸の持ち主はいないだろう。
三、四階はモンスターの詰め所や各種施設が存在するが、幅の広い廊下は開放されており、屋台のようなものが並んでいるようだ。
三階への階段を上った正面、一番いい位置を陣取っていたのはレーナたちのスペースである。
そのスペースに並べられているのは饅頭だった。
「ん? レーナにしては思ったより普通のチョイスだな」
俺が近づいていくと、気づいたレーナがあっ! と目を輝かせて素早く寄ってくる。
「シュウトさま、シュウトさま! 見ていってください! お師匠と作った自信作なんですっ!」
レーナは俺の腕に抱きつく形で俺を引っ張る。
なんか柔らかな弾力が腕に押しつけられてる気がしますが、俺は知らないふりをします。
レーナの言うとおり、屋台の中では生地を練って、饅頭生産に勤しむエプロン姿のアリカの姿もあった。
「あら、シュウトさん。ついに私たちのお土産品のエリアまでたどり着いたんですね」
作業の手を止めたアリカも妙に自信満々に笑みを浮かべた。
エプロン姿のアリカからはとても家庭的な印象を受けるが、レーナとは正反対にエプロンの胸元には全く起伏がなくて悲しくなる。
もちろん、そんなことは口に出さないが。
「はっ! シュウトさまがまたいかがわしいことを考えている気がします!」
「いつもいつも鋭いなぁ、お前は!」
なぜかそういうところだけ毎回ちゃんと拾ってくるレーナにツッコミを入れつつ、俺は饅頭スペースに近づく。
「一見、普通の饅頭みたいだけど、どこが売りなんだ?」
「ふふふ……よく見てください! 饅頭に押された焼き印を!」
レーナが自慢げに胸をそらすと、アリカとは真逆にかなり膨らみが強調される。
それに気づいたアリカが密かに涙目になってるからやめてあげて!
「……焼き印か。確かに何か描かれているな」
俺は作りたての饅頭を一つ手に取ると、饅頭に押された焼き印を詳しく見る。
そして、
「うお、ぁぁぁ……」
なんとも言えない声が出た。
そこに押されていたのは、俺を模したであろうミニキャラと『魔王シュウトさま饅頭』という商品名。
魔王だけでなく、シュウトという名前まで不特定多数に暴露されていた。
この饅頭が売れたら、魔王=シュウトのイメージまで定着してしまう。王国にさらなる情報提供してしまうことになりそうだ。
「シュウトさま、これすごいでしょー!」
だが、嬉々として饅頭を見せびらかすレーナの笑顔をなくしてしまうことも忍びない。
どのみち、いつかはバレる情報だ。
ここで開示しても、そこまで問題はないということにしよう。うん。
「頑張って売れよ、二人とも。人手が足りなかったらモンスターたちにも手伝ってもらえ」
「はい、食材調達はモンスターの皆に任せてるんです! みんな、色々な食用素材を生成できてびっくりしました!」
「レベルが低くても、非戦闘で役に立つモンスターはいくらでもいるからな。必要なら新しく召喚してやるから、いつでも言ってくれ」
俺が気を利かせてそう言うと、
「シュ、シュウトさまが優しい……!」
レーナは怪訝な表情を浮かべて怖がるように一歩下がった。失礼極まりない。
「いつもはわたしをおバカおバカと、さんざん説教するのに……!」
「俺も考えを改めたんだよ。今回は皆が最大限楽しみ、そしてご一行様を楽しませる。それだけを考えることにした」
「シュウトさま……ついにわたしの思い通りに操られてくれたんですね……!」
「言い方が悪い!」
ともかく、レーナたちも問題なさそうだ。
「それじゃ、俺は四階見てくるよ」
五階の王座の間はそのまま一般公開する予定だと途中で配下たちから聞いたので、残る巡回は四階のみ。
普段は使っていない大部屋がいくつかあるが、誰が使っているのかなと思いながら、大部屋の一つを開けると。
そこには臨時で設置されたキッチンとたくさんのテーブル。
そして、キッチンに立つのはよく見知った八本腕の側近。
八本の手を器用に駆使し、たくさんの試食品メニューを手際よく作っている。
ブース名を見てみれば『骸食堂』と書かれていた。
「なんだかんだ、お前もきっちり楽しんでるのな……」
俺が声をかけると、料理に夢中だったモンスター『地獄骸』がハッとした様子で顔を上げる。
「も、申し訳ございません、召喚主……! 我までこのように浮かれてしまって……」
「いい、いい」
俺は深々と頭を垂れる『地獄骸』に軽く手を振る。上級モンスターだからって、この祭りに参加してはならないという決まりはない。
その代わり、と俺は近くのテーブルに着席すると、『地獄骸』に笑いかける。
「この食堂で一番の自信作をもらおうか」
「しょ、召喚主……!」
そうして、暗黒城一女子力の高い『地獄骸』の料理を堪能し尽くした俺は、ご一行様を迎える準備を始めるのだった。
いつも朝食を食べているのも二階のダイニングだ。
そのため、中央の大階段を上っていくと、二階の居住フロアへ通じる廊下へは即席の壁が作られ閉鎖されていて、そのまま三階に上がることしかできなくなっていた。
どうやらこの階は使用されないらしい。「関係者以外立ち入り禁止!」と書かれた小さな出入り口はあるが、さすがに仮にも魔王の城と認識されている場所で、禁止された区域に侵入する度胸の持ち主はいないだろう。
三、四階はモンスターの詰め所や各種施設が存在するが、幅の広い廊下は開放されており、屋台のようなものが並んでいるようだ。
三階への階段を上った正面、一番いい位置を陣取っていたのはレーナたちのスペースである。
そのスペースに並べられているのは饅頭だった。
「ん? レーナにしては思ったより普通のチョイスだな」
俺が近づいていくと、気づいたレーナがあっ! と目を輝かせて素早く寄ってくる。
「シュウトさま、シュウトさま! 見ていってください! お師匠と作った自信作なんですっ!」
レーナは俺の腕に抱きつく形で俺を引っ張る。
なんか柔らかな弾力が腕に押しつけられてる気がしますが、俺は知らないふりをします。
レーナの言うとおり、屋台の中では生地を練って、饅頭生産に勤しむエプロン姿のアリカの姿もあった。
「あら、シュウトさん。ついに私たちのお土産品のエリアまでたどり着いたんですね」
作業の手を止めたアリカも妙に自信満々に笑みを浮かべた。
エプロン姿のアリカからはとても家庭的な印象を受けるが、レーナとは正反対にエプロンの胸元には全く起伏がなくて悲しくなる。
もちろん、そんなことは口に出さないが。
「はっ! シュウトさまがまたいかがわしいことを考えている気がします!」
「いつもいつも鋭いなぁ、お前は!」
なぜかそういうところだけ毎回ちゃんと拾ってくるレーナにツッコミを入れつつ、俺は饅頭スペースに近づく。
「一見、普通の饅頭みたいだけど、どこが売りなんだ?」
「ふふふ……よく見てください! 饅頭に押された焼き印を!」
レーナが自慢げに胸をそらすと、アリカとは真逆にかなり膨らみが強調される。
それに気づいたアリカが密かに涙目になってるからやめてあげて!
「……焼き印か。確かに何か描かれているな」
俺は作りたての饅頭を一つ手に取ると、饅頭に押された焼き印を詳しく見る。
そして、
「うお、ぁぁぁ……」
なんとも言えない声が出た。
そこに押されていたのは、俺を模したであろうミニキャラと『魔王シュウトさま饅頭』という商品名。
魔王だけでなく、シュウトという名前まで不特定多数に暴露されていた。
この饅頭が売れたら、魔王=シュウトのイメージまで定着してしまう。王国にさらなる情報提供してしまうことになりそうだ。
「シュウトさま、これすごいでしょー!」
だが、嬉々として饅頭を見せびらかすレーナの笑顔をなくしてしまうことも忍びない。
どのみち、いつかはバレる情報だ。
ここで開示しても、そこまで問題はないということにしよう。うん。
「頑張って売れよ、二人とも。人手が足りなかったらモンスターたちにも手伝ってもらえ」
「はい、食材調達はモンスターの皆に任せてるんです! みんな、色々な食用素材を生成できてびっくりしました!」
「レベルが低くても、非戦闘で役に立つモンスターはいくらでもいるからな。必要なら新しく召喚してやるから、いつでも言ってくれ」
俺が気を利かせてそう言うと、
「シュ、シュウトさまが優しい……!」
レーナは怪訝な表情を浮かべて怖がるように一歩下がった。失礼極まりない。
「いつもはわたしをおバカおバカと、さんざん説教するのに……!」
「俺も考えを改めたんだよ。今回は皆が最大限楽しみ、そしてご一行様を楽しませる。それだけを考えることにした」
「シュウトさま……ついにわたしの思い通りに操られてくれたんですね……!」
「言い方が悪い!」
ともかく、レーナたちも問題なさそうだ。
「それじゃ、俺は四階見てくるよ」
五階の王座の間はそのまま一般公開する予定だと途中で配下たちから聞いたので、残る巡回は四階のみ。
普段は使っていない大部屋がいくつかあるが、誰が使っているのかなと思いながら、大部屋の一つを開けると。
そこには臨時で設置されたキッチンとたくさんのテーブル。
そして、キッチンに立つのはよく見知った八本腕の側近。
八本の手を器用に駆使し、たくさんの試食品メニューを手際よく作っている。
ブース名を見てみれば『骸食堂』と書かれていた。
「なんだかんだ、お前もきっちり楽しんでるのな……」
俺が声をかけると、料理に夢中だったモンスター『地獄骸』がハッとした様子で顔を上げる。
「も、申し訳ございません、召喚主……! 我までこのように浮かれてしまって……」
「いい、いい」
俺は深々と頭を垂れる『地獄骸』に軽く手を振る。上級モンスターだからって、この祭りに参加してはならないという決まりはない。
その代わり、と俺は近くのテーブルに着席すると、『地獄骸』に笑いかける。
「この食堂で一番の自信作をもらおうか」
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