クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

文字の大きさ
76 / 86

第76話 魔王シュウトさま饅頭

しおりを挟む
 暗黒城の二階は俺たちの居住スペースである。

 いつも朝食を食べているのも二階のダイニングだ。

 そのため、中央の大階段を上っていくと、二階の居住フロアへ通じる廊下へは即席の壁が作られ閉鎖されていて、そのまま三階に上がることしかできなくなっていた。

 どうやらこの階は使用されないらしい。「関係者以外立ち入り禁止!」と書かれた小さな出入り口はあるが、さすがに仮にも魔王の城と認識されている場所で、禁止された区域に侵入する度胸の持ち主はいないだろう。

 三、四階はモンスターの詰め所や各種施設が存在するが、幅の広い廊下は開放されており、屋台のようなものが並んでいるようだ。

 三階への階段を上った正面、一番いい位置を陣取っていたのはレーナたちのスペースである。

 そのスペースに並べられているのは饅頭だった。

「ん? レーナにしては思ったより普通のチョイスだな」

 俺が近づいていくと、気づいたレーナがあっ! と目を輝かせて素早く寄ってくる。

「シュウトさま、シュウトさま! 見ていってください! お師匠と作った自信作なんですっ!」

 レーナは俺の腕に抱きつく形で俺を引っ張る。
 なんか柔らかな弾力が腕に押しつけられてる気がしますが、俺は知らないふりをします。

 レーナの言うとおり、屋台の中では生地を練って、饅頭生産に勤しむエプロン姿のアリカの姿もあった。

「あら、シュウトさん。ついに私たちのお土産品のエリアまでたどり着いたんですね」

 作業の手を止めたアリカも妙に自信満々に笑みを浮かべた。

 エプロン姿のアリカからはとても家庭的な印象を受けるが、レーナとは正反対にエプロンの胸元には全く起伏がなくて悲しくなる。

 もちろん、そんなことは口に出さないが。

「はっ! シュウトさまがまたいかがわしいことを考えている気がします!」

「いつもいつも鋭いなぁ、お前は!」

 なぜかそういうところだけ毎回ちゃんと拾ってくるレーナにツッコミを入れつつ、俺は饅頭スペースに近づく。

「一見、普通の饅頭みたいだけど、どこが売りなんだ?」

「ふふふ……よく見てください! 饅頭に押されたいんを!」

 レーナが自慢げに胸をそらすと、アリカとは真逆にかなり膨らみが強調される。

 それに気づいたアリカが密かに涙目になってるからやめてあげて!

「……焼き印か。確かに何か描かれているな」

 俺は作りたての饅頭を一つ手に取ると、饅頭に押された焼き印を詳しく見る。

 そして、

「うお、ぁぁぁ……」

 なんとも言えない声が出た。

 そこに押されていたのは、俺を模したであろうミニキャラと『魔王シュウトさま饅頭』という商品名。

 魔王だけでなく、シュウトという名前まで不特定多数に暴露されていた。

この饅頭が売れたら、魔王=シュウトのイメージまで定着してしまう。王国にさらなる情報提供してしまうことになりそうだ。

「シュウトさま、これすごいでしょー!」

 だが、嬉々として饅頭を見せびらかすレーナの笑顔をなくしてしまうことも忍びない。

 どのみち、いつかはバレる情報だ。

 ここで開示しても、そこまで問題はないということにしよう。うん。

「頑張って売れよ、二人とも。人手が足りなかったらモンスターたちにも手伝ってもらえ」

「はい、食材調達はモンスターの皆に任せてるんです! みんな、色々な食用素材を生成できてびっくりしました!」

「レベルが低くても、非戦闘で役に立つモンスターはいくらでもいるからな。必要なら新しく召喚してやるから、いつでも言ってくれ」

 俺が気を利かせてそう言うと、

「シュ、シュウトさまが優しい……!」

 レーナは怪訝な表情を浮かべて怖がるように一歩下がった。失礼極まりない。

「いつもはわたしをおバカおバカと、さんざん説教するのに……!」

「俺も考えを改めたんだよ。今回は皆が最大限楽しみ、そしてご一行様を楽しませる。それだけを考えることにした」

「シュウトさま……ついにわたしの思い通りに操られてくれたんですね……!」

「言い方が悪い!」

 ともかく、レーナたちも問題なさそうだ。

「それじゃ、俺は四階見てくるよ」

 五階の王座の間はそのまま一般公開する予定だと途中で配下たちから聞いたので、残る巡回は四階のみ。

 普段は使っていない大部屋がいくつかあるが、誰が使っているのかなと思いながら、大部屋の一つを開けると。

 そこには臨時で設置されたキッチンとたくさんのテーブル。
 そして、キッチンに立つのはよく見知った八本腕の側近。

 八本の手を器用に駆使し、たくさんの試食品メニューを手際よく作っている。

 ブース名を見てみれば『骸食堂むくろしょくどう』と書かれていた。

「なんだかんだ、お前もきっちり楽しんでるのな……」

 俺が声をかけると、料理に夢中だったモンスター『地獄骸』がハッとした様子で顔を上げる。

「も、申し訳ございません、召喚主……! 我までこのように浮かれてしまって……」

「いい、いい」

 俺は深々と頭を垂れる『地獄骸』に軽く手を振る。上級モンスターだからって、この祭りに参加してはならないという決まりはない。

 その代わり、と俺は近くのテーブルに着席すると、『地獄骸』に笑いかける。

「この食堂で一番の自信作をもらおうか」

「しょ、召喚主……!」

 そうして、暗黒城一女子力の高い『地獄骸』の料理を堪能し尽くした俺は、ご一行様を迎える準備を始めるのだった。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

処理中です...