クリエイタースキルを使って、異世界最強の文字召喚術師になります。

月海水

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第78話 『姿を呑まれた者』

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 次々と観光ツアーキャラバンが到着し、暗黒城の正門前は大変な混雑ぶりを見せていた。

 ギルダム特別自治区内全ての村から参加者を募り、一斉にやってきたようだ。

 ギルダム中央村の村長ーー村長が多いので、中央村長と呼ぶことにするーー曰く、実際に無害かつ友好的であることを見せた方が今後、各村からの協力を得やすいだろう、とのことだ。

 観光ツアーご一行様は、暗黒城の外観のノスタルジックさに心を打たれてから、期待感を持ってぞろぞろと城内へと入っていく。

 誘導はなるべく見た目が怖くないモンスターたちが担当し、お客の登場という本番を迎えた城内の文化祭ムードは一気に加熱する。

 観光客も配下たちもどちらも楽しんでいる雰囲気が伝わってくるので、俺は満足げにうんうんと頷いて、暗黒城を見上げた。

 今回の催し物は大成功になるだろう。最初はおバカな骨看板から始まった一連の流れだが、良いところに落ち着いたと思う。

 魔王やモンスターは怖くない。自分たちの仲間だ。という印象を抱いて村人たちが帰ってくれれば、中央村長の言う通り、今後は自治区内で、より動きやすくなるだろう。

「ーーでは、正門の混雑も落ち着きましたし、俺たちも行きましょうか」

 俺が振り返ると、そこには中央村長含め、ギルダム独立自治区の全村長、付き人の村人各数名と護衛の冒険者が二名がいた。

 彼らがここに来た理由は他の大多数の人間とは違う。
 そのため、俺が直接相手をする必要があった。

「ああ、そろそろと始めるとしよう。第一回全村長会議を」

 中央村長は頷く。

 今後のギルダム独立自治区の方針、脅威への対応策、それらの説明を彼らは求めている。そのためにわざわざ村長たちがこうして一か所に集合したのだ。

「では、こちらへ。五階の王座の間にて、話し合いの席を設けます」

 俺はそう言って文化祭ムードの暗黒城の正面玄関を開いた。



 村長たちが付き人の助けを借りながらゆっくりと中央階段を上ってくる間、俺はそれを待たずに「準備があるので」とだけ言って、少し早足で距離を開いた。

 身に纏う気配は只者ではない人間ばかりの村長たちだが、そうは言っても、身体能力は年相応だ。

 本当は五階ではなく、一階のどこかに席を設けるべきだったのだろうが、あいにく現在の暗黒城は文化祭仕様のため、ほとんど空きスペースがない。

 それに、ここで生じたわずかな時間を使って、やるべきことが俺にはあった。

 周囲に人がいなくなった瞬間、奇妙でかすかな気配が俺の真横から近寄ってきた。

「…………召喚主」

 誰もいない中、小声で何者かに耳打ちをされる。俺はその時を待っていた。

 その存在は目に見えない。だが、しっかりとそこにいた。

「……来たな。計画は?」

 俺は誰かと話していることを悟られないよう、歩みを止めないまま、短く返事をする。

「順調でございます。ただいま、私が指揮する『姿を呑まれた者』たちは暗黒城を包囲する形で厳戒体制を取っておきます」

「よし、このまま警戒を続けてくれ。これだけの人の量だ。敵からしたら潜り込むいい機会だからな。無事に済むとは思えない。城内の安全は配下たちが確保している。襲ってくるとしたら、わざと警備を薄く見せかけた城の周囲からの可能性が高い」

「承知しました」

「ここで被害を出せば、自治区を庇護する存在として疑念を抱かせることになる。野良モンスター一匹通すな」

「はっ!」

 そうして、『姿を呑まれた者』の気配は消えていく。

『姿を呑まれた者』は配下たちが文化祭準備をしている間に召喚した計二十体の、透明型モンスターだった。
 その存在を知っているのは、味方の中でも『地獄骸』他、数名のモンスターだけ。

『姿を呑まれた者』には城周辺の警備を指示していた。一般人から見れば、無警戒のように見えるが、その実、厳しい巡回が行われている。

 俺は油断をしない。

 もうこの前のような悲劇を繰り返さないために念には念を入れておく。

 指示出しが終了したのとほぼ同時、俺は五階の王座の間の入り口扉に到着していた。



『姿を呑まれた者』ランク:B級。
 地獄司法の裁定によって、空間に姿を呑まれた罪人たちがエネルギー体として残留した姿。

 元は強力な能力を持っていた個体も力を全て奪われた状態だが、結果として姿を認識されない能力を得たため、諜報活動に従事している。
 ちなみに、地獄ではうっすらとエネルギー体が可視化されてしまうため、ステルス能力で悪さをすることはできない。
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