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第79話 独立自治区会議
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暗黒城五階全てを占める、王座の間。
本来、謁見者たちが王座に座る王を見上げるための開けた場所には、巨大な円形テーブルが持ち込まれていた。
事前に手の空いていた配下モンスターに頼んでいたのだ。
そのため、会議の開始は村長たちが席につくだけで滞りなく始まった。もちろん、今回は俺も王座ではなくテーブルの一席に座る。
そこまで空気が読めないやつじゃないからね!
と、そこで当然の顔をして、俺の横に座る幼女を見つけて思わず注意する。
「おい、オルビーク。ここはお子さまがいていい場所じゃないぞ。おとなしく下で焼きそば売ってなさい」
「シュウトよ、お主には本当に呆れるときがあるのう。わらわも峡谷村の村長であること、もう忘れたのか?」
そう言われて、そういえばそうだったわ。似合わなさすぎて忘れてた。と思い出す。
「そういえばそうだったわ。似合わなさすぎて忘れてた」
と、口から思ったことが声に出ていた。
「はぁ……失礼なやつなのじゃ。これで文字召喚の驚異的な才さえなければ、すぐにでも見切りをつけるところなんじゃがの」
オルビークは心底呆れた様子でため息をつく。
「でもなんだかんだオルビークが一緒にいてくれて、俺はとても嬉しいよ」
今だって、品定めするような目つきの老人たちに囲まれてるわけだし。
中央村長がいるとはいえ、仲間であるオルビークが隣にいてくれることは正直ありがたい。
と、本心から言った言葉だったのだが、
「な、なんじゃ! いきなりそんな口説くような文句を吐くでない!」
オルビークはなぜか慌てたように赤面していた。
「何で赤面してるの?」
「し、知らんのじゃ!」
「……ごほん。シュウト殿。そろそろ開始されることをオススメするぞ」
中央村長の助言により、テーブルに視線を戻すと、他の村長たちの視線が真剣すぎて怖い。
俺が幼女と戯れている様をよくそんな真剣な表情で見られますね……と軽口を言いそうになったが、さすがに空気を読んで口を閉じる。
だが、彼らが真剣になる理由もわかる。
俺が本当にモンスターを指揮下において暮らしている様子を見たとはいえ、彼らは俺たちの実際の戦闘を見たわけではない。
今後、独立自治区が王国や帝国と対立する可能性を考えれば、本当にそんなことが実現可能な人間なのかと訝しむのも無理はない。
ましてや、俺はこの世界では地位の低い文字召喚術師なのだ。
「では、第一回独立自治区全村長会議を始めましょう。まずは――」
と、俺が会議の開始を告げると同時、すぐにまっすぐと手を挙げたのは、人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた老婆だった。しかし、正門にいた時から感じていたように、人を値踏みするような目つきだけは変わらない。
俺が「どうぞ」と彼女に発言を許可すると、彼女は笑顔を崩さないまま話し始める。
「シュウトさん、あなたの文字召喚術によって、ギルダム大峡谷を長きにわたって支配していた『グラウンドイーター』を討伐、またアルギア召喚宮殿の文字召喚術師様を相手取って善戦したという話は、すでに中央村長から聞いております」
アルギア召喚宮殿の文字召喚術師には「様」をつけ、俺には「さん」づけ。その部分を強調するように話す様子からも、彼女の中での俺の評価は現状、あんな捻くれた奴らよりも下のようだ。
相手取って善戦、というところはあの凄惨な内容をぼやかしたわけではなく、本当に中央村長がわざとそうやって伝えたのだろう。
本当のことを話してしまえば、怯えられてしまって、下手すればこの話し合いの席に出てこなかった可能性すらある。
そう考えると、暴走した俺を見てもなお、未だ信頼を置いてくれている中央村村長の胆力には舌を巻く。
初めて会った時の対応を見た時は無能な村長かと思ったが、どうやらあの時は本当に突然の出来事で混乱していただけで、冷静に事態をコントロールする今の姿の方が本来なのだろう。
と、婆村長は続ける。
「中央村長の話では、ギルダム独立自治区を本当に独立させるとお考えのようですね。ですが、それは無謀ではありませんか? あなたの文字召喚によって召喚されたモンスターの方々は、ここに上がってくるまでに拝見させて頂きました。ですが、見掛け倒しと言うことも考えられる」
「――その点については心配いらんのじゃ、ラングリア」
横から割って入ってきたのは、オルビークだった。婆村長、もといラングリアはオルビークの横槍に顔をしかめる。
「シュウトは文字召喚術師でありながら、魔術師であるわらわを凌駕する唯一の人物じゃ。そして、その戦闘力は王国や帝国と戦闘を行って勝利することも可能じゃろう」
「そうは言いますが、オルビークさん。私たちは実際の戦いを見たわけでもありませんし、高練度の魔術師団相手にこんなよくわからない文字召喚術師が一人で勝てるとは到底思えません」
ラングリアの言葉の端々には棘がある。優秀かつ、年齢差がいったいどのくらいなのかもわからないオルビークのこともあまり村長として認めていないようだ。
そのせいか、徐々に本音が漏れ出てきていた。
だが、今まで黙っていた他の村長たちもラングリアの意見に同調するように頷き始めた。
その様子に満足げなラングリアだが、俺は別にこの状況を形勢が悪いとは考えていなかった。
話し合いの席で同調するだけの連中は一つ、力を見せてやれば手のひらを返すだろうということは予想がついたからだ。
未だ静観を貫いているのは、中央村長と初めからずっと目つきの鋭い大柄で髭の生えた若老人だけ。
まだまだ、話し合いはこれからだ。
本来、謁見者たちが王座に座る王を見上げるための開けた場所には、巨大な円形テーブルが持ち込まれていた。
事前に手の空いていた配下モンスターに頼んでいたのだ。
そのため、会議の開始は村長たちが席につくだけで滞りなく始まった。もちろん、今回は俺も王座ではなくテーブルの一席に座る。
そこまで空気が読めないやつじゃないからね!
と、そこで当然の顔をして、俺の横に座る幼女を見つけて思わず注意する。
「おい、オルビーク。ここはお子さまがいていい場所じゃないぞ。おとなしく下で焼きそば売ってなさい」
「シュウトよ、お主には本当に呆れるときがあるのう。わらわも峡谷村の村長であること、もう忘れたのか?」
そう言われて、そういえばそうだったわ。似合わなさすぎて忘れてた。と思い出す。
「そういえばそうだったわ。似合わなさすぎて忘れてた」
と、口から思ったことが声に出ていた。
「はぁ……失礼なやつなのじゃ。これで文字召喚の驚異的な才さえなければ、すぐにでも見切りをつけるところなんじゃがの」
オルビークは心底呆れた様子でため息をつく。
「でもなんだかんだオルビークが一緒にいてくれて、俺はとても嬉しいよ」
今だって、品定めするような目つきの老人たちに囲まれてるわけだし。
中央村長がいるとはいえ、仲間であるオルビークが隣にいてくれることは正直ありがたい。
と、本心から言った言葉だったのだが、
「な、なんじゃ! いきなりそんな口説くような文句を吐くでない!」
オルビークはなぜか慌てたように赤面していた。
「何で赤面してるの?」
「し、知らんのじゃ!」
「……ごほん。シュウト殿。そろそろ開始されることをオススメするぞ」
中央村長の助言により、テーブルに視線を戻すと、他の村長たちの視線が真剣すぎて怖い。
俺が幼女と戯れている様をよくそんな真剣な表情で見られますね……と軽口を言いそうになったが、さすがに空気を読んで口を閉じる。
だが、彼らが真剣になる理由もわかる。
俺が本当にモンスターを指揮下において暮らしている様子を見たとはいえ、彼らは俺たちの実際の戦闘を見たわけではない。
今後、独立自治区が王国や帝国と対立する可能性を考えれば、本当にそんなことが実現可能な人間なのかと訝しむのも無理はない。
ましてや、俺はこの世界では地位の低い文字召喚術師なのだ。
「では、第一回独立自治区全村長会議を始めましょう。まずは――」
と、俺が会議の開始を告げると同時、すぐにまっすぐと手を挙げたのは、人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた老婆だった。しかし、正門にいた時から感じていたように、人を値踏みするような目つきだけは変わらない。
俺が「どうぞ」と彼女に発言を許可すると、彼女は笑顔を崩さないまま話し始める。
「シュウトさん、あなたの文字召喚術によって、ギルダム大峡谷を長きにわたって支配していた『グラウンドイーター』を討伐、またアルギア召喚宮殿の文字召喚術師様を相手取って善戦したという話は、すでに中央村長から聞いております」
アルギア召喚宮殿の文字召喚術師には「様」をつけ、俺には「さん」づけ。その部分を強調するように話す様子からも、彼女の中での俺の評価は現状、あんな捻くれた奴らよりも下のようだ。
相手取って善戦、というところはあの凄惨な内容をぼやかしたわけではなく、本当に中央村長がわざとそうやって伝えたのだろう。
本当のことを話してしまえば、怯えられてしまって、下手すればこの話し合いの席に出てこなかった可能性すらある。
そう考えると、暴走した俺を見てもなお、未だ信頼を置いてくれている中央村村長の胆力には舌を巻く。
初めて会った時の対応を見た時は無能な村長かと思ったが、どうやらあの時は本当に突然の出来事で混乱していただけで、冷静に事態をコントロールする今の姿の方が本来なのだろう。
と、婆村長は続ける。
「中央村長の話では、ギルダム独立自治区を本当に独立させるとお考えのようですね。ですが、それは無謀ではありませんか? あなたの文字召喚によって召喚されたモンスターの方々は、ここに上がってくるまでに拝見させて頂きました。ですが、見掛け倒しと言うことも考えられる」
「――その点については心配いらんのじゃ、ラングリア」
横から割って入ってきたのは、オルビークだった。婆村長、もといラングリアはオルビークの横槍に顔をしかめる。
「シュウトは文字召喚術師でありながら、魔術師であるわらわを凌駕する唯一の人物じゃ。そして、その戦闘力は王国や帝国と戦闘を行って勝利することも可能じゃろう」
「そうは言いますが、オルビークさん。私たちは実際の戦いを見たわけでもありませんし、高練度の魔術師団相手にこんなよくわからない文字召喚術師が一人で勝てるとは到底思えません」
ラングリアの言葉の端々には棘がある。優秀かつ、年齢差がいったいどのくらいなのかもわからないオルビークのこともあまり村長として認めていないようだ。
そのせいか、徐々に本音が漏れ出てきていた。
だが、今まで黙っていた他の村長たちもラングリアの意見に同調するように頷き始めた。
その様子に満足げなラングリアだが、俺は別にこの状況を形勢が悪いとは考えていなかった。
話し合いの席で同調するだけの連中は一つ、力を見せてやれば手のひらを返すだろうということは予想がついたからだ。
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まだまだ、話し合いはこれからだ。
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