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第81話 威圧
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「――それでは、ご希望通りご覧に入れてみせましょう。我が配下たちがいかに有能であるかを」
深々と王座に座った俺は、わざと不遜な態度で足を組んでみせた。これは演技だ。自分をどれだけ脅威的な存在と見せられるかで、村長たちの今後の態度は変わってくる。
せっかくの絶好の機会だ。魔王モード全開で行かせてもらうとしよう。
「……召喚主。そろそろ敵の顕現待ちが完了致します」
耳元で囁く『姿を呑まれた者』の報告を聞くと、もう透明なモンスターの存在を隠す必要もなくなった俺はしっかりと返事を声のした方を見て労いの言葉を返す。
「ご苦労だった、『姿を呑まれた者』」
俺の行動にラングリアを筆頭として同調していた村長たちがざわめく。
「あ、あなたは誰と会話しているのですかっ!?」
ラングリアの甲高い声に俺は平然と返す。
「誰って、ずっといたでしょう。俺の配下ですよ。今もここにいます」
そう言って何も見えないスペースを指さす。村長たちの間で「透明なモンスターだと……?」やら「高ランクのモンスターじゃないか!」などの驚きの声が上がる。
『姿を呑まれた者』はBランクでそれほどクリエイトゲージを消費するモンスターではないが、村長たちの目にはその異様さはわかりやすく脅威として映ったのだろう。
俺はここで畳みかける。
「そして、この姿の見えない配下たち総勢十数名はこの暗黒城の全方位を監視していました」
「こんな高度な能力のモンスターを十数匹ですって!? あり得ない……!」
ラングリアは驚嘆したように呟く。この程度で驚くって、ここに上ってくるまでいったい何を見てきたんだ、と思わなくもないが、他のモンスターたちはランクが推し量りにくい。なおかつ、姿が怖い高ランクモンスターは城の奥でお留守番中だ。
どう考えても無能村長ではあるが、ラングリアが今更になって驚き始めたのはその辺りが原因だろう。
俺は王座の手もたれを操作して、村長たちが座る丸テーブルを囲むようにいくつもの映像スクリーンを出現させた。突如、空間に現れた映像に慄く村長たち。
「今、そこに映し出されているのは暗黒城の周辺です。ですが、配下の報告によるとあまり良くないことが起こっているようなのです」
「良くないこと、ですって……?」
理解できない展開の連続に目を回しそうなラングリアが問うてくる。
「現在、この暗黒城は敵文字召喚術師による襲撃を受けようとしています」
「襲撃!? あ、あなたこの特別自治区の守護者のはずでしょう! あなたには襲撃など起こらないように警戒する義務が――」
「なに矛盾したことを言ってるんです。敵兵を貴女の目の前で倒せと言ったのは、他でも貴女自身でしょう?」
「ぐっ……!?」
そう言ってやると、ラングリアは言葉を詰まらせる。
「そもそも、ラングリアは俺に無茶難題を突き付けていたんです――その要望を叶えてやると言っている。大人しく見ていろ」
突然、相手を圧するような口調に切り替えた俺にラングリアは怯えた瞳を見せる。
口調、喋りの間、仕草。そんなものを演技で少し変えたところで、俺の中身が何か変わるわけでもないのに、ラングリアの反応は面白いように変化した。
これは典型的な交渉手段の一つだ。
自分が上だと錯覚させたうえで、最適なタイミングでその関係を崩す。すると、相手は動揺してこちらの話を鵜呑みにしてしまう。武力で戦いたくないと思う以上、こうした話術でリードを稼がないといけない。
村長たちがつくテーブルの周囲の映像には、至る所に設置された光る羊皮紙が映し出される。
「これが敵文字召喚術師が設置した羊皮紙の数々だ。これがもうすぐ起動し大量のモンスターが城に雪崩れ込む、というのが敵の計画だろう」
「こんな数の羊皮紙、見たことがないわ……ああ、神よ。我ら村長団をお守りください」
俺が倒すと言っているのに、ラングリアはこの世の終わりのような悲観した表情で、ついには神に祈り始めた。
だからだろう。少し苛立った俺がまた馬鹿げた発言をしてしまったのは。
「――ラングリア」
「…………」
俺を無視して祈りを捧ぐラングリアに、王座に不遜に座る俺は続けて、端的に言葉を突きつけた。
「――お前を救う神ならここにいる」
深々と王座に座った俺は、わざと不遜な態度で足を組んでみせた。これは演技だ。自分をどれだけ脅威的な存在と見せられるかで、村長たちの今後の態度は変わってくる。
せっかくの絶好の機会だ。魔王モード全開で行かせてもらうとしよう。
「……召喚主。そろそろ敵の顕現待ちが完了致します」
耳元で囁く『姿を呑まれた者』の報告を聞くと、もう透明なモンスターの存在を隠す必要もなくなった俺はしっかりと返事を声のした方を見て労いの言葉を返す。
「ご苦労だった、『姿を呑まれた者』」
俺の行動にラングリアを筆頭として同調していた村長たちがざわめく。
「あ、あなたは誰と会話しているのですかっ!?」
ラングリアの甲高い声に俺は平然と返す。
「誰って、ずっといたでしょう。俺の配下ですよ。今もここにいます」
そう言って何も見えないスペースを指さす。村長たちの間で「透明なモンスターだと……?」やら「高ランクのモンスターじゃないか!」などの驚きの声が上がる。
『姿を呑まれた者』はBランクでそれほどクリエイトゲージを消費するモンスターではないが、村長たちの目にはその異様さはわかりやすく脅威として映ったのだろう。
俺はここで畳みかける。
「そして、この姿の見えない配下たち総勢十数名はこの暗黒城の全方位を監視していました」
「こんな高度な能力のモンスターを十数匹ですって!? あり得ない……!」
ラングリアは驚嘆したように呟く。この程度で驚くって、ここに上ってくるまでいったい何を見てきたんだ、と思わなくもないが、他のモンスターたちはランクが推し量りにくい。なおかつ、姿が怖い高ランクモンスターは城の奥でお留守番中だ。
どう考えても無能村長ではあるが、ラングリアが今更になって驚き始めたのはその辺りが原因だろう。
俺は王座の手もたれを操作して、村長たちが座る丸テーブルを囲むようにいくつもの映像スクリーンを出現させた。突如、空間に現れた映像に慄く村長たち。
「今、そこに映し出されているのは暗黒城の周辺です。ですが、配下の報告によるとあまり良くないことが起こっているようなのです」
「良くないこと、ですって……?」
理解できない展開の連続に目を回しそうなラングリアが問うてくる。
「現在、この暗黒城は敵文字召喚術師による襲撃を受けようとしています」
「襲撃!? あ、あなたこの特別自治区の守護者のはずでしょう! あなたには襲撃など起こらないように警戒する義務が――」
「なに矛盾したことを言ってるんです。敵兵を貴女の目の前で倒せと言ったのは、他でも貴女自身でしょう?」
「ぐっ……!?」
そう言ってやると、ラングリアは言葉を詰まらせる。
「そもそも、ラングリアは俺に無茶難題を突き付けていたんです――その要望を叶えてやると言っている。大人しく見ていろ」
突然、相手を圧するような口調に切り替えた俺にラングリアは怯えた瞳を見せる。
口調、喋りの間、仕草。そんなものを演技で少し変えたところで、俺の中身が何か変わるわけでもないのに、ラングリアの反応は面白いように変化した。
これは典型的な交渉手段の一つだ。
自分が上だと錯覚させたうえで、最適なタイミングでその関係を崩す。すると、相手は動揺してこちらの話を鵜呑みにしてしまう。武力で戦いたくないと思う以上、こうした話術でリードを稼がないといけない。
村長たちがつくテーブルの周囲の映像には、至る所に設置された光る羊皮紙が映し出される。
「これが敵文字召喚術師が設置した羊皮紙の数々だ。これがもうすぐ起動し大量のモンスターが城に雪崩れ込む、というのが敵の計画だろう」
「こんな数の羊皮紙、見たことがないわ……ああ、神よ。我ら村長団をお守りください」
俺が倒すと言っているのに、ラングリアはこの世の終わりのような悲観した表情で、ついには神に祈り始めた。
だからだろう。少し苛立った俺がまた馬鹿げた発言をしてしまったのは。
「――ラングリア」
「…………」
俺を無視して祈りを捧ぐラングリアに、王座に不遜に座る俺は続けて、端的に言葉を突きつけた。
「――お前を救う神ならここにいる」
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