私が恋をしたのは吸血鬼

ろあ

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第1章

04.不知火灯

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青髪の少女は、鼻を鳴らし、一緒にいた女子高生と会計を済ませて外に出て行ってしまった。すると、青髪の少女と入れ違いになるように店員さんがアールグレイたちの前に来た。

「あのお客様、先程の件拝見しておりました。」

「あ、さっきはごめんなさい。この子気が動転していたらしくて…」

「……は?」

氷魚はブチ切れ寸前。気が動転しているのもわかる。だけど、これは流石にやりすぎだ。

「そうだったのですね、では次からは気をつけてください、次同じようなことがありましたら...」

「分かってます、私が厳重に注意しておきますのでご安心ください」

翠亜のおかげでこの騒動は無かったことになった。

「さ、“ごめんなさい”をしなさい、2人とも!」

「てかなんで俺の方みて言うんだよ翠」

「だってあなたが先に……」



翠亜は氷魚の方を見て注意をする。アールグレイは全く興味がないように、翠亜の顔を見ながら立ち上がる。

「アルグレちゃん、何処へ行くの?」

「………トイレだけど。え、何?お前ついてくるの?」

横目でアールグレイはそう呟く。杉咲は相変わらずあわあわしていて、ヒストリアに怒られていた。

「早く戻ってきなさいよ?アルグレちゃん」

「………ん。」

そう反応を返した。氷魚はまたブチ切れそうになっていたが、翠亜が注意をして止めてくれた。

「貴方はどうしてアルグレちゃんに喧嘩を売るの!いつもいつも…」

「えっ…アールグレイさんと氷魚さん、仲が悪いんですか?」

『………………。』

しょっちゅう喧嘩しているわけではない。氷魚がいつも感に触ることを言うだけだ。氷魚はぶつぶつと何かを呟いている。

「とはいっても次の日になれば、アルグレちゃんと氷魚ちゃん、仲良くなってるのよー、犬猿の仲ってそういうものなのよ」

「不思議ですねーそういうの...」

杉咲は、ぽつりとそう呟く。するとトイレから戻ってきたアールグレイは、平然とした表情で椅子に座った。



「ほらね。もう忘れてる」

「脳みそはニワトリ並みですね...」

「ニワトリ?なんだそれ」

「はぁ?お前ニワトリもわっかんねぇの??」

笑いながらそういう氷魚に対して、翠亜がこう言った。

「あなたもわからないでしょう..」

そう呆れながらそう呟く。杉咲はさっきの青髪の少女に興味津々。

「さっきの青髪の少女の魔力が膨大すぎます...おかしいくらいに.....あの魔力でよく自我が保ってられますね.....」

窓に目を向けながらそう話す。冬真はさっきの少女と目が合ったらしく、咄嗟に目を逸らした。

「どうした?冬真」

「いえ..なんでもありません」



「さっきの話、自我が保てないってどういうことだよ。」

「"膨大な魔力を持つ=自我がない"って言うんですかね..ほら、この人間の世界にいるかは分からないですが、ボス..魔王って居ますよね?ドラゴンもその括りに入ります。」

カランカランという音と共に青髪の少女はまた喫茶店の中に入ってきた。俺たちの真横に急に立ち止まった。

「そんなのただのおとぎ話よ。魔王なんて、ドラゴンなんて、この世界にいるわけないじゃない」

「それでは貴方の魔力が膨大なのは何か理由があるんですか?」

「は?そんなこと話して貴方たちになんのメリットがあるの?ないわよね?」

目つきが一気に険しくなる。アールグレイたちを恨んでいるような...そんな目つき。

「ほら灯ー置いて行っちゃうよー?」

「うん、今行くー!」

「それじゃ、失礼します。」

そういうと、またそそくさと店内を出て行ってしまった。

(行け好かねぇ女…)

アールグレイがそう思った瞬間、その少女はガラス越から舌を出して、アールグレイを挑発をした。

「あいつ.....!!!!」

ぶち切れ寸前のアールグレイを、杉咲は宥めていた。



「さて、学校の話だけれど....」

「ま、まさか……」

その言葉を聞いた瞬間、アールグレイと氷魚の表情が凍り付く。凍り付くというより、引き攣るといったほうが早いか。

「感が鋭いわね氷魚ちゃん。さっきの女の子たちが通ってた学校に通うことになってるのよ、私たち」

「「は???」」

アールグレイはまた顔が引き攣る。血管まじで切れそうなんだけど。あの女と同じ学校に通うのかよ、考えただけで吐き気を覚える。

「そしてあのリボンの色...私たちと同じ学ね…」

「やってられっかよ、あの女と同じ学校で?それも同じ学年。あー無理無理、それだったら死んだほうがマシだわ、死なないけど。」

「学業をきちんとしないと、俺たち元の世界に帰れないんですよ?」

そして鴉を倒すこと。それもきちんとやらないと、結晶化していった同士たちに顔向けが出来ない。

ぷるぷると震えだすアールグレイ、それを心配している翠亜は、俺の背中をパァン!と思いっきり叩いた。

「いっっって!!!!!」

「どう?緊張ほぐれた?」

にこにこ笑ってる翠亜。そんな状況をみている氷魚と杉咲。そして涙目になっているアールグレイ。いや、どうして翠亜は笑っているのか、アールグレイには全く理解不能だった。



翠亜は急に立ち上がる。

「さ、そろそろ私たちの寮に向かいましょうか!」

「寮....???」



杉咲は黒縁眼鏡をくいっと上にあげながら、アールグレイたちに向かって叫んだ。

「アールグレイさん、氷魚さん!危ない!!!!!!!!」

七色に輝く結晶が喫茶店全土を包んでいた。俺たちは咄嗟に窓ガラスから外へ身を投げ出した為助かったが、アールグレイたち以外の人間たちは.......。

「あーあ、残念。お前たちを結晶の餌食にしようと思ってたのに。.......やあ翠亜」

「......どうしてこんなことするの。"兄さん"」

「愉しいからだよ、当たり前だろう?"醜くて汚い弟"よ」

にやっと笑いながらそう言う鴉。アールグレイは翠亜の方をちらっと見ると、怒った表情で鴉の方を見ていた。人間が大好きな翠亜と人間と吸血鬼を殺したいと乞う鴉、全く性格が正反対な2人。

「いくらでも言うといいわ、私は貴方を絶対に助ける」

「はぁ?助ける??お前頭沸いてんじゃねぇの?」

ぷるぷると身体が震えている翠亜。すると青髪の少女がまた現れる。

「あんたたち、後ろに下がって。私がやる」

アールグレイは青髪の少女の顔をちらっと見ると、涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。自分の友達が結晶の餌食になったのか。

「なに?」

「お前、友達は.....」

「コイツの結晶で、、、死んだ」

「死んでないわよ、貴方のお友達は」

青髪の少女は、涙で顔が歪んではいたが、すごくびっくりした表情をしていた。

「なぁんか邪魔者が入って興が醒めちゃったなあ...」

「逃げるの!?」

少女は結晶の一部を踏みつける。すると鴉の顔に切り傷が入った。血が垂れたのに気付いた鴉は、手で流れた血を拭きとる。



「逃げるなんて卑怯者がすることよ!」

「は?なんなのお前、生意気」

鴉は青髪の少女を結晶化させようと特権を使おうとするが、彼女の目の前で結晶が砕けた。

「!?お前、何者?」

「超一流の魔導士、世界準魔導学校全校のトップよ」



世界準魔導学校の...トップ?この女が??それに俺たちが通う学校は、魔導学校だったのか。



「アンタより私の方が強いと思うけど?どうする?」

「……………また会おうぜ、嬢ちゃん」

「私の名前は不知火灯よ!覚えておきなさい!!!」

鴉は不敵な笑みを浮かべ、黒い塵になって居なくなった。不知火は鴉が居なくなったのを確認した後、地面に尻をついた。
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