伝説のサラリーマン聖女の暇つぶし

高山小石

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異世界編

12.実行あるのみよ

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「はぁ」
「なんだい? 可愛いため息なんかついちゃって」

 いけない。今はおばぁちゃんとお昼ご飯の用意をしていたんだったわ。
 今はお食事の用意も当番制になっていて、アタシ、おばぁちゃん、先輩聖女、領主の奥さんの誰か二人がペアになって作っているの。

 奥さんのレシピを覚えた後は、奥さんとペアになったらアタシだけに任せてもらってるけどね。アタシ一人だとエルフの呪文でズルできるし、奥さんは他の仕事ができるしでお互い都合がいいWin-Winなのよ。

 おばぁちゃんと奥さんが知ってるのは似たレシピなんだけど、先輩聖女は料理好きみたいで珍しいレシピを知っているの。それに調理中はおしゃべりできるから楽しいのよね。

 おばぁちゃんは当たりさわりのないことなら幅広く教えてくれるのよ。
 先輩聖女は領主一族の内部事情は知らないみたいだったわ。
 それならとダンナ様との馴れ初めを聞いたら、どこの連続トレンディドラマよって感じで面白かったのよね。顔も知らないけど、私の想像上の先輩聖女のダンナ様は三枚目俳優よ。

「あのね、おばぁちゃん。家事をもっと簡単にできないかなぁって考えていたんだけど、アタシだけじゃ良い方法が浮かばなくって」

「ほぉ。面白そうじゃないかい。話してごらんよ」

 おばぁちゃんがうながしてくれたから、エルフつながりで話しやすいのもあって、さっき考えていたことをそのまま話したの。 

「確かに、あの便利な呪文を誰もが使えたら早いだろうけど。呪文はいじると危険だからやめといた方がいい」

 そうよね。この前のこともあるし、うっかりぐちゃどろになっちゃ大変だわ。

「便利な魔術具を作るには相応の技術と材料がいるからね。都に行けば売ってはいるだろうけど、高そうだ」

 草太世界でいう高機能家電みたいな扱いなのかしら。

「それに魔術具をこの館に入れるのはお嬢様が嫌がるだろうさ」

 そうだったわ。よくわからない物をお屋敷に持ち込んだら危険だったわね。
 あぁ。結局どうしようもないってことなの?

「呪文を再生する仕掛けだけなら、あたしらだけでなんとかできるんじゃないかい」

「え、ほんとう?」

 おばぁちゃんは「あんたの呪文を魔方陣書式で魔石に書き込んで、聖女の力をこめて自動再生できるようにしたらいいんだよ」って言ってくれたんだけど。

 まず魔方陣書式がなにかすでにわからないっていうね。
 こんな微妙なデキのアタシにできるかしら?

 すがるようにおばぁちゃんを見上げたら、

「悪いけど、あたしゃそっちはカラッキシだからね。こっから先はお嬢様か若様に相談してごらんよ」

 確かに、領主様が亡くなってから今までずっと奥さん一人で領主代行としてやっていけてるんだから、奥さんの知識は豊富なはずよね。息子だって、領主印のない仕事はもうできるって言ってたんだし。

「ありがとう、おばぁちゃん。さっそくお食事の時にでも話してみるわ」

 さすがというか、なんというか。領主一族って名前だけじゃなかったのね。
 さっくり説明しただけで、奥さんも息子も、先輩聖女まで乗り気になって、その場でどんどん話が進んだわ。
 きっとみんなも今の『日の出日の入り生活』がキツかったのねぇ。

 魔石の選定やら、呪文を魔方陣書式に落とし込む細かい調整やら、一番効果的な設置場所や、アタシたち以外には見つからないように魔石の形体を目立たせないためにはどうするかにいちいち時間がかかっちゃったけど、結果的にはとっても快適な状態になったのよ。

 なんと奥さんがおしゃれを楽しめて、先輩聖女は領主村まで来なくてよくなったの!
 先輩聖女のダンナ様も今頃きっとウキウキよね。
 ベタなラブコメを想像してはニンマリしてしまうわぁ。

 おばぁちゃんも趣味の時間を持てるようになったって喜んでいたわ。
 奥さんとおばぁちゃんと一緒にお出かけもできるのよ。十年ぶりですって。

 あぁ。やっぱり女子が幸せそうだとこっちまで幸せになっちゃうわ。
 女子っていくつになってもお花よねぇ。

 お屋敷にいる女子たちに癒されていたら、息子もいつもの調子が出てきたわけよ。

 教会でしていたみたいに、アタシの部屋で兜合かぶとあわせしたり、執務室で二人きりなった瞬間に唇を合わせてきたり。
 気持ちいいんだけど、肝心な話をする前にそういう雰囲気になっちゃうから、気になっていた詳しい話はまだ聞けてないの。

 あと、草太の記憶があるからか、どうしても物足りないのよね。

 息子にはそんなつもりないんだろうけど、あおられるだけ煽って放置プレイされてる気分になっちゃうのよぅ。
 出すもん出してんのに、なんでアタシこんな悶々もんもんとしてんのかしら。

 でも、それはアタシだけじゃなくて、領主の息子も同じだったみたいでね。
 ある夜、とっても真剣な顔をして、アタシの部屋に忍び込んできたのよ。
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