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第1章 異世界転移&チート持ち──確かにハーレムだけど、想像してたやつと全然違った件
第2話 異世界じゃ最強でも、現実は逆チートで死亡確定
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──これは、カナタが異世界に転移する日の出来事。
相変わらず不運とストレスが積み重なる、いつもの地獄コースだった。
目覚ましの電子音が、死にかけの虫みたいな響き方で薄い壁を震わせた。
「……生きたくねぇ……」
六畳一間のボロアパート。
湿気+かび臭+天井の謎シミの三連コンボ。
布団はベトッ、ベッドはギシギシッ、腰はズキッ。
(寝てダメージ食らうベッドってなんだよ……)
そんなことを考えながら起き上がったら、机から紙がひらり。
──督促状。
「……はいはい、おはよう赤封筒……」
白→黄→赤に進化したその存在は、
もはや“朝の挨拶担当”として完全に定着していた。
と、その時。
「おいコラァ!! 朝からぶっ殺すぞバイク野郎!!」
「テメェが殺されるほうだろボケェ!!」
隣の住人、今日もフルスロットル。
毎日この調子。
もはや“隣人が静かな日”が異常事態。
(……こわ……この部屋の家賃だけ安い理由、明確すぎる……)
壁ドンする勇気なんて当然ない。
壁が薄すぎて、ドンした瞬間こっちが死ぬ。
「……頼むから静かにしてくれよ……」
カナタの呟きが、天井のシミに吸い込まれていった。
時計を見る。
「……やっべ。家、出なきゃいけない時間まで10分……」
寝不足すぎる顔を鏡で確認。
映っていたのは、疲れきった社畜ゾンビ。
「ネクタイ……昨日のままじゃん……もういいわ……」
そのとき、また隣から悪魔の声。
「こんな時間に洗濯機回してんの誰だテメェ!! ぶっ壊すぞ!!」
(俺じゃねぇよ……! てかお前の声のほうが騒音だよ!!)
ツッコミを胸にしまい込み、カバンを掴む。
「……はぁ……行くしかねぇか……」
ドアを閉めると、背後の怒号はまだ続いていた。
振り返ったら負けだ。
階段を降り、駅へ向かう途中──
(あぁ……もういるな……人混みの気配……)
近づくにつれ、人の密度が指数関数的に跳ね上がる。
駅に着いた瞬間、カナタは悟った。
「ひっどいなこれ……」
階段の上から見下ろすと、
ホームまでびっしり詰め込まれた人、人、人。
(この国、人口多すぎだろ……)
電光掲示板を見る。
──《次の電車:2分後》
(2分!? いや、これを走れって? でも走れねぇ人壁!)
意気込んで前へ出ようとしても、
前の人のカバンが腰をブロック。
左の人の肘が脇腹をヒット。
右の人の傘が足に刺さる。
「押すなよ!!」「痛てぇって!」「止まるな!!」
(これってただの朝なの?それとも 暴動?)
なんとか改札を抜けた瞬間──
「乗車される方押しまーす!! 詰めてくださーい!!」
駅員の声が凛々しい。
完全にプロフェッショナルのトーン。
(あぁ……今日もこれか……押し込み式。)
ホームは満員。
否、**“満員を超えた何か”**で満ちていた。
「はい! 押しまーす!! いきますよー!」
「ちょっ、ちょっと待っ──」
ぐいっ!!
「むぎゅぅっ……!!」
カナタは抵抗ゼロで車内に吸い込まれた。
もはや人じゃない。荷物。
(俺……今日、人じゃないわ……)
押し込まれた瞬間、
“鼻を殺しに来る何か”がカナタの嗅覚をぶん殴った。
(……ッ!? 来た!!)
右:汗×油×加齢臭=鼻パンチ。
左:酒の残り香=アルコール蒸気攻撃。
背後:酸っぱいシャツ臭=熟成型バイオテロ。
(三方向からデバフ!? これRPGなら即死!?)
しかも、車体が揺れるたびに臭気が攪拌される。
(やめろ……混ぜるな!!)
至近距離のスーツの背中には汗染みがべっとり。
今にも顔に触れそう。
「……助けてくれ……誰でもいいから……」
もちろん助かるわけはない。
逃げ場も空気も自由もない。
「……地獄……」
誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いて、
カナタはただ、最寄り駅に着くのを待つしかなかった。
会社に入った瞬間、怒号が飛んできた。
「カナタぁ!! この資料まだ出来てねぇぞ!! どうなってんだ!?」
(……入室0秒で怒鳴り声。ファミ◯ーマートの店員より反応がいいな……)
「昨日のデータがまだ来てなくて……それが無いと仕上げられないんですが……」
本当のことを言っただけなのに、上司の顔はさらに赤くなる。
「言い訳すんな!! お前が段取り悪いから全部遅れんだよ!!」
(令和なのにまだこんなブラック企業が残っていることに驚くよ……
上司の出身高校はP◯学園?日◯学園?)
「すみません。急ぎます」
とりあえず謝る。
怒鳴り返される未来が容易に想像できるため、選択肢が他にない。
その後の流れは、いつも通り“仕事の押し付け祭り”だった。
コピー、資料運び、買い出し、別部署の雑務。
なぜかカナタのデスクに関係ない書類の山が積まれる。
「カナタ!! この数字まとめとけ!! 今日中な!!」
(これ、まったく俺の担当じゃないのに……俺の守備範囲はイ◯ローかよ……)
しかも、成果は全て上司名義。
完成した資料を提出すると、
上司は当然のように「よし、俺が作ったことにしとくからな!」と胸を張る。
(こんなアホ仕事をしていることが恥ずかしい……)
昼休み。
財布を開くと、小銭ばかりがやけに主張してきた。
「……パンだな」
100円パンをかじりながら、
カナタは一つの事実を静かに受け入れた。
(俺……働いてるんじゃなくて……搾取されてるだけだな……)
100円パンを無表情にもそもそ食べながら、
ふと頭に浮かんだのは、元カノの顔だった。
(……そういや、あいつ……元気かな……いや別に元気じゃないほうが嬉しいけど……)
カナタには、一度だけ本気で好きになった相手がいた。
恋というより、“この人と一生一緒にいるんだろうな”
そんな未来を自然に想像してしまうほどの相手。
笑い方も、話し方も、弱音を吐くときの声も、全部好きだった。
(……重かったんだよな、俺の愛……自覚はある……)
元カノは少し不器用だけど、優しいところがあって、
「カナタくんは頼りになるね」なんて言われたら、
その一言で一週間は頑張れるくらいだった。
そんなある日、彼女がぽつりと不安そうに言った。
「ちょっと……お願いがあって……
どうしても怖くて……信頼できるの、カナタくんしかいなくて……」
その時の自分は、ためらいもなかった。
(あぁ、守らないと。俺が……支えないと……)
そう思って、保証人の紙に自分の名前を書いた。
完全に信じ切っていた。
疑う理由なんて一つもなかった。
……はずだった。
けれど──
気づいた時には、
借金の全てがカナタの名義になり、
彼女は消えていた。
(……ほんと、見事にやられたな……俺……)
裏切られた、というより、
“信じすぎた結果、自爆した” に近い痛み。
転職は常に考えていたがブラックな労働環境に縛られ、時間を取れず、
そのまま今の生活へと沈んでいった。
100円パンの味は、
どんどん紙に近づいていく。
(あのときの俺に言いたいわ……
『その紙、命より重いぞ』って……)
パンを食べ終える頃には、
心の中に残ったのは、
重い後悔と、ほんの少しの諦めだけだった。
午後になると、不幸が高速連射で飛んできた。
・コーヒーこぼされた
→ なぜか謝ったのはカナタ
・経費申請がなぜかカナタだけ弾かれる
→ 上司「お前のやり方が悪い」
(どうせ上司は内容なんか見てないし……これもあと二回くらい、同じの出せば普通に通るんだよな……)
・クレーム対応が丸投げ
・無茶ぶりの仕事が降ってくる
気づけば、時計は23時半。
(……お、今日は早めに帰れるじゃん……)
オフィスの灯りはカナタの席だけが残り、時計は23時半を指していた。
椅子を押し戻し、誰もいないフロアを出る。
深夜の冷気が体に触れ、ようやく一日が終わったことだけが実感として残った。
外はとっくに静まり返っていた。
街灯と遠くの信号だけが、機械的に時間を刻んでいる。
人気のない商店街を、カナタは足を引きずるように歩いた。
胃は空っぽ。
頭は鈍い痛みだけが残っている。
自販機の眩しい光が、妙に刺さった。
「……俺……さ……」
抑揚のない声が、夜に溶ける。
「どこで……間違えたんだろうな……」
答えの出ない問いだけが、
深夜の道路にぽつりと落ちて消えた。
商店街の角を曲がったあたりで、
頭の奥で、金属をこすったような高い音が鳴り響いた。
「……っ……?」
視界が揺れる。
地面が波打って見える。
めまい。
耳鳴り。
吐き気。
体から、一気に力が抜けていく。
(……あ、これ……やば……)
足がもつれ、膝に力が入らなくなる。
掴まるものを探すより早く、体は前へ倒れた。
次の瞬間、
頭の中で何かがプツンと切れたような感覚が走った。
「……っ……!」
アスファルトの冷たさが頬に触れる。
でも、その感覚すら薄れていく。
(……あぁ……無理だ……もう……)
街灯の光が滲む。
世界が静かに白へと塗り替わっていく。
音も、寒さも、空気の匂いもすべて遠ざかり──
(……あれ……?)
気づけば、
カナタは 真っ白な空間 に横たわっていた。
上下も、奥行きも、地面の感触すら曖昧。
ただ“白”だけが、無限に広がっている。
(……ここ……どこ……?)
息をする感覚はあるのに、
現実の空気じゃない。
起き上がろうとすると、さっきの重さが嘘のように消えている。
その瞬間──
どこからともなく、深い声が響いた。
──え……なんで君が、ここに……?
戸惑いを隠せないその声に、カナタはゆっくりと振り返った。
相変わらず不運とストレスが積み重なる、いつもの地獄コースだった。
目覚ましの電子音が、死にかけの虫みたいな響き方で薄い壁を震わせた。
「……生きたくねぇ……」
六畳一間のボロアパート。
湿気+かび臭+天井の謎シミの三連コンボ。
布団はベトッ、ベッドはギシギシッ、腰はズキッ。
(寝てダメージ食らうベッドってなんだよ……)
そんなことを考えながら起き上がったら、机から紙がひらり。
──督促状。
「……はいはい、おはよう赤封筒……」
白→黄→赤に進化したその存在は、
もはや“朝の挨拶担当”として完全に定着していた。
と、その時。
「おいコラァ!! 朝からぶっ殺すぞバイク野郎!!」
「テメェが殺されるほうだろボケェ!!」
隣の住人、今日もフルスロットル。
毎日この調子。
もはや“隣人が静かな日”が異常事態。
(……こわ……この部屋の家賃だけ安い理由、明確すぎる……)
壁ドンする勇気なんて当然ない。
壁が薄すぎて、ドンした瞬間こっちが死ぬ。
「……頼むから静かにしてくれよ……」
カナタの呟きが、天井のシミに吸い込まれていった。
時計を見る。
「……やっべ。家、出なきゃいけない時間まで10分……」
寝不足すぎる顔を鏡で確認。
映っていたのは、疲れきった社畜ゾンビ。
「ネクタイ……昨日のままじゃん……もういいわ……」
そのとき、また隣から悪魔の声。
「こんな時間に洗濯機回してんの誰だテメェ!! ぶっ壊すぞ!!」
(俺じゃねぇよ……! てかお前の声のほうが騒音だよ!!)
ツッコミを胸にしまい込み、カバンを掴む。
「……はぁ……行くしかねぇか……」
ドアを閉めると、背後の怒号はまだ続いていた。
振り返ったら負けだ。
階段を降り、駅へ向かう途中──
(あぁ……もういるな……人混みの気配……)
近づくにつれ、人の密度が指数関数的に跳ね上がる。
駅に着いた瞬間、カナタは悟った。
「ひっどいなこれ……」
階段の上から見下ろすと、
ホームまでびっしり詰め込まれた人、人、人。
(この国、人口多すぎだろ……)
電光掲示板を見る。
──《次の電車:2分後》
(2分!? いや、これを走れって? でも走れねぇ人壁!)
意気込んで前へ出ようとしても、
前の人のカバンが腰をブロック。
左の人の肘が脇腹をヒット。
右の人の傘が足に刺さる。
「押すなよ!!」「痛てぇって!」「止まるな!!」
(これってただの朝なの?それとも 暴動?)
なんとか改札を抜けた瞬間──
「乗車される方押しまーす!! 詰めてくださーい!!」
駅員の声が凛々しい。
完全にプロフェッショナルのトーン。
(あぁ……今日もこれか……押し込み式。)
ホームは満員。
否、**“満員を超えた何か”**で満ちていた。
「はい! 押しまーす!! いきますよー!」
「ちょっ、ちょっと待っ──」
ぐいっ!!
「むぎゅぅっ……!!」
カナタは抵抗ゼロで車内に吸い込まれた。
もはや人じゃない。荷物。
(俺……今日、人じゃないわ……)
押し込まれた瞬間、
“鼻を殺しに来る何か”がカナタの嗅覚をぶん殴った。
(……ッ!? 来た!!)
右:汗×油×加齢臭=鼻パンチ。
左:酒の残り香=アルコール蒸気攻撃。
背後:酸っぱいシャツ臭=熟成型バイオテロ。
(三方向からデバフ!? これRPGなら即死!?)
しかも、車体が揺れるたびに臭気が攪拌される。
(やめろ……混ぜるな!!)
至近距離のスーツの背中には汗染みがべっとり。
今にも顔に触れそう。
「……助けてくれ……誰でもいいから……」
もちろん助かるわけはない。
逃げ場も空気も自由もない。
「……地獄……」
誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いて、
カナタはただ、最寄り駅に着くのを待つしかなかった。
会社に入った瞬間、怒号が飛んできた。
「カナタぁ!! この資料まだ出来てねぇぞ!! どうなってんだ!?」
(……入室0秒で怒鳴り声。ファミ◯ーマートの店員より反応がいいな……)
「昨日のデータがまだ来てなくて……それが無いと仕上げられないんですが……」
本当のことを言っただけなのに、上司の顔はさらに赤くなる。
「言い訳すんな!! お前が段取り悪いから全部遅れんだよ!!」
(令和なのにまだこんなブラック企業が残っていることに驚くよ……
上司の出身高校はP◯学園?日◯学園?)
「すみません。急ぎます」
とりあえず謝る。
怒鳴り返される未来が容易に想像できるため、選択肢が他にない。
その後の流れは、いつも通り“仕事の押し付け祭り”だった。
コピー、資料運び、買い出し、別部署の雑務。
なぜかカナタのデスクに関係ない書類の山が積まれる。
「カナタ!! この数字まとめとけ!! 今日中な!!」
(これ、まったく俺の担当じゃないのに……俺の守備範囲はイ◯ローかよ……)
しかも、成果は全て上司名義。
完成した資料を提出すると、
上司は当然のように「よし、俺が作ったことにしとくからな!」と胸を張る。
(こんなアホ仕事をしていることが恥ずかしい……)
昼休み。
財布を開くと、小銭ばかりがやけに主張してきた。
「……パンだな」
100円パンをかじりながら、
カナタは一つの事実を静かに受け入れた。
(俺……働いてるんじゃなくて……搾取されてるだけだな……)
100円パンを無表情にもそもそ食べながら、
ふと頭に浮かんだのは、元カノの顔だった。
(……そういや、あいつ……元気かな……いや別に元気じゃないほうが嬉しいけど……)
カナタには、一度だけ本気で好きになった相手がいた。
恋というより、“この人と一生一緒にいるんだろうな”
そんな未来を自然に想像してしまうほどの相手。
笑い方も、話し方も、弱音を吐くときの声も、全部好きだった。
(……重かったんだよな、俺の愛……自覚はある……)
元カノは少し不器用だけど、優しいところがあって、
「カナタくんは頼りになるね」なんて言われたら、
その一言で一週間は頑張れるくらいだった。
そんなある日、彼女がぽつりと不安そうに言った。
「ちょっと……お願いがあって……
どうしても怖くて……信頼できるの、カナタくんしかいなくて……」
その時の自分は、ためらいもなかった。
(あぁ、守らないと。俺が……支えないと……)
そう思って、保証人の紙に自分の名前を書いた。
完全に信じ切っていた。
疑う理由なんて一つもなかった。
……はずだった。
けれど──
気づいた時には、
借金の全てがカナタの名義になり、
彼女は消えていた。
(……ほんと、見事にやられたな……俺……)
裏切られた、というより、
“信じすぎた結果、自爆した” に近い痛み。
転職は常に考えていたがブラックな労働環境に縛られ、時間を取れず、
そのまま今の生活へと沈んでいった。
100円パンの味は、
どんどん紙に近づいていく。
(あのときの俺に言いたいわ……
『その紙、命より重いぞ』って……)
パンを食べ終える頃には、
心の中に残ったのは、
重い後悔と、ほんの少しの諦めだけだった。
午後になると、不幸が高速連射で飛んできた。
・コーヒーこぼされた
→ なぜか謝ったのはカナタ
・経費申請がなぜかカナタだけ弾かれる
→ 上司「お前のやり方が悪い」
(どうせ上司は内容なんか見てないし……これもあと二回くらい、同じの出せば普通に通るんだよな……)
・クレーム対応が丸投げ
・無茶ぶりの仕事が降ってくる
気づけば、時計は23時半。
(……お、今日は早めに帰れるじゃん……)
オフィスの灯りはカナタの席だけが残り、時計は23時半を指していた。
椅子を押し戻し、誰もいないフロアを出る。
深夜の冷気が体に触れ、ようやく一日が終わったことだけが実感として残った。
外はとっくに静まり返っていた。
街灯と遠くの信号だけが、機械的に時間を刻んでいる。
人気のない商店街を、カナタは足を引きずるように歩いた。
胃は空っぽ。
頭は鈍い痛みだけが残っている。
自販機の眩しい光が、妙に刺さった。
「……俺……さ……」
抑揚のない声が、夜に溶ける。
「どこで……間違えたんだろうな……」
答えの出ない問いだけが、
深夜の道路にぽつりと落ちて消えた。
商店街の角を曲がったあたりで、
頭の奥で、金属をこすったような高い音が鳴り響いた。
「……っ……?」
視界が揺れる。
地面が波打って見える。
めまい。
耳鳴り。
吐き気。
体から、一気に力が抜けていく。
(……あ、これ……やば……)
足がもつれ、膝に力が入らなくなる。
掴まるものを探すより早く、体は前へ倒れた。
次の瞬間、
頭の中で何かがプツンと切れたような感覚が走った。
「……っ……!」
アスファルトの冷たさが頬に触れる。
でも、その感覚すら薄れていく。
(……あぁ……無理だ……もう……)
街灯の光が滲む。
世界が静かに白へと塗り替わっていく。
音も、寒さも、空気の匂いもすべて遠ざかり──
(……あれ……?)
気づけば、
カナタは 真っ白な空間 に横たわっていた。
上下も、奥行きも、地面の感触すら曖昧。
ただ“白”だけが、無限に広がっている。
(……ここ……どこ……?)
息をする感覚はあるのに、
現実の空気じゃない。
起き上がろうとすると、さっきの重さが嘘のように消えている。
その瞬間──
どこからともなく、深い声が響いた。
──え……なんで君が、ここに……?
戸惑いを隠せないその声に、カナタはゆっくりと振り返った。
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