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「今日も可愛かったです」
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「今日も可愛かったです」
「えへへ、ありがと~!今日もアンコールする~?」
「もちろん、もう注文しました!今日の2曲目、もう一回いいですか?」
「わかった~!じゃあ行ってくるね」
「はい!」
スタッフに曲をお願いして舞台に立つ。
少しだけ暗くなった店内で僕だけがライトアップされる、この瞬間が好き。
イントロが始まる直前にアンコールを注文してくれた彼にウインクを送ると、彼が元気よく叫んだ。
「~!」
分厚い眼鏡に長い前髪、いつも同じ黒い服の彼は僕のことが大好きな僕のファン。
週に3回以上は必ず僕に会いに来て、こうしてアンコールをリクエストしてくれる。
僕はお店のエースだからファンはたくさんいるけど、僕だけを見つめてくれるのは彼しかいないと思う。
みんな、なんだかんだいって他の子に目移りしちゃうことがあるから。
「サビいくよー!」
「いっちー!!!」
彼が作ったコールに合わせて体を動かすのは楽しい。彼のコールはなんというか体によく馴染む。
よく通る声なのに僕のことを邪魔しないし、なにより声質が綺麗だ。
それに、やっぱりこうやって応援してくれるのは嬉しい。
あと、コールをしつつも、ちゃんと僕の歌とダンスもしっかり見てくれるし、可愛いって言ってくれるし、最高のファンだと思う。
「今日も最高でした!」
「ありがと!アンコールのチェキ撮ろ?」
「はい!あとチェキ追加で2枚お願いします」
チェキ用のブースで二人寄り添って撮影する。
ここはチェキを注文してくれた人と、アンコールを注文してくれた人だけが入れる場所だから、今は僕と彼の二人しかいなかった。
ステージ直後だから前髪に汗が滲んで気持ち悪い。
それが恥ずかしくてハンカチで拭こうとすると、彼がその前髪も可愛いですって褒めてくれて嬉しくなった。
僕が可愛いのは分かっているけど、彼は僕以上に僕を可愛いって言ってくれるから本当に気分がいい。
サービスでいつもより近かった距離のせいか、チェキに映った彼は真っ赤な顔でピースをしていた。
「今日も本当に可愛くて歌もダンスも素敵でした。あと、アンコールのウインク、いつもより長めだったのが可愛かったです。…またしてほしいです。次のステージも楽しみです、確か金曜日でしたよね?必ず行くので、またチェキお願いします…。あと、前に着ていた紫のメイド服いつかまた着て下さい」
3枚目を撮り終わってチェキを渡すと、彼が大切そうにバッグの中へ仕舞った。
今日もありがとう、と書いたチェキに小さな声で、字まで可愛いなんてすごい…と彼が呟いた。
大きすぎるバッグを肩にかけたのを見て僕も一緒に立ち上がる。
メッセージを書いている間、椅子に座った僕を彼はずっと見つめていた。
人をこうやって凝視するのは彼の癖なのだろうか。
別に不愉快じゃないけど、厚いレンズの向こうで彼が何を考えているのか分からなくてたまに怖くなるときがある。
「また金曜日にきます」
僕のステージカレンダーを毎月確認して帰る彼はファンの鏡だ。
今日のチェキを収納していたアルバムはもう何冊目になったのかわからない。それくらい通いつめてくれていた。
「うん、行ってらっしゃい」
首を傾げて小さく手を振る。”いらっしゃいませ”が”お帰りなさい”になるなら、”ありがとうございました”は”行ってらっしゃい”になる。メイド喫茶のお約束だ。
「はい!行ってきます!」
もう何回もこうやってお見送りしているのに、彼は毎回嬉しそうに手を振り返してくれる。その仕草はまるで大きな犬みたいで可愛らしい。
そもそも、僕は僕のファンが大好きだからちょっとだけ贔屓目に可愛く感じるのは仕方ないと思う。
何度も振り返って僕を確認しながら降りる彼が帰るまで僕はずっと手を振り続ける。
そしたら、最後の一段で口角をだらしなく上げて、本当に嬉しそうに笑って手を降ってくれる彼に会えるから。
それが僕の密かな楽しみの一つだった。
「えへへ、ありがと~!今日もアンコールする~?」
「もちろん、もう注文しました!今日の2曲目、もう一回いいですか?」
「わかった~!じゃあ行ってくるね」
「はい!」
スタッフに曲をお願いして舞台に立つ。
少しだけ暗くなった店内で僕だけがライトアップされる、この瞬間が好き。
イントロが始まる直前にアンコールを注文してくれた彼にウインクを送ると、彼が元気よく叫んだ。
「~!」
分厚い眼鏡に長い前髪、いつも同じ黒い服の彼は僕のことが大好きな僕のファン。
週に3回以上は必ず僕に会いに来て、こうしてアンコールをリクエストしてくれる。
僕はお店のエースだからファンはたくさんいるけど、僕だけを見つめてくれるのは彼しかいないと思う。
みんな、なんだかんだいって他の子に目移りしちゃうことがあるから。
「サビいくよー!」
「いっちー!!!」
彼が作ったコールに合わせて体を動かすのは楽しい。彼のコールはなんというか体によく馴染む。
よく通る声なのに僕のことを邪魔しないし、なにより声質が綺麗だ。
それに、やっぱりこうやって応援してくれるのは嬉しい。
あと、コールをしつつも、ちゃんと僕の歌とダンスもしっかり見てくれるし、可愛いって言ってくれるし、最高のファンだと思う。
「今日も最高でした!」
「ありがと!アンコールのチェキ撮ろ?」
「はい!あとチェキ追加で2枚お願いします」
チェキ用のブースで二人寄り添って撮影する。
ここはチェキを注文してくれた人と、アンコールを注文してくれた人だけが入れる場所だから、今は僕と彼の二人しかいなかった。
ステージ直後だから前髪に汗が滲んで気持ち悪い。
それが恥ずかしくてハンカチで拭こうとすると、彼がその前髪も可愛いですって褒めてくれて嬉しくなった。
僕が可愛いのは分かっているけど、彼は僕以上に僕を可愛いって言ってくれるから本当に気分がいい。
サービスでいつもより近かった距離のせいか、チェキに映った彼は真っ赤な顔でピースをしていた。
「今日も本当に可愛くて歌もダンスも素敵でした。あと、アンコールのウインク、いつもより長めだったのが可愛かったです。…またしてほしいです。次のステージも楽しみです、確か金曜日でしたよね?必ず行くので、またチェキお願いします…。あと、前に着ていた紫のメイド服いつかまた着て下さい」
3枚目を撮り終わってチェキを渡すと、彼が大切そうにバッグの中へ仕舞った。
今日もありがとう、と書いたチェキに小さな声で、字まで可愛いなんてすごい…と彼が呟いた。
大きすぎるバッグを肩にかけたのを見て僕も一緒に立ち上がる。
メッセージを書いている間、椅子に座った僕を彼はずっと見つめていた。
人をこうやって凝視するのは彼の癖なのだろうか。
別に不愉快じゃないけど、厚いレンズの向こうで彼が何を考えているのか分からなくてたまに怖くなるときがある。
「また金曜日にきます」
僕のステージカレンダーを毎月確認して帰る彼はファンの鏡だ。
今日のチェキを収納していたアルバムはもう何冊目になったのかわからない。それくらい通いつめてくれていた。
「うん、行ってらっしゃい」
首を傾げて小さく手を振る。”いらっしゃいませ”が”お帰りなさい”になるなら、”ありがとうございました”は”行ってらっしゃい”になる。メイド喫茶のお約束だ。
「はい!行ってきます!」
もう何回もこうやってお見送りしているのに、彼は毎回嬉しそうに手を振り返してくれる。その仕草はまるで大きな犬みたいで可愛らしい。
そもそも、僕は僕のファンが大好きだからちょっとだけ贔屓目に可愛く感じるのは仕方ないと思う。
何度も振り返って僕を確認しながら降りる彼が帰るまで僕はずっと手を振り続ける。
そしたら、最後の一段で口角をだらしなく上げて、本当に嬉しそうに笑って手を降ってくれる彼に会えるから。
それが僕の密かな楽しみの一つだった。
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