ボディガードはオジサン

しょうわな人

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第1話 ただいま、おかえり……

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 私の名前は鴉武史からすたけふみ、40歳。

 今、私は物凄く困っている……

 とある場所で骨を埋める覚悟をした途端に、この仕打ち……

 思えば15歳の時に拉致されて、何やかやと苦労に苦労を重ねて何とか救う事が出来た異世界ラノワール。

 それで、残る余生を今までに貯めたお金で悠々自適にスローライフって思ってたのに…… 突然脳内に声が響いたのだ。

『お疲れ様~、君のお陰で助かったよ。有難う。で、もう用事は終わったから帰ってね~、本当に有難うね~』

 って……

 で、今の私は何処にいるかと言うと、誰も居ない15歳まで確かに住んでいた実家の私室…… 何も変わってないからひょっとしたら私も15歳に戻ったのかと鏡を見るとちゃんと老けたままだった……

 思わず両親の名前を呼んで部屋から出ると、大きな仏壇に2つの位牌…… 既に両親は亡くなっていた……

 親不孝者を許して下さいと線香を上げて私室に戻り、今現在と言う訳だ……

 えっと、戸籍とかどうなってるんだろうか? それにこの家の名義は? もしかして不法侵入者なのか? いや、待て待て、私自身はどういう扱いになっているのだろうか? 拉致されて25年も経ってるんだから、死亡扱いか? 

 何だかどっと疲れたから、明日の朝から行動する事にしよう。今日はこのまま寝よう……

 ただ、1言だけ言っておこうかな……

「ただいま、おかえり……」

 ひと粒の涙が目から溢れたけど、私は寝る事にした。


 明けて翌朝である。私は唐突に思い出したのだ。そうだ、アイツが居た!

 我が家の隣に幼馴染のお節介焼きの女の子、4つ年下の棚機弥生たなばたやよいが居た事を思い出した私は私室の窓を開けた。
 
 で、固まった……

「えっと…… 確かに弥生の部屋の窓がココにあった筈なんだが……」

 そう、幼稚園、小学校、中学校までだが、私の私室の窓を開けるとちょうど弥生の私室の窓があってオタクになってしまった私に、何時も変わらずに接してくれた弥生の部屋の窓が、無い……

 白い無機質な壁が私の目の前にあった……

 そうだよな…… 25年だから変わっててもおかしくないよな…… そして私はまた途方に暮れる。

 どうしようか? 他に誰か居なかったか? 

 居たーっ!! アイツなら、私の今の境遇を説明しても笑ったり馬鹿にしたりせずに聞いてくれる筈だ! 中学校の頃と性格が変わっていなければだが……

 そして、私は両親が残してくれていた中学の卒業名簿を取り出した。が、個人の連絡先を書いている筈もなく……

「詰んだか……」

 と独り言を言っていた。それから考えに考えて、取り敢えず生活基盤を何とかしなければならないと思い、拉致される前に親からの小遣いやお年玉の余りを机の鍵付き引出しに入れていた事を思い出した。

「良しっ! コレで当面は何とかなる!」

 私は鍵がそのまま隠し場所にあったのを確認して、机の引出しを開けた。
 そこには……

武史たけふみへ】

 と書かれた封筒が2つあった。上側は母の字だ。下の封筒は父の字だった。私は封の閉ざされた2つの封筒を取り出して、下にあった父の字の封筒を開けた。


武史たけふみ、父さんはお前が自分から失踪したなんて信じちゃいない。お前は誰かにかどわかされて、今も何処か父さんの知らない場所で元気で生きているって信じているぞ。必死に手掛かりを探したんだが、ちっとも掴めない情けない父さんをどうか許してくれ。そして、父さん、何と末期ガンらしい…… 余命半年って言われてしまったよ。スマンな、本当に情けない親父で…… もしも、お前が帰ってきた時の為に、父さんが出来る事をココに記しておく。家の名義はお前にしてある。相続税も支払い済みだ。だから、元気な顔を1日でも早く母さんに見せてやってくれ! 情けない親父からの願いだ。頼んだぞ、武史たけふみ

 私は泣いた…… 

「父さん、ゴメン。情けないのは私のほうだ…… 結局、母さんにも会えなかったよ……」

 泣きながら私は母の封筒を開いた。

武史たけふみへ、貴方がいつ帰って来てもいいように、この家は維持してもらえる事になりました。隣の弥生ちゃん、それに同じクラスだった相馬武史そうまたけしくんに感謝しなさいね。2人のお陰で貴方の権利は守られたの。そして、ゴメンナサイね。出迎えてあげられなくて…… 母さんも父さんと同じ病気になってしまったの…… 貴方が戻ってくるまで元気でいたかったけど無理みたい…… 情けない両親にどうか失望しないでちょうだいね…… 電気、ガス、水道については、下記の連絡先に電話を入れたら直ぐに使えるようにして貰えるわ。そして、当面の生活費として、貴方の部屋の押入れの中に父さんと母さんのタンス貯金を入れてあるから、ソレを使いなさい。それから、何年経っててもいいから、帰ってきたら相馬くんに連絡をいれなさい。彼なら貴方を助けてくれるから。 もう一度、ひと目会いたかった…… ゴメンね、武史たけふみ

 母さん、父さん!! 私の方こそスミマセン…… そして、ゴメンナサイ…… 心配をかけてしまって…… 本当にゴメンナサイ…… 

 小一時間は泣き続けた…… それから私は泣きはらした目を気にせずに、母の手紙にあった相馬武史そうまたけしに連絡しようと思った。けど、先ずはライフラインを復活させないと……
 それから私は母の書いてあった通りに私室の押入れを見てみたら、何と三千万円の大金が残されていた。取り敢えず三万円を握りしめて外に出た私は、コンビニを探す。
 そこで、ジュースとパンを買ってお金を崩して駅に向かい、街中で何故かあまり見かけなくなった公衆電話を何とか見つけて母さんの書いてあったライフラインの各連絡先に電話を入れた。
 そしたら、直ぐに使用可能にしますと、電気もガスも水道も言ってくれて、実際に家に戻ると全てが使用可能になっていた。

 電気が復活した事で、家の固定電話も使用可能になった。
  
 それから私は1時間ほど悩んだ末に相馬武史そうまたけしに連絡をした。090から始まる電話番号に違和感を覚えながら……

 呼び出し音2回で出た相手は、繋がるなりこう言ったのだ。

「おいっ! もしかして武史たけふみかっ!? この番号からって事はそうなんだろっ!! この野郎、心配かけやがって! 家に居るんだな! 今から会社を早退して行くから、何処にも行かずに待ってろ! 絶対だぞ!!」

 言うだけ言って電話は切られた。私は呆然としながらも、アイツ、変わってない…… と嬉しく思ったのだった……
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