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第2話 友は変わらず

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 それから、15分で家の呼び鈴が鳴らされた。私は不安な気持ちを押し殺して玄関に行き、扉を開けた。

 そこには…… 

武史たけふみっ!! ああ、年は取ったけど間違いなく、武史たけふみだっ!! やっと帰ってきやがったっ!! お帰り」

 私と同様に年を取ったけど、見覚えのある顔をした武史たけしが目に涙を浮かべながらそう言ってくれたのだ。私もまた泣いた。泣きながら武史たけしを家に招いた。

 家に入ったタケシは先ずは仏壇に行き手を合わせた。

「おじさん、おばさん、帰ってきたんだね、タケフミは元気そうだよ。二人が生きてる間に見つけられなくて本当にゴメン……」

 そう言うタケシに私は聞いた。

「タケシ、今はどんな仕事をしてるんだ?」

「タケフミ、俺は県警に勤めてるよ。今は階級は警視正である部署の課長職だ」

 何とタケシが警察に勤めているとは、私は驚いた顔をしていたのだろう、笑いながらこう言った。

「そんなに驚くなよ。タケフミ。今では妻はもう亡くなってしまったが子供も居るんだぞ。それよりも、お前の事だ。今まで何処に居て何をしていたんだ?」

 私は悩んだ。変わってないと思っていたタケシも警察という組織で仕事をしている…… 私の話を信じてくれるだろうか? それでも、電話をしたら直ぐに駆けつけてくれたタケシに嘘は言いたくないし、私は嘘が吐けない。だから私は意を決して話を始めた。

「その、信じてもらえないかも知れないが…… 異世界に行ってたんだ。そこは魔法もある世界でとある王国が魔王によって攻め込まれて滅亡の危機を迎えていて……」

 私の長い長い話をタケシは真剣な顔で聞いてくれている。そして話し終わった私にタケシは言った。

「そうか、それでいくら探しても何も痕跡を見つけられなかったんだな……」

 と……

「し、信じてくれるのか?」

 私はタケシにそう聞いた。

「当たり前だ、タケフミ。お前の目は嘘をついてる目じゃないし、当時お前の捜索に携わった刑事はみんなベテラン揃いだった。その人たちが何も痕跡が無いって困惑していたんだ。まあ、コレは警察に入った時に聞いた話だけどな。だから俺はお前を信じるよ」

「そうか…… 有難う……」

「で、だ…… ここからが肝心な話だが……」

 おう、そうだ。私が戻ってきて生活するに当たって問題は山積みだからな。だが、タケシならば何かいい案を出してくれるだろう。私はそう期待していた。

 そう、期待していたんだ!!

「エロフは居たのか? それとも、やっぱりエルフだけだったか? それに獣耳娘は? ドワーフはやっぱり女性もヒゲがあるのか? 魔女っ娘は? で、一体、誰で童貞を捨てた? 他に魔物でも魅力的な娘は居たか? ハッ、タケフミの事だからまさか、魔族と……?」

 オイッ、私の期待を返してくれ、タケシ! やっぱりコイツは何も変わっていなかった! 私のオタク仲間のままだったようだ……

「なあ、タケフミ、黙ってないで教えてくれよ。どうだったんだ? エロフは居たのか?」

 くそ、しかし現状はコイツしか頼れる人が居ない…… そして、私は嘘が吐けない……

「タケシ、いいか、心して聞けよ……」

「オ、オウ!(ゴクリ)」

「エロフは居た! 日本の巨乳グラビアアイドル並の、いやそれ以上のボリューミーなエロフが……」

「な、なにーっ! タケフミ、で、ヤッたのか? お前、ヤッたのか?」

 全くコイツは……

「タケシ、済まないな…… 俺はヤッたんだ…… エロフだけじゃなくて、獣耳娘とも、魔女っ娘とも、そう、魔族とも……」

 私は嘘が吐けない…… 聞かれた事に対して黙っておく事は出来るが、今、黙ったままだとタケシの協力が得られないかも知れない…… だから、恥ずかしい思いを押し殺して、正直にタケシに伝えたのだが……

「ッの野郎…… 俺を差し置いてエロフとヤッただとーっ!! しかも、それだけじゃない! 獣耳娘とも、魔女っ娘とも、更には魔族ともだとっ!? どんだけ節操が無いんだっ! タケフミ!! 亡くなったおじさんやおばさんはきっと草葉の陰で泣いてるぞっ!!」

 いや、絶対にその言葉はお前の嫉妬心から出てるよな……

 それに、俺は何も全員同時に相手をしたハーレムだった訳じゃない。初めてをエロフのお姉さんに成行きで奪われて、そのお姉さんとはそれきり会ってない。それから、パーティーメンバーだった獣耳娘の発情期に襲われて2度目の体験をし、そのパーティーを抜けた後に、魔王討伐に同行してくれた魔女っ娘が、溜まったら動きが悪くなるでしょって言って毎日抜いてくれた。それもその魔女っ娘がイケメンを見つけるまでの間だった……
 そして、魔族とは魔王その人で…… しっかりと昇天させたらもう悪い事はしませんっ! コレからは貴方の伴侶として生きていきますって言って、討伐完了をしたんだ。

 で、その瞬間にあの声が聞こえて日本に戻って来ていたんだ。
 
 私の微に入り細を穿つ説明にも納得がいってない様子のタケシだが、今の時点で何を言われても過ぎた時間は戻らないんだ…… 悪いな、タケシ。俺だけが実体験をしてしまって……

 俺の困った顔を見たタケシも気がついてくれたのだろう。

「あ、ああ、済まないな、タケフミ。あまりにもお前が羨ましすぎてな……」

 と、謝ってくれたよ。 

「じゃ、じゃあ気を取り直して、お前の戸籍については大丈夫だ。ちゃんと残してあるから心配するな。覚えてるか? 中3の時の同級で委員長をしていた小倉圭介を? あいつが今の市長でな。お前がいつ帰ってきてもいいように、ちゃんと残してくれてるんだ。それと、健康保険も国民健康保険だが、亡くなったおばさんがお前が50歳になるまでの間の保険料を支払い済だから、ココにある」

 と言って仏壇の引き出しから私の名前が入った健康保険証を取り出したタケシ。

「コレがあれば身分証明書代わりになるからな。無くすなよ。後はお前、車の免許を取れ。明日、俺が一緒に自動車学校に行ってやるから。車が無いとコッチでの生活はきついからな。金は大丈夫だろ? あのおばさんの事だから、ちゃんと残しておいてくれた筈だろうし。だから仕事を見つける前に先ずはここである程度、生活を出来る様にしようや」

「いいのか? お前も忙しいだろ?」

「なーに、俺はコレでも多少は出世してるからな。それに、この市では県庁所在地とはいえ、そんなに毎日大きな事件が起こる訳でも無いからな。明日、明後日の2日間ぐらいはお前に付き合える」

 持つべき者は友だと本当に思った。市長をしている小倉にも礼を言わなければと思いながら、それじゃ、明日から頼むとタケシに行って玄関まで見送った。 
 明日から本格的に始動しよう。友の助けを借りながらだが。
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