23 / 80
第23話 コンドルスター
しおりを挟む
東郷さんとの話を終えた私は家に戻って勉強を再開した。本屋で買った雑誌を同じく本屋で売られていたコンドルスターのCDを聴きながら読んでいく。
コンドルスターはリーダー【桜田登士】くんが16歳、サブリーダー【羽山陸】くんも同じく16歳。そしてメンバーの【南瀬泰斗】くんと【南瀬磧学】くんが双子で14歳。最年少は【仲村友哉】くんで13歳の5人グループだ。
5人とも声変りは終わっているので、この先、歌で声が出なくなる心配は無いとの事らしい。
5人ともイケメンくんだ。まあ、私から見るとまだ幼さの残る顔立ちではあるが。
曲は私のようなオジサンでも歌詞も良くてテンポは早いけど滑舌良く歌っているので聴きやすい。雑誌を読み終わり何気にCDの歌詞カードを見てみると、全15曲のうち12曲の作詞をリーダーのトウシくんが担当していた。作曲、編曲は全曲が何とコンドルスターと書かれているので、自分たちで行っているのだろう。
そして、残り3曲の作詞者は【7月7日】と書いて【たなばた】のルビが振ってある。もしかして弥生が書いたのだろうか? 私には15曲全てが聴きやすかったが、特にこの7月7日が作詞した3曲は歌詞がスゥーッと頭に入り胸に響いたのだった。
勉強を終え風呂にも入り食事も終えた私は深夜番組を眺めていたが、この日の番組には深野涼子さんの娘さんは出てないようだった…… というか男性タレントしか映ってない。私はそんなに上手くはいかないかと苦笑しながら就寝した。
翌朝私は事務所に向かう。今日は東郷さんよりも早く着いてやるという謎の意地を持って早く家を出た。何と事務所を開けるタカシさんと一緒に家を出たのだ。コレならば勝ったと思ったのもつかの間…… 既に昨日の時点でタカシさんの信頼を勝ち取っていた東郷さんはタカシさんから鍵も預かっており私たちが事務所に着いた時点で既に事務所を開けていた。
ま、負けた…… 何故か敗北感がこみ上げてくるが、そんな私の神経を知ってか知らずか東郷さんが言う。
「おはようございます、社長、タケフミくん。2人とも早いですねぇ。特にタケフミくんは早く来すぎだよ。10時にならないとコンドルスターの面々は到着しないよ」
ちなみにだが真理ちゃんの初出勤は来週からになる。面接時にちゃんと真理ちゃんからタカシさんにその話をしているそうだ。
そして、就業時間の10分前に香山信吾くんもやって来た。
「あの、香山信吾23歳です。本日からこちらで働く事になりました。よろしくお願いします」
素晴らしい。こんなにもちゃんと挨拶が出来るんだ。きっと立派な戦力に早い段階でなってくれるだろうと私は思う。
そして東郷さんも香山くんに挨拶をしている。香山くんは東郷さんも今日から勤め始めたと知り少し驚いていたけど。まあ無理もないか。見た目でいうとベテランさんだからなぁ。
そんな2人にタカシさんがあと1人、女性の方も居るけど、その人は来週頭からになりますと説明していた。
そして、香山くんが私を見る。
ん? 何だろう、私の顔に何かついてるのかな? そう考えていると東郷さんが私について説明を始めてくれた。
「ああ、シンゴくん。この人はね、ボディガードを生業にしてる人で今回は社長がコンドルスターの護衛依頼を出されたんだよ。鴉武史さんと言って実績もある方なんだ。今日の10時頃にこの事務所でコンドルスターと顔合せを兼ねて打合せをする予定なんだよ」
ああ、そうか…… 私が誰か分からなかったから、私を見ていたんだな。これは香山くんに悪い事をしてしまった。私は頭を下げながら香山くんに名乗った。
「挨拶が遅れました。こちらのタカシ社長に依頼されて本日より仕事に取り掛かる事になった鴉武史といいます。【迎撃紳士】という屋号でボディガードを請負ってます。よろしくお願いします」
「あ、いえ、はい。本日より事務所の職員になりました香山信吾です。こちらこそ、よろしくお願いします」
そして、私は手持ち無沙汰になってしまった…… それもそうだよな10時の約束に8時半よりも30分も早く来て何をするというのか……
東郷さんと香山くんはタカシさんから仕事の説明を受けており、質問しながら着実に仕事を熟していってるようだ。私はそれを羨ましそうに眺めながら退屈な時間を過ごしていた。
それでも時間というのは確実に過ぎていき、9時半を過ぎた頃に弥生と共にコンドルスターの面々が到着した。
「あらタケ兄、もう来てたの? 約束は10時だったよね?」
事務所に入ってくるなり私を見つけた弥生がそう声をかけてきた。
「いや、待たせるのも悪いと思って。少し早めに来たんだよ」
私の言い訳にふーんと言いながら弥生がコンドルスターの面々の方を見るとファンサービスをしているようだった。さすがに顔と名前が売れ出したグループなだけあってココまで来る間にファンに見つからない筈は無かった。
そして、着いてきたファンに嫌な顔をせずに対応している彼らを見て私は凄いなと素直に感心していた。
勿論、私もただ見ていただけではない。邪な考えを持つファンも多くいたのでコンドルスターの下半身に手を伸ばしても何故か自分の下半身に手を伸ばしてしまうように神経を少しだけ操作していたのだ。コレは【闇魔法】と【回復魔法】の【混合魔法】だ。彼女たちは不思議そうな顔をしながらも大人しく去っていった。
そして集まったファン全員との交流が終わるとリーダーのトウシくんはファンの娘たちに声をかける。
「ここには普通に暮らしている方たちも多く居られますから、今日だけは対応しましたけど近隣に住まれてる方の生活を優先しなくてはならないので今後はこのような対応はできません。どうか、理解して了承してくださいね。それと明後日から始まるライブをどうか見に来てください、よろしくお願いします!」
「「「「よろしくお願いしまーす!!」」」」
4人のメンバーも頭を下げてファンにそう言った。ファンの娘たちはそれに分かったーって返事をしながら大人しくその場を去っていった。
ファンサービスを終え事務所に入ってくるコンドルスターの5人。外から見えない位置まで進みタカシさんに言った。
「社長、今日は股間に手を伸ばしてくる人は居ませんでした。良かったです」
「そうか、まともなファンの娘たちだけだったんだな。コレからもそういう娘たちだけとは限らないから、登士と陸は泰斗や磧学、友哉に被害が無いように注意してやってくれよ。それと、今日から5人にはボディガードをつけるから安心してくれ。コチラのタケフミさんが5人についてくれる。物理的な危険から守ってくれるからタケフミさんから何か指示があったら従うようにしてくれよ」
タカシさんから紹介された私は5人に向かって頭を下げながら自己紹介をした。
「はじめまして、今回コンドルスターの護衛依頼を受けた鴉武史と言います。物理的な危険からは必ず守ります。その際に何らかの指示を私から出す場合もあるかも知れません。その時は私の指示に従っていただければと思います。よろしくお願いします」
5人は年下の自分たちにこんな丁寧な物言いをするんだという感じで驚いているが、そこに弥生が声をかけた。
「コレが依頼を受けて仕事をする【プロ】の証明よ。あなた達はタケ兄よりも遥かに年下だけど護衛対象が年下だからって、タメ口や乱暴な口調で喋ってくる人は2流以下だと思いなさい」
うん弥生よ、あまり持ち上げてくれるな。私はまだプロの自覚は無いんだ…… ただ、異世界で何度か受けた護衛依頼の時と同じように接しているだけなんだよ。
それから弥生が私に振り向いて2冊の写真集を手渡してきた。
コ、コレはまさか!?
「はい、お待ちかねのモノよ。深野さんが一度タケ兄に会いたいって言ってたわ。今回の仕事が終わってから段取りを考えてみるわね」
グッ! 護衛対象者がいるので、爆発しそうになる喜びを私が懸命に堪えたのは褒めて貰っても良いと思うのだが……
コンドルスターはリーダー【桜田登士】くんが16歳、サブリーダー【羽山陸】くんも同じく16歳。そしてメンバーの【南瀬泰斗】くんと【南瀬磧学】くんが双子で14歳。最年少は【仲村友哉】くんで13歳の5人グループだ。
5人とも声変りは終わっているので、この先、歌で声が出なくなる心配は無いとの事らしい。
5人ともイケメンくんだ。まあ、私から見るとまだ幼さの残る顔立ちではあるが。
曲は私のようなオジサンでも歌詞も良くてテンポは早いけど滑舌良く歌っているので聴きやすい。雑誌を読み終わり何気にCDの歌詞カードを見てみると、全15曲のうち12曲の作詞をリーダーのトウシくんが担当していた。作曲、編曲は全曲が何とコンドルスターと書かれているので、自分たちで行っているのだろう。
そして、残り3曲の作詞者は【7月7日】と書いて【たなばた】のルビが振ってある。もしかして弥生が書いたのだろうか? 私には15曲全てが聴きやすかったが、特にこの7月7日が作詞した3曲は歌詞がスゥーッと頭に入り胸に響いたのだった。
勉強を終え風呂にも入り食事も終えた私は深夜番組を眺めていたが、この日の番組には深野涼子さんの娘さんは出てないようだった…… というか男性タレントしか映ってない。私はそんなに上手くはいかないかと苦笑しながら就寝した。
翌朝私は事務所に向かう。今日は東郷さんよりも早く着いてやるという謎の意地を持って早く家を出た。何と事務所を開けるタカシさんと一緒に家を出たのだ。コレならば勝ったと思ったのもつかの間…… 既に昨日の時点でタカシさんの信頼を勝ち取っていた東郷さんはタカシさんから鍵も預かっており私たちが事務所に着いた時点で既に事務所を開けていた。
ま、負けた…… 何故か敗北感がこみ上げてくるが、そんな私の神経を知ってか知らずか東郷さんが言う。
「おはようございます、社長、タケフミくん。2人とも早いですねぇ。特にタケフミくんは早く来すぎだよ。10時にならないとコンドルスターの面々は到着しないよ」
ちなみにだが真理ちゃんの初出勤は来週からになる。面接時にちゃんと真理ちゃんからタカシさんにその話をしているそうだ。
そして、就業時間の10分前に香山信吾くんもやって来た。
「あの、香山信吾23歳です。本日からこちらで働く事になりました。よろしくお願いします」
素晴らしい。こんなにもちゃんと挨拶が出来るんだ。きっと立派な戦力に早い段階でなってくれるだろうと私は思う。
そして東郷さんも香山くんに挨拶をしている。香山くんは東郷さんも今日から勤め始めたと知り少し驚いていたけど。まあ無理もないか。見た目でいうとベテランさんだからなぁ。
そんな2人にタカシさんがあと1人、女性の方も居るけど、その人は来週頭からになりますと説明していた。
そして、香山くんが私を見る。
ん? 何だろう、私の顔に何かついてるのかな? そう考えていると東郷さんが私について説明を始めてくれた。
「ああ、シンゴくん。この人はね、ボディガードを生業にしてる人で今回は社長がコンドルスターの護衛依頼を出されたんだよ。鴉武史さんと言って実績もある方なんだ。今日の10時頃にこの事務所でコンドルスターと顔合せを兼ねて打合せをする予定なんだよ」
ああ、そうか…… 私が誰か分からなかったから、私を見ていたんだな。これは香山くんに悪い事をしてしまった。私は頭を下げながら香山くんに名乗った。
「挨拶が遅れました。こちらのタカシ社長に依頼されて本日より仕事に取り掛かる事になった鴉武史といいます。【迎撃紳士】という屋号でボディガードを請負ってます。よろしくお願いします」
「あ、いえ、はい。本日より事務所の職員になりました香山信吾です。こちらこそ、よろしくお願いします」
そして、私は手持ち無沙汰になってしまった…… それもそうだよな10時の約束に8時半よりも30分も早く来て何をするというのか……
東郷さんと香山くんはタカシさんから仕事の説明を受けており、質問しながら着実に仕事を熟していってるようだ。私はそれを羨ましそうに眺めながら退屈な時間を過ごしていた。
それでも時間というのは確実に過ぎていき、9時半を過ぎた頃に弥生と共にコンドルスターの面々が到着した。
「あらタケ兄、もう来てたの? 約束は10時だったよね?」
事務所に入ってくるなり私を見つけた弥生がそう声をかけてきた。
「いや、待たせるのも悪いと思って。少し早めに来たんだよ」
私の言い訳にふーんと言いながら弥生がコンドルスターの面々の方を見るとファンサービスをしているようだった。さすがに顔と名前が売れ出したグループなだけあってココまで来る間にファンに見つからない筈は無かった。
そして、着いてきたファンに嫌な顔をせずに対応している彼らを見て私は凄いなと素直に感心していた。
勿論、私もただ見ていただけではない。邪な考えを持つファンも多くいたのでコンドルスターの下半身に手を伸ばしても何故か自分の下半身に手を伸ばしてしまうように神経を少しだけ操作していたのだ。コレは【闇魔法】と【回復魔法】の【混合魔法】だ。彼女たちは不思議そうな顔をしながらも大人しく去っていった。
そして集まったファン全員との交流が終わるとリーダーのトウシくんはファンの娘たちに声をかける。
「ここには普通に暮らしている方たちも多く居られますから、今日だけは対応しましたけど近隣に住まれてる方の生活を優先しなくてはならないので今後はこのような対応はできません。どうか、理解して了承してくださいね。それと明後日から始まるライブをどうか見に来てください、よろしくお願いします!」
「「「「よろしくお願いしまーす!!」」」」
4人のメンバーも頭を下げてファンにそう言った。ファンの娘たちはそれに分かったーって返事をしながら大人しくその場を去っていった。
ファンサービスを終え事務所に入ってくるコンドルスターの5人。外から見えない位置まで進みタカシさんに言った。
「社長、今日は股間に手を伸ばしてくる人は居ませんでした。良かったです」
「そうか、まともなファンの娘たちだけだったんだな。コレからもそういう娘たちだけとは限らないから、登士と陸は泰斗や磧学、友哉に被害が無いように注意してやってくれよ。それと、今日から5人にはボディガードをつけるから安心してくれ。コチラのタケフミさんが5人についてくれる。物理的な危険から守ってくれるからタケフミさんから何か指示があったら従うようにしてくれよ」
タカシさんから紹介された私は5人に向かって頭を下げながら自己紹介をした。
「はじめまして、今回コンドルスターの護衛依頼を受けた鴉武史と言います。物理的な危険からは必ず守ります。その際に何らかの指示を私から出す場合もあるかも知れません。その時は私の指示に従っていただければと思います。よろしくお願いします」
5人は年下の自分たちにこんな丁寧な物言いをするんだという感じで驚いているが、そこに弥生が声をかけた。
「コレが依頼を受けて仕事をする【プロ】の証明よ。あなた達はタケ兄よりも遥かに年下だけど護衛対象が年下だからって、タメ口や乱暴な口調で喋ってくる人は2流以下だと思いなさい」
うん弥生よ、あまり持ち上げてくれるな。私はまだプロの自覚は無いんだ…… ただ、異世界で何度か受けた護衛依頼の時と同じように接しているだけなんだよ。
それから弥生が私に振り向いて2冊の写真集を手渡してきた。
コ、コレはまさか!?
「はい、お待ちかねのモノよ。深野さんが一度タケ兄に会いたいって言ってたわ。今回の仕事が終わってから段取りを考えてみるわね」
グッ! 護衛対象者がいるので、爆発しそうになる喜びを私が懸命に堪えたのは褒めて貰っても良いと思うのだが……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
314
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる