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第50話 能力者たち
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車は渋滞にハマることも無く順調に進んでいく。どうやらジョージさんは抜け道も良く分かっていて、この時間ならばこの道でとナビを無視して進んでいるようだ。中々有能な人だな。
私は最後部座席で周囲を【気配感知】と【魔力感知】で探りながら、深野さんとヒヤマさんの2人と雑談をしている。
そんな中、さっきからコチラの車に向かって魔力が飛んできているが、尽く私の結界によって跳ね返しているので何の問題もない。
後方を走る8台の車から順番に飛んできている魔力だが、お粗末すぎて鍛え直してやろうかと思うほどだ。そんなのじゃ冒険者に成り立ての13歳の子供にも敗けてしまうぞと言いたい。
まあ、私の特訓について来れる者は居ないだろうが……
「でね、鴉さん。香織ちゃんが鴉さんに出会った日にとても嬉しそうだったの。鴉さんは独身でいらっしゃるのでしょう? どうかしら、うちの香織ちゃんは?」
「ママ、突然なにを言ってるの! 私はともかく鴉さんにご迷惑になるでしょ!」
ヒヤマさんが慌てた様子でそう言うが、深野さんはキョトンとした様子で言葉を続ける。
「アラ、どうしてご迷惑になるの? 香織ちゃんとお付合いしてみませんかって聞いただけなのに。2人ともフリーなんだから大丈夫でしょ? そりゃ、ママとお付合いしてみませんかだとご迷惑になるでしょうけど……」
いえ、ご褒美になります。……とは言えないので私は苦笑いしながら返事をした。
「ハハハ、有難うございます。しかし、私とヒヤマさんとでは年齢に差がありすぎてヒヤマさんに悪いですよ」
私の返事を聞いて俯くヒヤマさんと、喋りだす深野さん。
「アラー、年齢差なんて気にしなくていいんですよ。それと、できたら香織ちゃんって呼んで上げて下さい。ランドールのナミちゃんやヒナちゃんを呼ぶみたいに。その方が香織ちゃんも嬉しい筈ですから」
ママと小さな声でヒヤマさんが抗議している。
「うーん、ヒヤマさんが構わないなら、カオリちゃんと呼ばせて貰います。良いかな?」
私の問いかけに小さく頷いたのを確認した。それにしても、私と付合うだなんて無理だろう。カオリちゃんは並んでいると深野さんにそっくりだから、私はお付合いしてみたいが私のようなオジサンではカオリちゃんに悪いと思ってしまう。
「あの、鴉さんはどうなんですか? 私みたいなタイプはお嫌いですか?」
なんとカオリちゃんからの問いかけだった。それを横でニコニコ笑顔で深野さんが見ている。私は正直に答えた。
「ハハハ、嫌いな訳ないよ。カオリちゃん」
少し冗談ぽくなるように答えたが私は目には真剣さを込めていた。が、カオリちゃんは俯いていたので私の目は見てないな…… コレはやらかしたか?
けれども、カオリちゃんからは
「それじゃ、日本に戻ってから真剣に考えてみて貰えますか? イギリスには仕事で来てますし」
と真面目なカオリちゃんらしい言葉が出てきたので、私もそうだね、仕事中だしそうしようと返事をしたのだった。
深野さんはそれを聞いたら目を瞑って寝てしまったようだ。
助手席から声が飛んできた。
「ウチの娘はやらんぞっ!!」
しかし、返り討ちにあった。
「パパ、黙っといてくれる?」
グムっと呻いて桧山さんは黙った。うーん、この家の力関係をしっかりと把握しないとイケナイなと私は内心で考えていた。
暫く魔力は飛んで来なかったのだが道が田舎道になり車が少なくなってきた頃にまた飛んで来るようになっていた。鬱陶しいことこの上無いが、ここで【魔力感知】を切る愚策はしたりしない。
いくら今飛んできてる魔力たちに実害が無いとは言っても、ひょっとしたら大使館であったように、私にもその存在を感じさせない何者かも飛んでくる魔力に紛れてチョッカイを出してくる可能性があるからだ。
車はそのまま走り続け、辺りが暗くなってきた頃にジョージさんが言った。
「あと~、3キロほど走ったらホテルを予約した町につきま~す。桧山Pはごめんなさ~い、僕と同室でぇ~す。カラスさんはリョウコさ~んとカオリさ~んの向かいの部屋になりま~す」
「ちょっ、待て、ジョージ! 何で俺がお前と同室なんだっ! 妻と娘と一緒の部屋でいいだろうがっ!?」
すかさず桧山さんから抗議の声が上がるが、ジョージさんは悪びれもせずにこう言った。
「オーッ、それは無理でぇーす。小さな町の小さなホテルでぇすから~、ダブルの部屋しかありませぇ~ん。桧山Pをリョウコさ~んと同室にしたら~、カオリさ~んが1人になりま~す。治安はそこまで悪くないですがぁ、ボディガードのカラスさ~んが守りやすいように~、この部屋割りにしましたぁ」
賛成でぇ~す。いかん、口調が感染ってしまった。口に出して言わなくて良かった。けれども本当に有能だ。確かにその部屋割りにしてくれたら守りやすい。
ジョージさんの正論に桧山さんも諦めたようだ。因みに深野さんとカオリちゃんはまだ寝ている。
その時だった。後ろからついて来るだけの8台の車のうち2台がスピードを上げてコチラを抜き去り、進路を防ぐ形で停車した。
「オーッ、一体ナニノモですかぁ!?」
いや、何者又は何事と言おうとしたんでしょうね、ジョージさん。驚いた表情をしているが、それでも冷静に車を停車してくれた。
私は起きているジョージさんと桧山さんに言う。
「2人とも、車から決して出ないで下さい。私が出ますので。桧山さん、奥様と娘さんが起きてもそのように伝えて下さいね」
そう言って二人が頷いたのを確認してから私は車外に出た。そして車内からは外が見えないように【闇魔法】で細工をした。更に音も遮音しておいた。コレで私も遠慮なくスキルを使用出来る。
先にコチラの車を抜き前に出てきた2台と、後ろに停車した6台から人が次々に降りてくる。
その数35人。そして、1人が口を開いた。
「1人で車を降りて来るとは馬鹿なのか? だが、我々の国では紳士は尊ばれる。そこは褒めてやろう。私はフリーメーデンのNo.2だ。大人しく車にいる深野とその娘を渡すならば他の者には危害を加える事はない」
ふむ、大人数だな。けれどもその数で私を抑えられると思っているのなら、私も舐められたモノだ……
火竜、火炎竜、獄炎竜をまとめて300体相手をした私を未熟者たちが35人程度でどうにか出来ると思っているのだろうか?
そこまで考えて私は気づいてしまった。
そう言えば、その事を、このおふざけ組織の面々が知っている筈が無いなと……
私は最後部座席で周囲を【気配感知】と【魔力感知】で探りながら、深野さんとヒヤマさんの2人と雑談をしている。
そんな中、さっきからコチラの車に向かって魔力が飛んできているが、尽く私の結界によって跳ね返しているので何の問題もない。
後方を走る8台の車から順番に飛んできている魔力だが、お粗末すぎて鍛え直してやろうかと思うほどだ。そんなのじゃ冒険者に成り立ての13歳の子供にも敗けてしまうぞと言いたい。
まあ、私の特訓について来れる者は居ないだろうが……
「でね、鴉さん。香織ちゃんが鴉さんに出会った日にとても嬉しそうだったの。鴉さんは独身でいらっしゃるのでしょう? どうかしら、うちの香織ちゃんは?」
「ママ、突然なにを言ってるの! 私はともかく鴉さんにご迷惑になるでしょ!」
ヒヤマさんが慌てた様子でそう言うが、深野さんはキョトンとした様子で言葉を続ける。
「アラ、どうしてご迷惑になるの? 香織ちゃんとお付合いしてみませんかって聞いただけなのに。2人ともフリーなんだから大丈夫でしょ? そりゃ、ママとお付合いしてみませんかだとご迷惑になるでしょうけど……」
いえ、ご褒美になります。……とは言えないので私は苦笑いしながら返事をした。
「ハハハ、有難うございます。しかし、私とヒヤマさんとでは年齢に差がありすぎてヒヤマさんに悪いですよ」
私の返事を聞いて俯くヒヤマさんと、喋りだす深野さん。
「アラー、年齢差なんて気にしなくていいんですよ。それと、できたら香織ちゃんって呼んで上げて下さい。ランドールのナミちゃんやヒナちゃんを呼ぶみたいに。その方が香織ちゃんも嬉しい筈ですから」
ママと小さな声でヒヤマさんが抗議している。
「うーん、ヒヤマさんが構わないなら、カオリちゃんと呼ばせて貰います。良いかな?」
私の問いかけに小さく頷いたのを確認した。それにしても、私と付合うだなんて無理だろう。カオリちゃんは並んでいると深野さんにそっくりだから、私はお付合いしてみたいが私のようなオジサンではカオリちゃんに悪いと思ってしまう。
「あの、鴉さんはどうなんですか? 私みたいなタイプはお嫌いですか?」
なんとカオリちゃんからの問いかけだった。それを横でニコニコ笑顔で深野さんが見ている。私は正直に答えた。
「ハハハ、嫌いな訳ないよ。カオリちゃん」
少し冗談ぽくなるように答えたが私は目には真剣さを込めていた。が、カオリちゃんは俯いていたので私の目は見てないな…… コレはやらかしたか?
けれども、カオリちゃんからは
「それじゃ、日本に戻ってから真剣に考えてみて貰えますか? イギリスには仕事で来てますし」
と真面目なカオリちゃんらしい言葉が出てきたので、私もそうだね、仕事中だしそうしようと返事をしたのだった。
深野さんはそれを聞いたら目を瞑って寝てしまったようだ。
助手席から声が飛んできた。
「ウチの娘はやらんぞっ!!」
しかし、返り討ちにあった。
「パパ、黙っといてくれる?」
グムっと呻いて桧山さんは黙った。うーん、この家の力関係をしっかりと把握しないとイケナイなと私は内心で考えていた。
暫く魔力は飛んで来なかったのだが道が田舎道になり車が少なくなってきた頃にまた飛んで来るようになっていた。鬱陶しいことこの上無いが、ここで【魔力感知】を切る愚策はしたりしない。
いくら今飛んできてる魔力たちに実害が無いとは言っても、ひょっとしたら大使館であったように、私にもその存在を感じさせない何者かも飛んでくる魔力に紛れてチョッカイを出してくる可能性があるからだ。
車はそのまま走り続け、辺りが暗くなってきた頃にジョージさんが言った。
「あと~、3キロほど走ったらホテルを予約した町につきま~す。桧山Pはごめんなさ~い、僕と同室でぇ~す。カラスさんはリョウコさ~んとカオリさ~んの向かいの部屋になりま~す」
「ちょっ、待て、ジョージ! 何で俺がお前と同室なんだっ! 妻と娘と一緒の部屋でいいだろうがっ!?」
すかさず桧山さんから抗議の声が上がるが、ジョージさんは悪びれもせずにこう言った。
「オーッ、それは無理でぇーす。小さな町の小さなホテルでぇすから~、ダブルの部屋しかありませぇ~ん。桧山Pをリョウコさ~んと同室にしたら~、カオリさ~んが1人になりま~す。治安はそこまで悪くないですがぁ、ボディガードのカラスさ~んが守りやすいように~、この部屋割りにしましたぁ」
賛成でぇ~す。いかん、口調が感染ってしまった。口に出して言わなくて良かった。けれども本当に有能だ。確かにその部屋割りにしてくれたら守りやすい。
ジョージさんの正論に桧山さんも諦めたようだ。因みに深野さんとカオリちゃんはまだ寝ている。
その時だった。後ろからついて来るだけの8台の車のうち2台がスピードを上げてコチラを抜き去り、進路を防ぐ形で停車した。
「オーッ、一体ナニノモですかぁ!?」
いや、何者又は何事と言おうとしたんでしょうね、ジョージさん。驚いた表情をしているが、それでも冷静に車を停車してくれた。
私は起きているジョージさんと桧山さんに言う。
「2人とも、車から決して出ないで下さい。私が出ますので。桧山さん、奥様と娘さんが起きてもそのように伝えて下さいね」
そう言って二人が頷いたのを確認してから私は車外に出た。そして車内からは外が見えないように【闇魔法】で細工をした。更に音も遮音しておいた。コレで私も遠慮なくスキルを使用出来る。
先にコチラの車を抜き前に出てきた2台と、後ろに停車した6台から人が次々に降りてくる。
その数35人。そして、1人が口を開いた。
「1人で車を降りて来るとは馬鹿なのか? だが、我々の国では紳士は尊ばれる。そこは褒めてやろう。私はフリーメーデンのNo.2だ。大人しく車にいる深野とその娘を渡すならば他の者には危害を加える事はない」
ふむ、大人数だな。けれどもその数で私を抑えられると思っているのなら、私も舐められたモノだ……
火竜、火炎竜、獄炎竜をまとめて300体相手をした私を未熟者たちが35人程度でどうにか出来ると思っているのだろうか?
そこまで考えて私は気づいてしまった。
そう言えば、その事を、このおふざけ組織の面々が知っている筈が無いなと……
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