寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

文字の大きさ
67 / 90
領地発展

061話 観光の続き

しおりを挟む
 昼からはセティナ姉さんの案内で観光に向かったよ。今日向かうのは【キタアラチ】という場所らしいけど、前世だと大人の歓楽街って感じで紹介されてた北新地きたしんちの地名に似ているから、不安が……

 はい、杞憂きゆうでしたー…… 考えてみたらセティナ姉さんがそんな場所に僕たちを連れて来る訳ないよね。ちょっとでも疑った僕がバカでした。セティナ姉さんに心の中で謝っていたらトモジ爺ちゃんがコソッと僕にこう言ったんだ。

「トーヤよワシ、ちょっとだけ期待してたんじゃが……」

 昔と違って僕が前世で45歳まで生きてた事を知ったトモジ爺ちゃんはそんな事を僕に言うようになったんだ。でも、今世の僕はまだ12歳だからね、トモジ爺ちゃん! 

 キタアラチはオシャレの街だったよ。庶民が気軽にオシャレを楽しむ為に、生地は貴族が着るドレスに劣るものの、奇抜なデザインのドレスなんかがあって、フェルとサハーラさんの目がランランと輝いている。僕はラウールさんと2人、顔を見合わせて苦笑したんだ。だってこれから女性の長ーい長ーい【お買い物】が始まると予想出来たからね。

 その時間は何と4時間半にも及んだよ……

 アッチにゴスロリドレスがあると聞けばソッチに向かい、アッチにエキゾチックドレスがあると聞けばソッチに向かう…… お店は近い場所に並んでいるけれど、1つのドレスを選ぶのに20分以上かけて選ぶから僕とラウールさんとトモジさんの【忍耐力】が試されていると感じてしまったよ。

 そして、セティナ姉さんが

「今日はもう時間ね。また遊びに来た時に案内するわ」

 と、フェルとサハーラさんに言った時に、2人は落胆した顔をして、僕とラウールさんとトモジさんがホッとした顔をしたのだった。そしてフェルから

「トーヤ、近いうちにまた絶対に連れて来てね!」

 と普段のフェルからは想像できないぐらいの強めの口調でお強請ねだりされたので、僕はウンウンと首を縦に振るしかなかったんだ。隣でサハーラさんもラウールさんに同じように言ってるよ。ラウールさんも首を縦に振っている。トモジ爺ちゃんはかなり疲れたのか首を項垂れているよ。

「フフフ、楽しんで貰えたようで良かったわ。さあ、夕食を食べに行きましょう。予約してあるから直ぐに食べられるわよ」

 セティナ姉さんがそう言って乗合馬車の停留所に案内してくれた。直ぐにやって来た馬車に乗り込んで僕たちが連れて来られたのは、前世のイタリアンレストランのようなおもむきのあるレストランだったよ。

「ここがアカネ様の言ってた【ペッツアローネ】よ。とても美味しくてお洒落な料理が多いのよ。トーヤも料理をするってフェルちゃんに聞いてたから、参考になればいいなと思って」

 セティナ姉さん、本当に有難う。僕はお洒落な料理は苦手だから、是非とも参考にしたいと思います。僕が笑顔で頭を下げると姉さんも嬉しそうな顔になったよ。

 そして、ペッツアローネの料理は【ザ!! イタリアン!!】そのものだったよ。

 ペペロンチーノじゃなく、ペペロンイーノだったり微妙に名前は違っても同じ料理だったんだ。コース料理を予約してくれてたから1品ずつ出てきたんだけど、本当に見た目が繊細でお洒落で、味も美味しくて僕は目から脳内にしっかりと焼き付けたよ。
 だってフェルがウットリした顔で食べてニコーッて笑うからね。絶対に僕もこんな料理を作れるように練習するんだ。

 大満足の夕食を食べ終えてお店を出るとちゃんと王宮から迎えの馬車が来ていたんだ。それに乗って王宮に戻ってアカネ様とフィリップ様にご挨拶したんだ。
 ちなみにルソン陛下は溜まりに溜まった執務を不眠不休でこなしておられるそうだよ…… 体を壊さないようにと心でお祈りしておいたよ。

 アカネ様とフィリップ様に明日には帰国しますってお伝えしたら、2人とも

「まだ1ヶ月や2ヶ月くらいかまへんやないの(ん)」

 って引き止めて下さったけど、僕たちも領民の為に領地発展をさせなくちゃいけないから、丁寧に楽しく有意義な時間を有難うございましたってお伝えして、明日帰る事を了承してもらったんだ。
 明日は王宮の転移陣から、僕とフェルとトモジ爺ちゃんと来てくれる職人さんたちは僕の領地の屋敷に、ラウールさんとサハーラさん、それにグレイハウ伯爵領に着いていく職人さんたちはラウールさんのお屋敷に転移してくれる事になったよ。

 その夜、僕の部屋でフェルが

「トーヤ! 転移陣があるからまた直ぐに来れるかしら?」

 なんて上目遣いで聞いてきたから、僕はフェルを抱きしめるのを理性を総動員して我慢したよ。ヤーコさんも居るしね。そのヤーコさんが、

「そこで押し倒すのがナニワサカイの男気です。はい~」

 って言ったのは無視したけどね。僕はフェルに領地で職人さんたちが落ち着いたらまた来ようねって筆談で伝えたんだよ。そしたらまたヤーコさんがこう言ったんだ。

「トーヤ様、何故しゃべれないフリをされてるのかは私は存じ上げませんが、私から秘密を漏らすことは絶対にありませんので、どうか気にせずにフェル様と会話をなさって下さい。はい~」

 僕もフェルもびっくりしてヤーコさんを見た。そしたら、ヤーコさんが

「昨日、トモジ様のお部屋で遮音魔法で音は聞こえませんでしたが、トーヤ様のお口が動いて喋られてるのは確認しました。はい~ 私は侍女をする前は諜報員でしたので、読唇術が出来るのです。はい~ けれども、お仕えするトーヤ様の秘密は誰にも漏らさないとココに誓います。はい~ ですので、よろしかったら私を雇って頂けませんか? 私はこの2日間でお2人に心酔しました!! はい~」

 なんて事を言い出したんだ。フェルと2人で顔を見合わせたんだけど、僕はもう決めていたんだ。連れて帰れるならこのヤーコさんを連れて帰ろうって。ヤパンの隠密がどれだけ優れているのか僕たちは分からないけど、ヤーコさんのように元諜報員の人が1人増えるだけで安心が大きくなると思うんだ。
 だから僕は夜間にも関わらず、アカネ様に面会を申し込んだんだ。直ぐに会ってくださると返事が来たから、フェルと2人でアカネ様の私室に向かったよ。

「どないしたん? トーヤくんもフェルちゃんも揃って」

 私室に入るなり僕とフェルがアカネ様に頭を下げたから、不思議そうにアカネ様に聞かれたよ。そしてフェルが本題に入ったんだ。

「夜分、突然に申し訳ありません。どうしても今日中にお願いしなければと思いまして…… あの、私とトーヤ、それにトモジさんをお世話してくれてる侍女のヤーコさんを引き抜きさせて貰えないでしょうか? 支払える対価は支払いいたしますので……」

 フェルがそう言うとアカネ様はアッサリと

「何や、ヤーコの事かいな。エエよ。あの娘はこの国から出たい出たいっていっつも言うてたからね。ええ機会やわ。トーヤくんとフェルちゃんやったらヤーコもノビノビと仕事が出来るやろうし。ウフフ、そういえば言うてなかったけど、ヤーコはうちの姉の子なんよ。せやから、よろしく頼むわな」

 そう言ったんだ。ヤーコさん、まさかのアカネ様の姪っ子さんでしたか…… でも、ちゃんと許可も頂いたから、僕は鞄から出すフリをしてアカネ様に温泉の素とハンドクリーム、フェイスクリーム、化粧水をお渡ししたんだよ。温泉の素はご自分で使っていただく為に。ハンドクリーム、フェイスクリーム、化粧水は各70本で、友好的な貴族や隣国に手渡し出来るように多めにお渡ししたんだ。僕の意図を汲んだアカネ様がニヤリッと笑いながら、

「おおきに、トーヤくん。これで次の隣国との交渉が有利に進みそうやわ」

 って言って喜んでくれたよ。
 
 そして、アカネ様の部屋を出て自分の部屋に戻ってヤーコさんに許可を頂いたから、明日は一緒に行きましょうって伝えたら、

「はい~、はい~、一所懸命にお仕えします~、はい~」

 って嬉しそうに興奮して返事をしてくれたよ。その夜、僕はヤーコさんの嬉しいという独り言を延々と聞かされて寝不足になるとは、この時はまだ知らなかったよ……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夜の声

神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。 読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。 小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。 柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。 そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

修正前の話の溜まり場

お寿司食べたい
ファンタジー
今修正している話の前のやつです。削除するのがもったいないので作りました。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...