愛を請うひと

くろねこや

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その後の話

証 1

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毎夜、眠る前。

オレ達は互いの足首にめたアンクレットに口付け合う。


それはオレ達の習慣になっている。




一緒に暮らし始めても凛は悪夢にうなされた。

悪夢の内容は、足枷と鎖に縛られて、複数の男達にひたすら犯され、辱められ続けるというものだ。

オレは隣で凛の眠りを見守る。
彼が眉間に皺を寄せ始めると起こし、穏やかな眠りに落ちるまで『愛してる』とキスを続ける。

無意識なのだろう。
凛が悪夢を見るのは、右足首の古傷に触れることがスイッチになっていることに気づいた。


凛の夢と繋がりたい。

『凛と繋がっていいのはオレ1人だけ』だ。

オレは対のデザインになっているアンクレットをその『証』として彼に贈り、互いの足首に嵌め合った。

ベッドに入り、足首に口付け合い、夢での再会を願いながら身体を重ねる。

何度も何度もオレを彼の身体の中に刻み込みながら、『凛はオレのだ。オレだけのものだ』と耳からも刻み込む。

ついには、『オレの声』だけで涙目の凛がぶるりと震えるようになった。
耳だけで達したらしい。

その頃には、彼の夢にオレだけが現れるようになったそうだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ずっとお前が左手に嵌めていた指輪が憎かった。

それに刻まれた女の名が憎かった。

『アズ』

オレより先に出会って、『女』で、『凛との子どもがいる』という理由で凛と毎日当たり前のように一緒に暮らしていた。


ーーー凛がオレの子をはらんでくれたらいいのに。
オレがお前の子を産むのでもいい。


何故ここまで彼に執着してしまうのか分からない。


それは、生まれて初めての『感情』だった。

電車の中で、スマホの画面を見て微笑んだ、優しい表情かお

一目惚れ、だった。


懐かしい、ミサト先生のような暖かさに惹かれ、同時に、彼の顔や身体のパーツ全てに欲情していた。

始めはいつもの『奴隷』にしようと考えていたのに。おっさんに、親友の彩人にさえも抱かせたくないと思った。


凛から取り上げたスマホの待ち受け画面には、うさぎを抱いて無邪気に笑う小さな子どもが映っていた。

彼は『コレ』を見て微笑んだのだ。

オレはこの子どもが羨ましいのだろうか。

こんなに綺麗な人に、慈しみ愛されている。



ーーー奪ってやりたい。

それが始まりだったのかもしれない。




毎週金曜日の夜、
必ず彼から指輪を奪い、一晩中抱いた。

凛は『愛してる』とは嘘でも言ってくれなかった。
その代わり、一つに交わるこの時間だけは、『お前の事だけ考える』と言ってくれた。


また次の金曜日に会う『約束の証』として、彼をアパートに送った車の中で、彼の口内を激しく舌で犯しながら憎い指輪を嵌める返す
別れたくなくて、『近所の人に見られたら…』と現実に戻ろうとする彼を、つい何度も引き戻してしまう。


3月のある金曜日、オレと凛の約束は破られた。

仕事が忙しいから、という理由だ。

その翌日、彼に一目でも会えたらとアパートに行ったが留守だった。

近所の公園。ぐずる一人の子どもを抱き上げて、『愛しい』という表情で見つめながら歩く凛の姿を見た。
誕生日ケーキを買っている。
あの女か、この子どもの為のものか。
今夜、どちらかが彼に『生まれてきたことを祝ってもらえる』のだ。

その瞬間、グルグルと黒くてドロリと重いものに身体を支配された。


気がつくと、アパートに上がり込み、わざと『アズ』に見せつけるように彼の唇を貪っていた。
女を追おうとする凛を手錠で縛って、泣き叫ぶ彼の身体をずっと犯し続けた。

凛が買っていたバースデーケーキを手掴みで口に含み、凛に口移しで無理矢理食べさせる。

オードブルも全部無くなるまで、虚ろな目で涙を流す凛に飲み込ませては、オレも貪るように食べ続けた。

クリームや油でベトベトになった口の周りを舐めてキレイにしてやり、また腰を動かし始める。



月曜日。
社長からの仕事で早朝出かけ、昼ごろアパートに戻ると、壊された手錠が床に落ちていた。

仕事に行ったのか、妻を迎えに行ったのか。


オレは凛の会社宛に、彼を初めて犯した日の動画をメールで送った。

凛に、オレと同じ『こちら側』へ堕ちてきて欲しかった。


火曜日。
凛が会社に出かけるのを待っていたように、知らない5~60代くらいの夫婦らしき2人組が、凛の部屋から荷物を運び出して行った。
おそらく『アズ』の両親だろう。
凛のことを口汚く罵っていた。
危うく殺しかけたが、テーブルには離婚届が置かれており、これで凛があの女から離れるのだと考えて我慢した。



大事にしていたはずの仕事を失い、妻に捨てられた凛は、オレの存在を否定する言葉を投げつけてきた。
彼の言う通りだ。こんなに汚くて価値のないオレなんか、生まれてこなければよかったのに……。

オレの思考は止まったまま、身体だけが勝手に動いた。
気がつくと、凛の意識を奪い、いつもの『監禁部屋』に連れ込んでいた。

彩人が凛の筆跡を真似て記入した離婚届を『代理人』が役所へ持って行く。

受理されたと分かった瞬間、憎い指輪をハンマーで叩き潰した。
それが『ただの金属の塊』に変わるまで、ひたすら叩き続けた。



オレ達や他の男達に汚されていくお前を見て『やっとこちら側に堕ちてきてくれたのだ』と思った。

同時に、自分の身体が切り裂かれるような激しい痛みと苦しさに襲われるのを感じた。

お前のナカにちんぽを挿れている間だけは、その痛みが弱まる気がした。



親友を守るためだけに生きてきたはずだった。

それなのに。



『凛と2人だけで生きられたら』

そう願うようになっていた。
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