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第10稿

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 俺は、自分の思いを断ち切る為に、就職するとか、就社するとか、また学校行くとかそういう発想の前に、きちんと音楽と距離を置こうと思い、楽器、つまり俺の命の次に大事な宝物だった我がギターを手放すことに。棄てるのはマジでアホだし、誰かにあげるのは行き先が分かるから、それも嫌だし、考えた末に売ることにしたんだ。何だかんだ言っても、これが一番賢い選択だった。一応フェンダーのストラトだし、そこそこの値段したから、とりあえず、神田界隈の楽器屋で買ったから、そこで売る。単純な発想だけど、またそこへ行きギターと音楽を葬り去ることに決めた。神田、神保町、九段下、御茶ノ水。どこで降りたって、歩いて回れる距離だ。東京の交通網は、便利なのか、無駄に駅が多いのか、時々理解に苦しむ。俺は、背中にギターを背負い、いかににも“ギターマンだぜ”みたいな雰囲気を漂わせながら、その辺りを練り歩いた。どの店で売ろうかなと。で、中古ギターの買取やってるとこ。看板を見てここだと思った高田楽器という店に入った。
「いらっしゃい」
「すいません。ギター売りたいんですけど」
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