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罪悪感に苛まれて
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「魂が二つ…?」
メームの言葉にドンキホーテは思わず聞き返す。
「うん!二つ!」
メームはそれに元気よく返した。しかしどういうことなのだろうか、魂が二つとは。ドンキホーテは身を乗り出して聞く。
「メームは魂が見えるのか?」
「もちろん!妖精族なら誰でも見えるわよ!」
「じゃあよ、例えばエイダと俺の魂のなにが違うんだ?」
ドンキホーテはより詳しく知るためにあえて自分の魂を引き合いに出して、質問を出した。するとメームは頭を抱えて考えだす。
少しの間メームは唸りながら考えていると結論が出たのか喋り出した。
「えーとねまず、そもそもねーあなたは普通の人なの、何故なら魂が一つしか無いから、あ、でもよく見たら凄い強靭な魂ね!」
話が脱線したのにメームは気がつき「おっといけない」といいつつ、話を戻す。
「でもねあの子は違う!魂が二つ!一つの体に2つの魂があるの!こんな人見た事ないわ!一つの体には普通、一つの魂しか無いはずなのによ!」
「な、なるほどなよくわかったぜ」
ドンキホーテは、力説するメームに若干、押されながらも理解はできたようだ。
魂が二つある、なんとなくではあるがドンキホーテはそれが誰の魂なのか理解し始めていた。
一つはエイダの魂、そしてもう一つは恐らく例の少年の魂なのだろう。
今までドンキホーテ達は、あの少年のことを外界からつまり神の世界からエイダに干渉している神、もしくは神に近い存在だと勘違いしていた。
仮にも勇者と名乗る存在だ、本当に2000年前の魔王を討伐した勇者ならば、従来の伝説通り神の座へとついているというのだからそう考えるのも無理はない。
しかし、ここ最近の話をまとめるとその信仰すべき勇者の、存在は作り上げられた偽物だった。そこでますます少年の正体がわからなくなってしまう。
「エイダと一緒にいる魂は一体何者なんだ…?」
ドンキホーテは思わず口に出してしまう。そしてちょうどその呟きを口から出した途端、ひとりの妖精が宴を開いているこの部屋に入ってくる。
「あの女の子の目が覚めたよ!」
なんだか揺れるような感覚がする。エイダが覚醒するとそこはツタでできたハンモックの上であった。
「確か私は…」
なにがあったか思い出す。今回はかなりはっきりと覚えている。
――そうだ、初めて私は…
「エイダ?大丈夫か?!」
ドンキホーテが部屋の中に最初に入ってくると、続いてアレン先生とマリデも入ってくる。
「みんな…」
「大丈夫か、エイダ?元気がないようじゃが」
「うん、ちょっと大丈夫じゃないかも」
ドンキホーテ達は神妙な顔つきになる。エイダになにかが起こったのだと直感で理解した。
「よかったら僕達に、話せるんだったら話してみないかい?相談にのるよ」
「そうだぜ俺たち仲間じゃないか!」
ドンキホーテとマリデがそう言う。アレン先生もいつのまにか膝の上に来て心配そうにエイダを見つめていた。
「そうだね」とエイダは呟きポツポツと喋り始める。
「私ね、実はね、初めて人に向けて攻撃魔法を使ったの」
エイダは俯き誰の目も見ようとしない。いや見ることができないと言った方が正しいのだろう。
「火の魔法を人に向けて…そしたら皆んな焼かれて…」
ドンキホーテは思い出す、あの飛空挺の甲板に転がっていたやけに装備の整った兵士のことだと。確かに鎧は焼け焦げていた。
「どうしよう私、とんでもないことをしちゃった人を傷つけちゃった!」
そこでエイダの罪悪感は頂点に達すると同時に、目から雫が流れ落ちる。
「エイダ…」
ドンキホーテはかける言葉が見つからなかった。
アレン先生はエイダの膝から降りるすると、白い猫の姿から美しい黒と白のローブを羽織った長身の美女へと変身を遂げる。
アレン先生はそのままエイダを抱きしめた。
エイダとて覚悟をしていないわけではなかった。いつか人を傷つける時が来るだろうと、エイダ自身そう思っていた。しかしそれはあくまで防衛のために傷つけるだろうと思っていた。
自分からしかも、まさか最悪死に至らしめるような魔法を相手にぶつけるなどとは思わなかっのだ。
自分の憎しみで人を傷つけようとしたこと、それ自体がエイダの罪悪感を刺激したのである。
「エイダ君、君はもしかして記憶を保っているのかい?」
アレン先生はエイダから離れる聞く「どうなんじゃエイダ」と、エイダは黙ったまま頷く。
「それは…そうか辛かったろうね…」
マリデはそれ以上あえて話を続けることはしなかった。なぜならこれ以上、エイダに対してかける言葉が見つからなかったからである。ドンキホーテも同じであった。
ただただエイダは静かに涙を流した、傍にはアレン先生が座り背中をさすってやっている。
(なんて言って慰めてやればいいんだろうな…こう言う時に…ダメだな俺は…)
今はどんな言葉も薄っぺらくなってしまう、ドンキホーテは歯がゆい思いを胸の奥に秘め、目の前で傷ついている優しい少女を助けるすべを探していた。
その時だ、この妖精の里の天井に穴が空いたのは。
まるですでにそこにあったかのように、その穴は出現した。
突如として朝日が妖精の里に降り注ぐ。その光の中には四つの人影が浮かんでいた。その中の1人が微笑みを浮かべこう言った。
「見つけたわ、エイダ」
メームの言葉にドンキホーテは思わず聞き返す。
「うん!二つ!」
メームはそれに元気よく返した。しかしどういうことなのだろうか、魂が二つとは。ドンキホーテは身を乗り出して聞く。
「メームは魂が見えるのか?」
「もちろん!妖精族なら誰でも見えるわよ!」
「じゃあよ、例えばエイダと俺の魂のなにが違うんだ?」
ドンキホーテはより詳しく知るためにあえて自分の魂を引き合いに出して、質問を出した。するとメームは頭を抱えて考えだす。
少しの間メームは唸りながら考えていると結論が出たのか喋り出した。
「えーとねまず、そもそもねーあなたは普通の人なの、何故なら魂が一つしか無いから、あ、でもよく見たら凄い強靭な魂ね!」
話が脱線したのにメームは気がつき「おっといけない」といいつつ、話を戻す。
「でもねあの子は違う!魂が二つ!一つの体に2つの魂があるの!こんな人見た事ないわ!一つの体には普通、一つの魂しか無いはずなのによ!」
「な、なるほどなよくわかったぜ」
ドンキホーテは、力説するメームに若干、押されながらも理解はできたようだ。
魂が二つある、なんとなくではあるがドンキホーテはそれが誰の魂なのか理解し始めていた。
一つはエイダの魂、そしてもう一つは恐らく例の少年の魂なのだろう。
今までドンキホーテ達は、あの少年のことを外界からつまり神の世界からエイダに干渉している神、もしくは神に近い存在だと勘違いしていた。
仮にも勇者と名乗る存在だ、本当に2000年前の魔王を討伐した勇者ならば、従来の伝説通り神の座へとついているというのだからそう考えるのも無理はない。
しかし、ここ最近の話をまとめるとその信仰すべき勇者の、存在は作り上げられた偽物だった。そこでますます少年の正体がわからなくなってしまう。
「エイダと一緒にいる魂は一体何者なんだ…?」
ドンキホーテは思わず口に出してしまう。そしてちょうどその呟きを口から出した途端、ひとりの妖精が宴を開いているこの部屋に入ってくる。
「あの女の子の目が覚めたよ!」
なんだか揺れるような感覚がする。エイダが覚醒するとそこはツタでできたハンモックの上であった。
「確か私は…」
なにがあったか思い出す。今回はかなりはっきりと覚えている。
――そうだ、初めて私は…
「エイダ?大丈夫か?!」
ドンキホーテが部屋の中に最初に入ってくると、続いてアレン先生とマリデも入ってくる。
「みんな…」
「大丈夫か、エイダ?元気がないようじゃが」
「うん、ちょっと大丈夫じゃないかも」
ドンキホーテ達は神妙な顔つきになる。エイダになにかが起こったのだと直感で理解した。
「よかったら僕達に、話せるんだったら話してみないかい?相談にのるよ」
「そうだぜ俺たち仲間じゃないか!」
ドンキホーテとマリデがそう言う。アレン先生もいつのまにか膝の上に来て心配そうにエイダを見つめていた。
「そうだね」とエイダは呟きポツポツと喋り始める。
「私ね、実はね、初めて人に向けて攻撃魔法を使ったの」
エイダは俯き誰の目も見ようとしない。いや見ることができないと言った方が正しいのだろう。
「火の魔法を人に向けて…そしたら皆んな焼かれて…」
ドンキホーテは思い出す、あの飛空挺の甲板に転がっていたやけに装備の整った兵士のことだと。確かに鎧は焼け焦げていた。
「どうしよう私、とんでもないことをしちゃった人を傷つけちゃった!」
そこでエイダの罪悪感は頂点に達すると同時に、目から雫が流れ落ちる。
「エイダ…」
ドンキホーテはかける言葉が見つからなかった。
アレン先生はエイダの膝から降りるすると、白い猫の姿から美しい黒と白のローブを羽織った長身の美女へと変身を遂げる。
アレン先生はそのままエイダを抱きしめた。
エイダとて覚悟をしていないわけではなかった。いつか人を傷つける時が来るだろうと、エイダ自身そう思っていた。しかしそれはあくまで防衛のために傷つけるだろうと思っていた。
自分からしかも、まさか最悪死に至らしめるような魔法を相手にぶつけるなどとは思わなかっのだ。
自分の憎しみで人を傷つけようとしたこと、それ自体がエイダの罪悪感を刺激したのである。
「エイダ君、君はもしかして記憶を保っているのかい?」
アレン先生はエイダから離れる聞く「どうなんじゃエイダ」と、エイダは黙ったまま頷く。
「それは…そうか辛かったろうね…」
マリデはそれ以上あえて話を続けることはしなかった。なぜならこれ以上、エイダに対してかける言葉が見つからなかったからである。ドンキホーテも同じであった。
ただただエイダは静かに涙を流した、傍にはアレン先生が座り背中をさすってやっている。
(なんて言って慰めてやればいいんだろうな…こう言う時に…ダメだな俺は…)
今はどんな言葉も薄っぺらくなってしまう、ドンキホーテは歯がゆい思いを胸の奥に秘め、目の前で傷ついている優しい少女を助けるすべを探していた。
その時だ、この妖精の里の天井に穴が空いたのは。
まるですでにそこにあったかのように、その穴は出現した。
突如として朝日が妖精の里に降り注ぐ。その光の中には四つの人影が浮かんでいた。その中の1人が微笑みを浮かべこう言った。
「見つけたわ、エイダ」
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