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エイダの魂

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「どう言うこと?」

 グレン卿の指示により、エイダを探しにきたアイラは首をかしげる。

「この付近でエイダの魂を感じるのに…」

 肝心のエイダの姿がそこにはなかったのだ。
 探し出して1時間は立つ、それだと言うのに痕跡すら見つけられてない。
 アイラの心の中に少しだけ焦りの感情が混じり出す。

「アイラ、何か見つけたわ」

 すると、共に連れてきたネクロマンサーのアン・テラーンがアイラにそう話しかけた。

「見せてちょうだい」

 アイラは、アンに促されるままその「何か」があるところまで連れられる。

「これは馬車の跡?」

 奇妙なことにそれまで何もなかった道に突然、馬車の車輪の跡ようなものが残っていた、まるで馬車がここに唐突に現れたかのように思える。

「不自然な跡ね…」

「ヘヘッアイラさんもそう思うかい?」

 アイラの言葉にジャンというアンの部下が反応する。

「俺がさっき見つけたのさ、この不思議な跡をな」

「良くやってくれたわ、ジャン」

「そう言われるとありがたいぜ」

「ヘヘッ」とジャンは笑いながら、少々小馬鹿にしたような態度でアイラの言葉を受け取った。アイラは気にせず、この不思議な車輪の跡を見る。

(これは恐らくあのエイダたちが乗ってきた馬車の跡ね…)

 アイラはそう予測を立てる、だが不思議なことに馬車の跡は途中で途切れてしまっていた。再びアイラは頭を悩ませる、忽然と痕跡が途切れてしまっているのだ。

「どう?アイラ、何か手がかりになりそうかしら?」

 アンが聞く

「いいえまったくもって、そもそも、ここの付近でエイダの魂を感じない」

「そう…カミルも今、召喚術で使い魔を召喚して探しているけど特に進展はないそうよ」

「アン、あなたは追跡の魔法を使えたりしないの?」

「無理ね、あんな高度な魔法使える人は限られているわ」

 アンは肩をすくめる。では今、期待できるのはジャンだけだ。

「じゃあジャン、あなた確か魂の匂いとやらを追跡できるのよね?いま追跡はできる?」

「ヘヘッ駄目だな、ここらで匂いが突然途切れやがった。」

 その言葉を聞くとアイラは頭を片手で抑えて考え込む。いた形跡はあるのだ、それなのに忽然とエイダ達は姿を消してしまった。そんなこと可能なのだろうか?疑問がアイラの頭の中に浮かぶ。
 しかし確かにエイダの魂を感じる、どこかにいることは確かなのだ。
 その時だ、「あー疲れたわねぇ」と男の声がする。

「リーダーとりあえず使い魔を使って森中探し回ったわ、エイダはいなかったわよ」

 アンの部下の1人召喚士のカミルだ。

「ありがとうカミル、それでアイラ、どうするの一旦切り上げる?」

「そうね私たちも、特にアンは消耗したでしょう一旦休むべきかもね」

 そうは言ったものの休むという事は、エイダを逃すことになる可能性が十分にあった。
 だがこれ以上探してもエイダは見つからないというような気もアイラはしていた。

(普通に探すのでは駄目、落ち着いて考えてみましょう…間違いなくここにエイダはいる、でも森の中にはいないという事は…)

 アイラは視界の端に盛り上がった土を捉える。あれはモグラの巣だろうか。エイダを探さなければならないというのにこんなくだらない物に意識を割いてしまった事をアイラは一瞬、後悔した。
 だがその後悔の念が次の瞬間、ひらめきへと変わる。

「アン、少し休んだら捜索を再開するわよ、エイダの居場所がわかったかもしれない。」



 ドンキホーテの目の前には様々な果物が並んでいる、どれもみずみずしく、美味しいそうだ。

「これ全部食っていいのか?」

「うん!」

 妖精のメームは元気よく返事をする。しかし妖精が用意したものなど本当に口にしていいのか、これも何かのイタズラなのではないだろうかとドンキホーテは訝しんだ。

「ドンキホーテお前から先に食うのじゃ」

 隣に座っているアレン先生はドンキホーテを急かす。

「え、俺?」

「万が一変なものでもお前なら大丈夫じゃろ?」

「いや駄目だよ!」

 思わず大きな声が出てしまう。そんな様子を見てマリデはため息をつく「やれやれ」と。

「みんなまったく失礼じゃないか」

 そう言うとマリデは目の前にあったブドウのような果実を取り一口、思い切って口に運ぶ。

「スッパッッッ…」

「ボス大丈夫か?!」

 マリデは思いっきり吹き出しそうになる。

「酸っぱい?あはは大当たり!!!」

 妖精のメームは喜んだ。
 これが当たりなのか、ドンキホーテは戦慄する。大当たりという意味は、これがほかの果実よりも良い味という意味なのか。
 それとも他の果実の中で一番悪い味という意味なのか。
 どちらにせよこれから口にするであろうこの果物達への疑いが強まる一方であった。

「そ、そういえばよぅ」

 ドンキホーテは話をし始める。話をしていれば当面の間、果物を口にする事はないためだがただの延命にしか過ぎない

「なんで俺たちを助けてくれたんだ?」

 率直にドンキホーテは聞く、するとメームは「それはね!」と元気よく話し始めた。

「あの女の子のお友達がいるでしょう?本当はあの子とお話ししたかったの」

 話の流れから察するにエイダのことだろう、エイダはいま気を失っているため、この宴が繰り広げられている部屋とは別室で寝かされている。
 ドンキホーテはさらに聞く

「なんでエイダと話したかったんだ?」

 メームはまるで当たり前のことを言うように言う。

「だって珍しいんだもん」

 テーブルの果実の一つを齧りさらにこう続けた。

「魂が二つある人なんて」
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