篠辺のお狐様

梁瀬

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師走 動物アレルギー

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「朝ちゃん、無理だけはしないって約束して。…いつでも協力出来るように、ここに居るから。」
「ありがとう。」
二人は、互いの存在を心強く感じながら、寄り添った。
〖いざという時、手出し出来ないが大丈夫か?〗
心配そうに狼が声を掛けたが、二人共しっかりと頷いた。

 朝霧一人での擬人化になったが、前回ほどの気が溜まっていないので、ゆっくり
落ち着いて行えそうだ。
朝霧は、要石に触れ、気の流れを落ち着け、少しずつ明確なイメージをしていった。
一人で同時に色々をこなす為、時間はかかるが、朝霧を信じて皆が見守っていた。
そのうち徐々に、モヤのような何かが見えて来て、段々と透けるように輪郭が現れ、人の姿になっていった。
夕霧は、ゆっくりでも朝霧がやり遂げようとしている事を、固唾をのんで見続けた。

【容姿は、変わっておらんのぉ。いくらでも好みの姿に変えられる機会じゃったというのに…惜しいのぉ。】
〖これでは、昨年と一緒だから神主共が残念がるぞ。…こう見えて、中身が真摯に
なってるというヤツか?〗
両主祭神の言葉に、穏やかに微笑む朝霧と、一応、鎮守の癖に…露骨に拗ねて俯く
要石だった。
 [久方振りの再会だからといって、ここの者に大歓迎されるとは思っていなかったが、まさか、このような言葉を投げかけられるとは…酷すぎる。]
肩を落とす要石に歩み寄り
「猫の手を借りなくても、式神達が有能なので、もう掃除も準備も終わってしまったんですよ…どうしましょう。」
夕霧はいかにも困り顔をしてみせて、朝霧の方を向いた。
「もぅ、夕ちゃんまで意地悪言わないで。」

「ねぇ朝姉、終わったぁ?ゆるっと出て来たのが、ダーリンの…なんて呼んでるの?可愛らしくカメさん⁈…ちょっと硬派に要さま⁈…教えてぇ。」
早速、木通にいじられ、真っ赤になった朝霧は
「…内緒。」
そういうと要石を連れて、東雲庵へ消えて行った。

「え?待って。今からですか?…私はこの寒空の下で、夜を明かさなきゃいけないの?そんなのって酷い…朝姉にしたら一年越しとはいえ、さっきボヤぁっと出て来た男に、追い出されるなんて…。」
「ぅん。いくつかの表現はダメなヤツ。拝殿なら広くて良いんじゃない?」
「夕さん!篠辺庵に泊めて貰えない?借りてきた猫のように可愛くしてるから。」
夕霧が返事をする前に、
「こちらの庵は大所帯ですから、無理でしょうね!第一、皆さん綺麗好きなので、
野良猫はちょっと…。ゆうさんも左京さんもがあるものですから、東雲庵の右京さんに、ご相談なさってはいかがでしょうか?」
「はぁあ‼アレルギー⁈…ないでしょ!…絶対、左京さんは無いわぁ~。だって獣だらけよ。モフモフし放題でしょ。」
「ごめんね…。数日は右京さんにお願いしてみて。ダメなら拝殿が良いと思うよ。」
夕霧と柚子の背中を見送りながら、
「拝殿に一人とか…広すぎて、逆に寝られないわよぉ…。」

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