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CHAPTER_01 魔法学は苦難の道のり ~don't through the thorny road~
(10)かつて見た光 ~firework~
しおりを挟む「ムーヴ、ご飯できてるわよ」
「まって、もう少し――」
昔から絵を描くのが好きだった。
上手、キレイ、才能がある――
絵を見たみんなが褒めてくれた。
褒めてくれるのが嬉しくて、何枚も絵を描いた。
でも、これから描こうとしている絵は特別だ。
褒められたいからじゃない。
自分が描きたかった。
「――だめだ」
なかなか上手く描けず、何度も紙を取り替える。
「ムーヴ――絵もいいけど、ご飯を食べないと」
「はーい」
母のご飯はいつも美味しかった。
絵も自由に描かせてくれる。旅行にだってよく連れて行ってくれる。
クラスの他の子はウルサいだのウザいだの親への文句をよく言うが、ムーヴにはまったく不満が無かった。
「そういえばムーヴ、本当にセントラルを受験するの?」
「うん」
母のご飯を頬張りながら軽く答える。
「近くの美術学校からも推薦が来ていたわよ。キレイな学校だったけど」
「だめだよ」
ムーヴは頑なだった。
「成績は十分足りてるし、大丈夫だよ」
「そうだけど、心配だわ。魔法なんてなにも分からないから……」
「これは、ボクにとって挑戦でもあるんだ」
「そう」
母はそれ以上何も言わなかった。
子の考えを尊重し、見守る道を選んだ。
「ごちそうさま!」
「ちゃんとゆっくり食べなさいよね」
「はいはーい」
ご飯を早々に済まし、自分の部屋に走って戻る。
早く描きたかった――
ついこの前、母と出かけた旅行先――
辺りに街灯も無い平地に連れていかれた。
何でもとある見世物がこれから始まるらしい。数組の家族やカップルが集まって、何かを待ち構えている。
よく見渡すと、少し離れた場所にも人が立っていた。
大きな球を抱えて目をつむり、何かを唱えている。
そして、淡く光る円陣が浮かんだと思えば、その上にかかげた球まで上空に浮かぶ。球はどんどん高度を上げ、目では見えないほど遠くまで昇る。
やがて球が大きく花開く――
真っ赤な火を散らし、大きな円を描く。
それはまるで、夜空に浮かぶ大きな太陽――
地面を照らし、ムーヴの目を輝かせる。
言葉では言い表せない感動を覚え、その光景を目に焼き付ける。
初めて見た魔法だった。
「うーん……むずかしい」
頭には光景が浮かんでいるのに、どうしても紙の上に描き切れない。
何かが足りなかった。
「やっぱり近くで見ないとなあ」
忘れられない光景、真っ暗な夜でもサンサンと光り輝く希望――
「ボクにも、できるかな……」
あの光景をもっと大勢の人に見てほしい。
あの感動を、希望を――
もっと大勢の人に届けたかった。
そう、だから――
○○○○○○
「――ボクは、分かって欲しかっただけなんだ」
仰向けで泣きながら、目元を腕で覆う。
そんなムーヴの前にシュウが立つ。
「だからって、できるやつを恨んじゃ、できない自分を恨んじゃダメだろ」
「できるやつに、言われたくない」
「はあ……」
タメ息がでる。
シュウは、その場でしゃがんでムーヴを見つめる。
「魔法は便利だけどさ、こんなことに使っちゃダメだって」
「こんなこと?」
「お前が苦しんでるなら、同じ苦しみが二度と生まれないように使うべきだ」
「その魔法が、ダメなんだ」
「じゃあ探すしかないだろ、魔法以外の道を……」
「そんなの――」
「きれいだったなあ、あの太陽の絵――」
「え?」
ムーヴは、目を隠していた腕を離す。
シュウは、思い出すように窓の外を見た。
「なんか力がみなぎってくるっていうか、なんていうかさあ。とにかく……」
そして、ムーヴに向き直り、そっと手を差し出した。
「おれには届いてたぞ、お前の希望――」
魔法は、1つの手段であるべきだ。
魔法がダメでも、きっと別の道がある。
ムーヴの目に涙が浮かぶ。
「――ごめん、なさいっ……」
ムーヴはシュウの手に、ゆっくりと手を伸ばす。
「――う゛っ!」
「っおい?!」
ムーヴの手は届かずに、突如として口から血を吐き出した。
「どうしたんだよ?!」
シュウは慌てて抱きかかえるが、血が止まらない。
エリスもリンも急いで駆け寄る。
「ねえ、それ!」
リンが指差した先――
血の中に、明らかな異物が混入していた。
血の色に似ているがより赤黒く、もっと透明でキラキラと光を反射する。
赤黒く輝く、半透明の石の破片――
「なんだこれ……」
見覚えがあった。
ムーヴが出していた魔法陣――
それに滲んでいた赤色に近かった。
エリスが≪治癒≫を施すが血は止まらず、ムーヴは苦しそうに悶えるだけだった。
「おい! しっかりしろ! おい! おい――」
シュウの呼びかけにも応じず、ムーヴの苦しみは激しさを増していった。
○○○○○○
「ああ、かわいそうに……」
赤髪の少年に、ポニーテールの少女――
2人とも仮面は外している。
「終わっちゃったみたいだよ」
少年はグラウンドの生徒に紛れ、オペラグラスで校舎の最上階を眺めていた。
「今回は大活躍だったね、メイシア」
「いえ。殺す気でいましたが、ダメでした」
魔法軍が校舎内へと突撃する。
「まあ焦ることは無いさ、まずまずの出来だよ」
「ありがとうございます」
メイシアと呼ばれた少女は、少年に向かってペコリと頭を下げる。
少年はオペラグラスをしまい、ヤレヤレといった表情だった。
「さて、次はどうしようかなあ……」
少年と少女はひっそりとその場を去っていく。
軍が突撃してすぐ、学園内には救急車のサイレンが鳴り響く――
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