魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

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CHAPTER_01 魔法学は苦難の道のり ~don't through the thorny road~

(11)苦難の道の先 ~hope~

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 次の日には何事もなかったように学園が元に戻っていた。これぞ魔法の力である。
 いつも通り登校する生徒たち、噂話が多い程度でいつもと何も変わらない。

 シュウを含む現場に居合わせた3人とも大きなケガもなく、先生からの事情聴取だけでコトが済んだ。
 ケガや精神的な理由で学園を休んでいる生徒がいるなか、シュウも平常通り登校し、授業を受けながら違和感を覚える。
 
 昼休みにもなれば、みんな昨日起きたことを本当に忘れているようだった。
 教室の隅に見えるリンでさえ、カバンからオニギリを取り出し、いつも通り黙々と頬張ほおばっている。

「リン、いつもおにぎりだなあ……」

 あるいは、シュウが気にしすぎなだけかもしれない。

「みんな気にしてられねーんだよ」

「リオラ! また急に……」

 リオラは、自分の席だと言わんばかりに堂々とシュウの前の席に座る。

「明日は我が身だ。自分のことで精一杯なんだよ」

「そう、なのか……?」

 納得は行かないが、リオラが言っていることも正しいのかもしれない。
 そもそも現場に居合わせてなければ、何が起きたかもよく分からないはずだ。関心を持てというのも無理な話だろう。

「シュウだって楽しく学園生活を送りたいだろ?」

「そりゃそうだけど……」

 やはり納得は行かない。納得したくなかった。

「ところでさ、頼みがあるんだけど――」

「飲み物なら買いに行かないぞ」

「察しがいいね! そんなこと言わずにさあ――」

「行かぬ!」


 結局、自動販売機に向かっていた。
 変わらない学園の風景――シュウだって、明日には何事もなかったように過ごしているのかもしれない。

「なんだかなあ……」

 自動販売機のボタンを押しながら、考えを巡らす。
 
 エリスの話では、ムーヴは魔法軍の持つ病院で治療を受け、一命は取り留めたらしい。体調が良くなれば裁判が始まる。きっとこれからも苦労は耐えないはずだ。

「てててっ――」

 しゃがむとお腹の傷口がまだ痛む。

 今回買うのはリオラの分だけだった。リオラを除けばみんな、遠慮を覚えているらしい。
 取り出し口からジュースを取り上げる間、エリスが後ろを通り過ぎる。

「あ、エリス!」

「……シュウ?」

「え、いま、なまえで――」

 勝手に喜ぶシュウがエリスには気持ちが悪い。

「行くわね」

「あ、まってまって!」

 慌ててエリスを追いかけて横に並ぶ。

「飲み物いらないの?」

「……わたし、リンゴが好きなの」

「え?」

「でも、あそこにはないから」

 少しだけ、エリスは恥ずかしそうにしていた。

「それよりシュウ、あなたけっこう動けるのね」

「動ける? なんのこと?」

「武術はなにかやってたの?」

「ああ――」

 恐らく昨日の事件での動きを褒めてくれていた。

「姉さんにきたえさせられたんだ。自分の身は自分で守れって……今では感謝してるよ」

「そう」

 楽しい会話も終わり、エリスとは階段で別れた。職員室に用事があるらしい。
 意気揚々ようようと階段を上がると、続いて一般クラスの男子生徒とすれ違う。

「おまえあの場にいたんだろ? 大丈夫だったのかよ」

「……まあな」

 これからランチに行くらしい――
 話しかけるか迷う。

 また無視されたら、せっかくのいい気分が台無しだ。


 それでも――


「おい!」

「はいっ!」

 いつの間にか、すれ違ったはずの男子生徒が近くに来ている。
 突然の出来事に体が身構える。

「……俺たちメシいくけど、お前もいく?」

「えっ?!」

 シュウにまぶしい光が差し込んだ。
 しばらく反応できなかった。

「もしかして、もう食った?」

「い、いや! 行く! 行くよ!」

 憧れていた学園生活――
 手に持ったリオラの飲み物のことなんてとっくに忘れていた。
 シュウは、意気揚々と階段を下りる。

 階段を下りた先、廊下の壁には一枚の絵が飾られている。


 大きな太陽と照らされる広原――


 その絵には、確かに希望が満ちていた。
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