魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

文字の大きさ
20 / 78
CHAPTER_02 バカなチカラは使いよう ~what’s the strength on my mind~

(01)大きな拳 ~fist~

しおりを挟む

 ――シュッ!

 硬い拳がくうく。

 だだびろい道場の真ん中で、白い道着をまとった青年タケル――
 タケルは拳を前に突き出し、正拳きをひたすらに繰り返す。拳からは血がにじんでいる。その血はタケルが立つ床にも染みついていた。
 壁の一部はけずり取られ、高い天井の照明も割れている。激闘の跡が道場のそこかしらに散らばっていた。


 タケルは、今いる魔法大国からは海をへだてたアルシア大陸で生まれ、幼いころからカラテと呼ばれる武術の鍛錬たんれんに励み、魔法とは無縁の生活を過ごしていた。
 タケルが初めて魔法と出会ったのは10歳になる頃だった。

 親の影響でたまたまカラテを始め、たまたま相性が良く、タケルは当時通っていたカラテ道場で1番の実力をほこっていた。しかし、魔法武術の誕生でカラテの文化は衰退すいたい一途いっとをたどり、魔法を使わない純粋な武術を教えるその道場でも門下生は減る一方だった。
 そんなとき、師範しはんの孫でもある女の子とサンドバッグを相手に練習していたとき、彼女は拳を突くと同時に赤色に輝く魔法陣を繰り出した。

「――りゃあああっ!」

 サンドバッグが轟音ごうおんを立てて吹き飛ぶ。自分よりも1つか2つ年下の女の子が到底出せるはずもない威力だった。
 女の子自身もその威力に驚いていた。

「――これえっ! あれほど魔法は使うなと言ったろ!」

「でもおじーちゃん、このままだと道場無くなっちゃうよ!」

 怒る師範に女の子は涙目で訴える。当時のタケルにとって、道場が無くなるかどうかはどうでも良かった。

 その女の子が放った拳――その威力にただかれ、嫉妬した。

 黒髪の小さな女の子――異国の魔法使いを母親に持ち、後から聞いた話では地毛は金髪らしい。
 以来、女の子が練習する日を狙って道場に足しげく通った。自然と会話する機会も増え、魔法を見せてもらうことも増えた。
 タケルは女の子に負けまいと練習により力を入れ、女の子もまたその姿に見習い力をつけていく。2人の切磋琢磨せっさたくまの関係性がいつまでも続いた。


「――はっ!!」

 5年が経ち、2人は肉体的にも大きく成長する。
 サンドバッグも大きくなり、拳の威力も格段に大きくなった。
 今も大きな音を響かせるが、5年前に女の子が放った魔法には至らない。

 女の子はタケルの拳をうらやましそうに見つめる。

「いいなあ……どうしてタケルはそんなに強いんだ?」

「強くないさ……おまえには魔法があるだろ?」

「そうだけど……」

 足りない――

「俺はもっと、強くなりたいんだ」

 全然足りない、もっと欲しい。
 もっと、大きな力が――




「――また今回も、ずいぶんと派手にやったね」

 ハッとして、タケルは声がした方を振り向く。
 道場の入り口、赤髪の少年がたたずんでいる。
 白銀色の仮面、片方の目元からは血の涙模様――

「気に入ってくれたかい? その力――」

 タケルは何も答えない。

「力とは、いったいなんだろうね」

 拳を開き、見つめ直す。
 その拳には、赤黒く輝く、半透明のが握られていた。

「これからも有意義ゆういぎに使ってね」

 少年は多くを語らずその場を去っていく。

 タケルは、再びその石を握りしめる。
 そして拳を前に突き出した――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...