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CHAPTER_02 バカなチカラは使いよう ~what’s the strength on my mind~
(03)貴重な昼休み ~lunchtime~
しおりを挟む魔法大国の首都、ペンテグルス――
魔法の中心であり、つまりは世界の中心であることも意味する。そしてこの街には、数ある大企業と最先端の技術が集まっている。
赤髪の少年とポニーテールの少女は、ペンテグルスでも、国立魔法学中央学園からは離れたオフィス街に降り立っていた。
様々な人が行き交う中、2人はセントラルの制服姿のまま街を闊歩する。
背の高いビルに囲まれた通りには、監視や非常時救難も兼ねた広告ロボットが立ち並ぶ。
『この街の水は美味しい――
魔法浄水器のマリエルはいかがですか』
『家を、車を、仕事を支える。
魔法で十分なエネルギーを世界中に――
AEカンパニー』
ロボットが投影するモニタには、数々の広告が映し出される。少年は歩きながら、冷めた目でそれらを見つめていた。
「変わらないね、この街も……」
「そうでしょうか? 私が生まれたときよりも、ロボットが増えた気がします」
「そうだね……」
ふと見上げれば、ビルの壁にも魔法関連の広告が大きく投影されている。
少年の口からは、呆れてタメ息が漏れる。
「……より、ヒドくなってるのかもしれないね」
2人はしばらく歩き、広告ロボットが途切れたビルとビルの間、狭くて薄暗い通路の前に立つ。無機質な扉が行く手を阻むが、少年が手をかざすと扉の鍵は簡単に開かれた。
扉の先にあるジメジメとした通路には人っ子ひとりおらず、昼間でも寂しさが充満している。2人はどんどん奥に進み、ビルの中に繋がる銀色で重厚な扉の前に立った。
「お願いしていいかい?」
「はい――」
今度は少女が前に出る。
左手の前に青色の魔法陣――≪変形魔術≫の魔法陣を出現させ、もう一方の手で制服の内ポケットから小さな鍵を取り出し、そのまま魔法陣に通す。
鍵は形を変えて違う形の鍵になり、それを取っ手の穴に差し込んだ。「ガチャ」と大きな音が扉から響く。
「どうぞ」
「いつもありがとう」
少女が重い扉を開ける。中に入ると先ほどまでいた通路とは打って変わり、明るく近代的な造りの広間が現れる。
ただ、人は相変わらずいないので寂しさが漂っているのは変わらない。
2人は広間には寄らず、入り口の近くにある大きなエレベータのボタンを押す。
「……今回の件、魔法軍も動き出したようです」
「そうなの? 思ったより早いね」
大きなエレベータが到着し、ゆっくりと扉が開く。
2人は話しながら乗り込んだ。
「この間の爆破事件であれの存在が知れ渡りましたから……今回も関与を疑われているのかも」
「ざんねん。思ったよりも大ごとにはならなそうだね」
少年の顔は残念そうには見えなかった。少女は不安気な顔をする。
2人が乗ったエレベータは、グングン上に昇る。
「……今回は、失敗ですか?」
「大丈夫さ。彼を選んだのにはちゃんと理由がある」
長いこと昇り続けたエレベータがついに到着する。再びゆっくりと扉が開いた。
「きっとまた、ステキな魔法を見せてくれるよ」
少年は不安な表情を見せることなく、自信満々のままエレベータから降りた。
○○○○○○
「このように魔法学が経済に及ぼす影響は計り知れません。次回は急速な発達を見せる、魔法による電力供給を例に、その影響と原理を見ていきましょう」
「……終わった」
魔法学史の授業が終わり、ようやく昼休みに突入する。ほぼ毎日のことながら、午前も午後も最後の座学は特別辛い。タダでさえチンプンカンプンなうえ、空腹や眠気と戦いながら集中する必要があるからだ。
シュウ以外の生徒も皆、ヘトヘトになりながら休み時間に入る。各々、教室の外で休む者は外へ行き、中で休む者は自身の席から動かない。
リンの席を見ると、今日も変わらずカバンからおにぎりを取り出し、黙々と食べ進めてる。
普段は活発な少女が、このときだけ関心が無さそうに食べている。入学当初から気になっていてしょうがなかった。
「……せっかく作ったしな」
断られるのは怖かったが、せっかく作ったのを無駄にするわけには行かない。シュウはおかずだけが入った弁当箱を手に持ち、リンの席へと向かった。
「リン、これ……」
「……ん?」
リンはモグモグしたままシュウに顔を向ける。お弁当を差し出すと、それを不思議そうに見つめる。
「これ、おかずだけなんだけど。よかったら……」
リンのモグモグが止まる。
まじまじとお弁当を見つめて固まる。状況が理解できていなかった。
「……いらない、かな? そんなに食べないよな」
「――んまっ、待って!」
気まずくなってお弁当を引き下げようとすると、リンは慌ててそれを引き止めた。リンは、口の中のおにぎりを急いで飲み込む。
「いる! いるけど、どうしたのこれ?」
お弁当を慌てて受け取り、照れながらもその真意を聞く。
「いつもおにぎりだけだから、心配になってさ」
「わ、わたしが?」
「うん。そうだけど……?」
シュウは当然のごとく答える。シュウの疑いようのない真っ直ぐな目に、リンは「ドキッ」として、顔が熱くなるのを感じる。
「あ、ありがと……」
二人の間に淡く、甘い空気が漂う。真昼の日差しがその空気を温めて、教室の気温が少しだけ上がった。
リンの近くの席で食事をしていた女子たちも、その空気に包まれてうっとり2人の様子を見つめる。
シュウまで照れ臭くなってきた。
お互いが恥ずかしがり、黙り込むだけの時間がしばし流れる。
「――色恋もいいけどよ!」
「――うぐえっ!」
そんな色惚けたシュウは、突如として首に腕を巻かれて姿勢を崩す。気道が狭まり、思うように呼吸ができなくなる。
「約束を破られちゃ、困るんだよねえ」
「やぐ、そぐ……? なんのごとでじだっけ?」
首を巻く腕の力が一層強くなり、気道が完全に塞がれる。
「り゛お゛ら――ぎ、ぶ……」
最後の力で腕を叩き、リオラに限界を知らせる。気道が一気に解放されるも、シュウは放心状態で倒れこむ。
「じゃ、借りてくぜー」
「り、リオラちゃん……お手柔らかにね?」
リオラは、シュウが着ている制服の首後ろを掴み、引き摺りながら教室を後にする。
リンはその様子を苦笑いで見届けた――
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