魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

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CHAPTER_02 バカなチカラは使いよう ~what’s the strength on my mind~

(04)空腹は最高のスパイス ~donburi~

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「――で、なんで2人・・までいるんだよ」

 シュウは怒っていた。約束があまりにも違うからだ。

「たた、たすかり、ます……おべ、おべん、とう、忘れていたので……」

 緑色の髪に大きな丸眼鏡――カホ・クラシアは引っ込み思案な性格もあり、リオラみたいなタイプに振り回されやすい。

「おなかぽんぽんやわ~ ほんま、たすかる~」

「お昼を忘れたカホは……まあ分かるとして、どうしてソアンまでついてくるんだ」

 おっとりなまりの女の子――ソアン・イクォは表情や声色こわいろとは裏腹に、底知れない恐怖を感じるときがある。クラスでも怒らせたら一番怖い、シュウは勝手にそう思ってる。

「うち、いま金欠やねんなぁ……」

「そんなの知らんっ!」

 学園からは最低でもシュウと同じ金額を振り込まれているはずだ。寮での生活が基本である特進生たちは、普通・・に生活する分には十分なお金を得ているはずだった。

「いったい何に使ってるんだよ」

「おんなの子はいろいろお金が掛かりはるんね」

「――うまいっ! もういっぱい頼んでくる!」

 リオラは急に立ち上がり、再びシュウの電子マネーで注文しに行こうとする。
 なるほど、確かに女の子は食費も掛かりそうだ。
 慌てて止めるが、リオラは面倒くさそうに口をゆがませる。

「なんだよ、ハラ減ってるんだ」

「約束がちがうぞ。なんで、2杯も3杯も食べるんだ!」

 既にリオラの前には、空のドンブリが2つ重なっていた。

「昼飯をおごるって約束だろ? 人数も量も約束した覚えはないね」

「むちゃくちゃだあ……」

 シュウの制止を振り切ってリオラは売り場へと向かう。
 お金が心配でならない。後で残高を確認しないと――涙が出そうだった。

「そもそも先に言い出したんはシュウやろ? 諦めるんやなぁ」

「うう、お腹もすいてるのに……」

 ギュルギュルとお腹も悲しそうにき出した。
 食堂に無理やり連れてこられたせいで、自分のお弁当は教室に置きっぱなしだった。もっとも、ソアンの言う通りすべては自分から言い出した勝負に負けたせいで、自己責任と言われればそれまでなのだが――

「まあリオちゃんもリオちゃんなりに、シュウのこと気ぃ遣ってはるんやと思うなあ」

「どこがだよっ」

 シュウの腹の虫は収まらない。

「わっわたしも、そう、思います……」

 カホは、1年ほど前――昔のことを思い出す。

「りりリオラさんも、とちゅうから……このクラスにきた、から……」

「え、そうだったのか?」

 カホはコクリと頷く。初めて聞く話だった。

「はじめは、リオラさんも……ひとり、だったから……ひとりだったわわたしにも、よく、話しかけてくれて――」

「じゃあ俺にも良かれ・・・と思って?」

 思えば特進クラスの教室に入り、最初に話しかけてくれたのはリオラだった。今でも、クラス唯一の男子生徒として浮いているシュウに、気兼ねなく話しかけてくれる。それがリオラの性格だと思っていたけれど、実はリオラなりに気を遣っていたのかもしれない。
 身勝手なところはあれどリオラなりの気遣いであり、優しさの表れなのかもしれない。

「やけど心配、さいきん元気あらへんから」

「あ、それはおれも思った――」

 常日頃ちゃちゃを入れてくるリオラだが、ここ最近その頻度ひんどが減っている。それだけでなく、ついさっき、ご飯を食べていたときも珍しく考え事をしながら黙々もくもくと食べていた。

「リオラさん、ああ、見えて……きっと繊細せんさいで、なんでも、ひとりで抱え込む、から――」

「なんの話だ?」

「ふぁあああっ!」

 リオラが戻ってきた。
 カホは必要以上に驚いて椅子ごと転びそうになり、ソアンはその椅子を支えて優しく返す。

「リオちゃんのはなし」

「ワタシの? 面白くないだろ」

 リオラが新しく持ってきたトレーには初めて見る美味しそうなドンブリが乗っている。
 ご飯は大盛だった。シュウには優しさが何か分からなくなってくる。

「ほんとよく食べるな」

「育ちざかりだからな。ワタシの地元はこれくらいの量が当たり前だ」

「リオラの出身は近くじゃないのか?」

「リオちゃんはアルシア・・・・出身やったよね」

「え?!」

 またもや初めて聞く話で、驚きだった。
 この学園、この魔法大国が位置するユーデリカ大陸とは海を隔てて浮かぶアルシア大陸――今なお魔法が行き届いていない地域も数多く存在し、場所によってははるか昔の文明や文化が色濃く生き残っている。
 シュウもまた、アルシア大陸出身の1人だった。

「おれも前はアルシアにいたんだよ! といっても田舎のちっちゃい島だけど、海がキレイだったなあ……」

 アルシア大陸出身でこの大都市ペンテグルス定住ていじゅうしている人は珍しい。アルバイト時代も奇異きいな目で見られ、同郷に出会うことはまず無かった。だからこそ、同じアルシア出身の人を見かけては、つい声を掛けたくなってしまうし、テンションだっておのずと上がってしまう。
 勝手に興奮し、勝手に思い出にふけるシュウに、リオラは珍しく戸惑い気味だった。

「アルシアって、最近起きとる道場破りも、向こうの伝統武術が関係しとるって聞いたよ」

「へ~ リオラはなんか知らないのか? 向こうで武術はやってたんじゃ――」

「ああ……」

 まただ――
 話も聞かず、似合わない暗い顔で考え事をしている。

「リオラ……?」

「――んあ? あーやってたけど、よくわかんないな」

 笑ってごまかすリオラだが、その場にいる他の3人は心配になる。
 沈黙の時間が流れるが、すぐにいつものリオラに戻り、食事を終える。

「ぷはあ、たべたなあ。もう少し行けたなあ」

「末恐ろしいな……」

 リオラの土手腹どてっぱらを見て、苦笑いを隠せない。今後は、二度と勝負は挑まないと自身に誓った。


 <――そういやまた道場に果たし状が来たらしいぞ>

 <――そうなの? そろそろ問題になるんじゃないかしら>


 教室への帰り道、通りすがりの生徒の会話が耳に入り、リオラは足を止める。
 校内は道場破りの話で盛り上がっている。危機感というよりも、道場破りというキーワードにみな、興味をひかれている感じだ。

「あいつは……」

「どうしたんだリオラ? 知り合い?」

「……いや、なんでもないや」

 通りすがりの男子生徒気になった様子だが、すぐにまた、いつものリオラに戻る。


 ――なんでも1人で抱え込むから


 シュウは、先ほどのカホの言葉が気になった。

 そんなシュウを置いて、リオラはひとりでに歩き出す。
 リオラが何を考えているのか――
 シュウは、なかなか聞き出せないでいた――
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