23 / 78
CHAPTER_02 バカなチカラは使いよう ~what’s the strength on my mind~
(04)空腹は最高のスパイス ~donburi~
しおりを挟む「――で、なんで2人までいるんだよ」
シュウは怒っていた。約束があまりにも違うからだ。
「たた、たすかり、ます……おべ、おべん、とう、忘れていたので……」
緑色の髪に大きな丸眼鏡――カホ・クラシアは引っ込み思案な性格もあり、リオラみたいなタイプに振り回されやすい。
「おなかぽんぽんやわ~ ほんま、たすかる~」
「お昼を忘れたカホは……まあ分かるとして、どうしてソアンまでついてくるんだ」
おっとり訛りの女の子――ソアン・イクォは表情や声色とは裏腹に、底知れない恐怖を感じるときがある。クラスでも怒らせたら一番怖い、シュウは勝手にそう思ってる。
「うち、いま金欠やねんなぁ……」
「そんなの知らんっ!」
学園からは最低でもシュウと同じ金額を振り込まれているはずだ。寮での生活が基本である特進生たちは、普通に生活する分には十分なお金を得ているはずだった。
「いったい何に使ってるんだよ」
「おんなの子はいろいろお金が掛かりはるんね」
「――うまいっ! もういっぱい頼んでくる!」
リオラは急に立ち上がり、再びシュウの電子マネーで注文しに行こうとする。
なるほど、確かに女の子は食費も掛かりそうだ。
慌てて止めるが、リオラは面倒くさそうに口を歪ませる。
「なんだよ、ハラ減ってるんだ」
「約束がちがうぞ。なんで、2杯も3杯も食べるんだ!」
既にリオラの前には、空のドンブリが2つ重なっていた。
「昼飯をおごるって約束だろ? 人数も量も約束した覚えはないね」
「むちゃくちゃだあ……」
シュウの制止を振り切ってリオラは売り場へと向かう。
お金が心配でならない。後で残高を確認しないと――涙が出そうだった。
「そもそも先に言い出したんはシュウやろ? 諦めるんやなぁ」
「うう、お腹もすいてるのに……」
ギュルギュルとお腹も悲しそうに鳴き出した。
食堂に無理やり連れてこられたせいで、自分のお弁当は教室に置きっぱなしだった。もっとも、ソアンの言う通りすべては自分から言い出した勝負に負けたせいで、自己責任と言われればそれまでなのだが――
「まあリオちゃんもリオちゃんなりに、シュウのこと気ぃ遣ってはるんやと思うなあ」
「どこがだよっ」
シュウの腹の虫は収まらない。
「わっわたしも、そう、思います……」
カホは、1年ほど前――昔のことを思い出す。
「りりリオラさんも、とちゅうから……このクラスにきた、から……」
「え、そうだったのか?」
カホはコクリと頷く。初めて聞く話だった。
「はじめは、リオラさんも……ひとり、だったから……ひとりだったわわたしにも、よく、話しかけてくれて――」
「じゃあ俺にも良かれと思って?」
思えば特進クラスの教室に入り、最初に話しかけてくれたのはリオラだった。今でも、クラス唯一の男子生徒として浮いているシュウに、気兼ねなく話しかけてくれる。それがリオラの性格だと思っていたけれど、実はリオラなりに気を遣っていたのかもしれない。
身勝手なところはあれどリオラなりの気遣いであり、優しさの表れなのかもしれない。
「やけど心配、さいきん元気あらへんから」
「あ、それはおれも思った――」
常日頃ちゃちゃを入れてくるリオラだが、ここ最近その頻度が減っている。それだけでなく、ついさっき、ご飯を食べていたときも珍しく考え事をしながら黙々と食べていた。
「リオラさん、ああ、見えて……きっと繊細で、なんでも、ひとりで抱え込む、から――」
「なんの話だ?」
「ふぁあああっ!」
リオラが戻ってきた。
カホは必要以上に驚いて椅子ごと転びそうになり、ソアンはその椅子を支えて優しく返す。
「リオちゃんのはなし」
「ワタシの? 面白くないだろ」
リオラが新しく持ってきたトレーには初めて見る美味しそうなドンブリが乗っている。
ご飯は大盛だった。シュウには優しさが何か分からなくなってくる。
「ほんとよく食べるな」
「育ち盛りだからな。ワタシの地元はこれくらいの量が当たり前だ」
「リオラの出身は近くじゃないのか?」
「リオちゃんはアルシア出身やったよね」
「え?!」
またもや初めて聞く話で、驚きだった。
この学園、この魔法大国が位置するユーデリカ大陸とは海を隔てて浮かぶアルシア大陸――今なお魔法が行き届いていない地域も数多く存在し、場所によっては遥か昔の文明や文化が色濃く生き残っている。
シュウもまた、アルシア大陸出身の1人だった。
「おれも前はアルシアにいたんだよ! といっても田舎のちっちゃい島だけど、海がキレイだったなあ……」
アルシア大陸出身でこの大都市に定住している人は珍しい。アルバイト時代も奇異な目で見られ、同郷に出会うことはまず無かった。だからこそ、同じアルシア出身の人を見かけては、つい声を掛けたくなってしまうし、テンションだって自ずと上がってしまう。
勝手に興奮し、勝手に思い出にふけるシュウに、リオラは珍しく戸惑い気味だった。
「アルシアって、最近起きとる道場破りも、向こうの伝統武術が関係しとるって聞いたよ」
「へ~ リオラはなんか知らないのか? 向こうで武術はやってたんじゃ――」
「ああ……」
まただ――
話も聞かず、似合わない暗い顔で考え事をしている。
「リオラ……?」
「――んあ? あーやってたけど、よくわかんないな」
笑ってごまかすリオラだが、その場にいる他の3人は心配になる。
沈黙の時間が流れるが、すぐにいつものリオラに戻り、食事を終える。
「ぷはあ、たべたなあ。もう少し行けたなあ」
「末恐ろしいな……」
リオラの土手腹を見て、苦笑いを隠せない。今後は、二度と勝負は挑まないと自身に誓った。
<――そういやまた道場に果たし状が来たらしいぞ>
<――そうなの? そろそろ問題になるんじゃないかしら>
教室への帰り道、通りすがりの生徒の会話が耳に入り、リオラは足を止める。
校内は道場破りの話で盛り上がっている。危機感というよりも、道場破りというキーワードにみな、興味をひかれている感じだ。
「あいつは……」
「どうしたんだリオラ? 知り合い?」
「……いや、なんでもないや」
通りすがりの男子生徒気になった様子だが、すぐにまた、いつものリオラに戻る。
――なんでも1人で抱え込むから
シュウは、先ほどのカホの言葉が気になった。
そんなシュウを置いて、リオラは独りでに歩き出す。
リオラが何を考えているのか――
シュウは、なかなか聞き出せないでいた――
0
あなたにおすすめの小説
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる