魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

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CHAPTER_03 心の乱れは災いのもと ~whoever lives hold wave of heart~

(20)相応しき生徒会長 ~leader~

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「よかったぁ、みんな生きてるよぉ」

「よよ、よか、よかったですぅ……」

 女子寮の外では、リンとカホが泣きながら待っていた。生徒たちが出てくるのを確認し、魔法軍の数人が寮の中へと入っていく。

「シャエラちゃんもよがっだぁ~」

 リンは、シャエル・・に抱き着いて隣にいるシャエラに顔を向ける。

「ぐすんっ、あなたがシャエラちゃんの妹ちゃんですか?」

「リンさん、わたくしがシャエラでございましてよ?」

「ふへ?」

「リンが抱き着いてるのがシャエルだ」

「よ、よろしくおねがいします」

 リンは心配が過ぎ、情緒が不安定になっているらしい。シャエルは苦笑いでリンを受け入れた。

 シュウが持っていたブラッディ・ダイヤは、魔法軍からすぐに没収されてしまった。持っていてもしょうがない代物であり、犯人の手掛かりになることを切に願う。
 何にせよ、一段落には違いなかった。




「――よ、大変だったな」

「ロイ……」

 学園セントラルも翌日には落ち着きを取り戻す。だが、課題はたくさん残されてしまった。

「生徒に成りすましてたんだって?」

「ああ、他にも侵入され放題だった」

 アドリーという身分を詐称した人物を1年以上学園に入学させていたこと――
 フィン、メイシア、そしてナージャという身分の知れない人物の侵入を許していたこと――

 これからマリー校長含む関係者は、監視体制の見直し、犯人の究明に追われることになる。

「そういえばシュウ、おまえ女だったのか?」

「え゛……」

 学園で初めてできた親友のロイが真剣な顔で問う。リオラのせいで学園にはあらぬ噂が広まっていた。

「早く言ってくれよ、俺は全然気にしないぜ」

「もう好きにしてくれ……」

 悪いことばかりではない。心無しか、周囲のシュウを見る目も変わった気がする。どこか優しくなったような――
 どうせ、すぐに忘れられるだろう。

「そうだ、今日も生徒総会あるんだってな。会長さんは元気なのか?」

「ああ、シャエラなら……」




 シャエラは、高飛車で気の強い――以前の元気なシャエラに戻っていた。特進クラスの教室では、いつもの見慣れた光景が繰り広げられる。

「リオラさん? 以前わたくしの机に土足を乗せておりましたわね?」

「あ? 覚えてないな」

「言ったはずですわ、覚悟しておきなさいと――」

「望むところだな」

 バチバチに睨み合うシャエラとリオラ――
 2人とも楽しそうだった。


「――シュウ、話があるの」

 教室では、エリスが思い詰めた様子で声を掛けてくる。

「フィンとかいう少年ヤツのことか?」

 エリスは静かに頷いた。
 最後にフィンが使った漆黒の魔法――
 目撃できたのは、シュウとエリスだけだった。

「魔法陣の模様、あなたが使う白い魔法と同じだったわ」

「そうみたいだな」

「心当たりは……無いわよね」

「残念ながら……」

 フィンの正体については、エリスもシュウ以上に気になっている様子だ。

 ――また逢う日まで……

 それに、フィンの言葉が頭から離れない。
 フィンが良からぬことを企てているのは間違いなかった。そして、何らかの形でシュウも巻き込まれるのだろう――




 ○○○○○○




 その後も、大きな騒ぎも無く放課後を迎える。そして、学園のホールには生徒会指示の下、再び生徒たちが集められていた。
 正面の壇上には、シャエラ・エイブリンが堂々と立つ。

「皆さま、お忙しい中お集まりいただいたこと感謝します。そして――」

 シャエラは堂々と前を向き、生徒たちに語り出す。
 生徒たちは皆、真剣にシャエラの話を聞いていた。

「そして、今回わたくしが仕出かした数々の悪行を謝罪します。申し訳ございません……」

 シャエラは生徒たちに向かい、深く頭を下げた。ホール中が静まり返り、その間に1人の生徒会役員が「紙の束」を演台まで運ぶ。
 紙の束――大量の誓約書を前に、シャエラはゆっくりと顔を上げた。そして、紙の束をなるべく高い位置にまで持ち上げ、壇上のそでにいるリオラに小声で指示をする。

「リオラさん、お願いします」

「りょーかい」

 リオラは誓約書に向かって≪衝撃魔術ウェイトブレイカ≫を放つ。繊細かつ強大な≪衝撃≫によって誓約書は散り散りになり、花吹雪のようにシャエラの頭上を舞う。
 ホール中の生徒がざわつき出した。シャエラは、改めてまっすぐ前を見据える。

誓約書こんなものに意味はありませんでした。そのことに気づくまで、わたくしは多くの方にご迷惑を掛け、多くの方に支えられました」

 もちろん、シャエラとしては、すべて学園の生徒を思っての行動だった。それが今回の一件を経て、軽率で空回りしていたことに改めて気づかされた。
 いや、今まで気づいていないフリをしていただけだった。

「わたくしが今、こうしてここに立てているのも、ひとえに皆さまのお陰です」

 それでも周りには頼らず、1人で出来ると思って行動してきた。
 でも、それが間違っていた。生徒会長として大きく間違っていた。

 生徒を信じ、生徒を導き、生徒とともに歩んでこそ、真の生徒会長だと――
 シャエラは、今回の件を通して学ぶことができた。

「わたくしの過ちが許されるとは思っておりません。しかし、生徒1人1人の居場所を作るためにも、わたくしは生徒会が必要だと思っております。
 どうか皆さま、次の生徒会長を信じ、もう一度生徒会のことをよろしくお願い致します――」

 シャエラはもう一度、深く頭を下げる。シャエラの誠意が、もう一度ホールを静かにさせる。
 そして、突如としてシャエラの背後にあるスクリーンに映像が映し出された。


『――生徒の力は凄まじい。その力は、あなたには負けないっ……』


 シャエラは、ホールに響く音声に驚いて後ろを振り向いた。映像には、妹のシャエルと肩を寄せ、真っ直ぐな目で語るシャエラの姿が映し出される。


『――我々生徒会は、それを最大限に引き出していく』


 女子寮の中で生徒の1人が咄嗟に撮影した映像だった。自身の声が大音量でホールに響き渡り、シャエラは顔が熱くなって恥ずかしくなる。


『――わたくしは生徒会長、シャエラ・エイブリン!』

『――皆さま方の力を、思いを……決して無駄にはしませんっ!』


 映像が終わり、1人の女子生徒が立ち上がる。

「――よっ、生徒会長!」

 大きな声で叫び、大きな拍手を始める。そんな女子生徒につられ、他の生徒も次々に立ち上がった。

「シャエラしかいないよっ!」

「ここで辞めるなんて許されないっしょ!」

 立ち上がる生徒は徐々に増えていき、拍手もどんどん大きくなる。シュウたちも一緒になって立ち上がった。

「みなさま……っ」

「これkらもたのむぞー」

「よ、よろしいんです……の?」

 シャエラの目に涙が浮かぶ。
 生徒たちの拍手は、シャエラの問いを肯定するように一層大きくなった。

 シャエラはこれ以上の涙は堪え、最後にもう一度――
 学園の生徒に向かって深く、深く頭を下げた。
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