53 / 78
CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~
(02)覆面チーム ~mask~
しおりを挟む「――マジック・ボール?」
学園の食堂にて――
シュウとリン、そして一般生であるロイとルヴィがそれぞれ並び、2組が向かい合って座る。関わりの深さに違いはあれど、それぞれが友人関係にあり、自然と4人で集まることは珍しく無かった。
シュウの疑問には、お姉さん肌のルヴィが答えていく。
「割と昔から続く競技で、この学園にも施設があるんだけど……ホントに知らないの?」
「うっ、すまん……」
「あ、謝ることじゃないよ。シュウくん、ね?」
何でも魔法を使い、5人1組で戦うスポーツらしく、魔法学が進んでいる諸国では競技人口も多いそうだ。
リンは気を遣って慰めてくれるも、その笑顔が反って辛い。一方でロイは追い打ちを掛けるように鼻で笑う。
「ほんと世間知らずだな」
「うるせえ、ロイは知ってるのかよ」
「当然だろ。TVでもやってんだから」
「うぐっ……」
我が家にある唯一の娯楽は、いつも姉か父がチャンネル権を握っている。アルバイトで忙しい身に見たい番組も無かったが、ネットニュースにも興味がわかないシュウは、いつも話題や流行から後れを取っていた。
「まあ知らないのは良いとして、今度そのマジック・ボールの大会があるの」
「大会、近くで?」
「ペンテグルスにある公営の競技場よ。毎年やってる大会なんだけど……」
学園を有する魔法大国の首都ペンテグルス――
この場所で毎年開催される親善大会らしいが、プロがこぞって参加する世界大会とは違うらしい。あくまで『マジック・ボール』の魅力を発信したり、マジック・ボールを通した地域の活性化や隣国との友好化を目的とするアマチュア大会だった。
試合は、事前に行われる予選を経て16チームのトーナメント形式で行われる。
学園の学生は地元代表として例年参加しており、予選通過のシード枠を貰っていた。大会には、基本的に部活動で経験が多い一般生が出場する。一般クラスに混じってリンも出場したことがあるそうで、学園として優勝は何度も経験していた。
「なんだよ、今年もリンに出て欲しいのか?」
「ううん。そうなんだけど、そうじゃないっていうか……」
ルヴィは歯切れが悪そうで、話すべきか迷っている様子だった。
悩んでいるというよりは、考えているようにも見え、リンも親友として心配そうにその様子を見つめる。
「どうしたの? 気になることでもあるの?」
「うん……まずはね、これを見て欲しいの」
ルヴィが机の真ん中に自身のデバイスを置く。他の3人は一斉に立ち上がり、覗き込むようにして机の上に目を向ける。
画面には、大きな見出しと一緒に仮面を付けた5人組の女性が写される。
赤黒いウェアに身を包み、5人の顔は『血の涙の仮面』で覆われていた。
「ルヴィ! これは?!」
シュウは思わず声を張る。食堂中にシュウの声が響くが気にしていられない。リンも画面を見つめながら手を震わせていた。
「女子寮に現れたっていう仮面をつけた男女の話を聞いてピンと来たの。リンからも話を聞いてもしかしてと思ったんだけど……気にしすぎかもしれないんだけど、話したほうが良いかなーって」
「話してくれっ! 何でもいい!」
「ルヴィ、わたしからもお願い」
リンも一緒になってルヴィを真っ直ぐ見据える。あまりの真剣さに戸惑いながらも、ルヴィはゆっくりと頷いた。
「マジック・ボールって競技人口は多くても、プロの世界はそこまで広くないの。活躍できるのが強い魔法使いに限られるからね」
「実際、俺もルヴィもプロの世界じゃまるで通用しない。プロたちとは、そもそもの魔術適性が違い過ぎる」
ロイも一緒になって補足する。
プロとして戦えるには、まず一定以上の魔力と適性が求められる――想像以上にシビアなスポーツだった。
「だから世界で活躍する上位チームには変動が少ないの。世界ランキングのトップ10は例年ほぼ変わらない」
「強い選手が出てきても強いチームがすぐに取っていくしな」
「じゃあ新しいチームができるのも少ないのか」
「そう。でもね、ちょうど1年前――とある覆面チームがプロとして突然現れたの」
ルヴィは画面の中を指差した。
画面に映る5人の女性からは、怪しい雰囲気が漂って見える。
「昨年末に開催された世界選手権――仮面を付けた彼女たちは初出場で世界ランキング1位のチームを下し、見事初優勝に輝いたの」
「ゆ優勝って……待ってくれ、覆面チームって顔は見せてないのか? そんなことがプロの世界で許されるのか?」
「ルール上は禁止されていないわ。でも、シュウにも想像つくだろうけど、マジック・ボールのファンからは批判が絶えなかった」
「じゃあ、正体は公開されて――」
「いいえ、彼女たちは未だ仮面を被ったまま……唯一のスポンサーであるAE社も本件に関して沈黙を貫いている」
AEカンパニーと言えば、シュウもよく耳にする大企業だ。魔法軍とも密に関わり、本国のインフラストラクチャ――主に電力分野を支えている。魔法を供給源とした電力は、シュウたちが安全に暮らす生活の要でもあった。
「そんな大企業が黙ってられないだろ」
「そう、そもそも彼女たちを雇ったのも多くの社員が知らないところで行われていたみたい。株主からも反感を買い、社内でも不満が爆発したのか……ついこの前、彼女たちは正体を明かすことを表明したわ」
「なるほどな、じゃあ本人たちに話を聞く機会も――」
「それがそうとも行かなそうなのよ」
ルヴィは声色を変える。ここからが本題のようだった。
「なんだよ、まさか引退でもするのか?」
「そうよ、次の大会を最後にね」
シュウとリンは息を飲んだ。
何となく話の筋が見えてきていた。リンは自分の考えが正しいかを確かめようと、恐る恐る質問を投げかける。
「ルヴィ、もしかしてその大会って……」
「ええ、彼女たちは何故かこの親善大会を最後の試合として定め参加を表明した。そして、この大会の『決勝戦』の場で仮面を取ると――」
「そんな! 新人チームとは言えプロだろ? 世間が騒ぐんじゃ」
「もう騒いでるわよ。大会関係者は大賑わい。問い合わせが後を絶たないそうよ」
「俺の友達で親が実行委員をやってるらんだが、そいつ曰くTV中継の依頼も殺到しているらしい。実況席も設けるんだとか」
「当日は厳戒態勢が予想されるわ。彼女たちと直接対決するしか、会話のチャンスは無いでしょうね」
5人の女性が偶然『血の涙の仮面』を付けていたとも考えられる。しかし、他では決して見かけないこの仮面から過去の事件が思い返される。
ブラッディ・ダイヤ、そしてフィンという赤髪の少年、事件の影で暗躍する者たち――
少しでも真相に近づけるなら、シュウたちには逃したくない機会だった。
「じゃあ勝ち進めばいいんだろ? 今までだって優勝してるんだから問題は――」
「大ありなのよ、これを見て……」
ルヴィは、画面に表示される記事の後半を指差す。書いてあったのは、さらに事態をややこしくさせる一文だった。
「触発された他のプロチームが参戦……」
「現時点で2つのプロチームが参加を表明してる。話題性も有るけど、新人チームに負けたプロたちはリベンジに燃えているようね。特に世界ランク1位の『アトラータフェレース』は本腰を入れてるみたい」
「じゃあ、てことは――」
「彼女たちと決勝まで当たらないなら、私たちは世界のプロたち相手に勝たなくちゃならない」
ルヴィの言葉が重くのしかかる。今の話だけでは、覆面チームから話を聞き出すのは困難に思えた。リンまで黙り込み、重い空気の中でルヴィは改めて話を続ける。
「そこで相談、特進クラスで大会に出てみない?」
「「えっ?」」
シュウとリンは同時に間抜けな声を出す。ルヴィにとっては、あくまで軽い提案だった。
「仮にも世界の学園、世界の特進生よ? もしかしたら、もしかしないかなーって」
「……リン、どう思う?」
「うん。やってみる価値はあるかもね」
早くもシュウの決意は固まり、リンも画面に映る女性を見つめながら既に覚悟を決めていた。
「まずはエリス辺りに話してみたいな」
「登録できるメンバーは交代要員を含めた7人まで、サポートもできるバランスのいいチーム構成でお願い」
「大会はいつだ?」
「最初の試合は2週間後、そこから1週またいで準決勝、決勝……せめて1週間は練習に時間を使いたいから逆算すると――」
思っていたより猶予が無い。まずはチーム集めからだが、シュウには早くも暗雲が立ち込めていた。ところが、リンは思いのほか緩い顔を上げる。
「なんだよ、ずいぶん余裕そうじゃんか」
「ふふん、実はね……」
リンは一足先に立ち上がり、自慢げに微笑んで見せる。
「わたし、イイ人を知ってるんだよね」
ルヴィとロイも揃って首をかしげる。
その自慢げな顔が、シュウには何故か頼もしくは見えない――
0
あなたにおすすめの小説
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる