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CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~
(03)まずはメンバー集めから ~gather~
しおりを挟む「――はぁ? 出るわけないでしょ?」
「お願いレイジー! そこをなんとか……」
特進クラスでの休み時間――
リンは両手を合わせて頭を下げるが、そうは問屋が卸さない。
レイジーはシュウたちと同じ特進クラスの生徒であり、学生でありながらマジック・ボールのプロチームに所属していた。チーム名や実力は分からないが、プロが味方になるなら心強いことこの上ない。
「あのね、私にはスポンサーが付いてるのよ? 契約してるの。同級生の頼みだろうと、他のチームで勝手に試合できるわけないでしょ?」
「うぅ……そうだよね」
「アドバイスくらいは考えておくから、他を当たってちょうだい」
結局、というか当然ながら、レイジーが首を縦に振ることは無かった。
「どうするリン? 他に心当たりは無いのか?」
「うーん、とりあえず片っ端から声を掛けてくしかないよね……」
リンはガックシと肩を落とし、トボトボ席に戻っていく。今回の件は、まだエリスにも話していないが、先が重く思いやられる――
○○○○○○
「みなさん、お茶しかありませんが……はい、おねえちゃんも」
「ありがとうエル」
放課後、学園に併設された倉庫の大きなテーブルに特進クラスの女子生徒6名が座る。生徒それぞれの前に、先日から清掃員として働くことになったシャエルがお茶を置いていく。シュウはいつもの作業服に身を包み、倉庫の出口で呆然と立ち尽くしていた。
「へぇ、結構いいところ住んでるじゃねーか」
「二足の草鞋も大変やんなぁ」
「あの、あの……おじゃま、して、ます……」
ソアンとカホは詳しい事情も分からず、リオラに無理やり連れてこられたようだった。
「お茶、美味しいわ」
「さすがわたくしの妹ですわね」
エリスは、シャエルが淹れたお茶を呑気に楽しんでいる。シャエラもお茶を飲みながら満足そうに頷いていた。
肝心のリンはと言うと、苦笑いで現状を眺めるだけだった。
「まてっ! なんで倉庫なんだ!」
シュウは、校内の清掃に向かう直前だった。それを知ってか知らずか、リンは強引に5人を引き連れて倉庫に押しかけてきていた。
「わ、わたしは生徒会室とかも提案したんだよ?」
「シャエルの様子を見たかったですから。それに、ここは落ち着きますわ」
「他にもあるだろ! ほら、女子寮とか――」
「寮に戻ったら、ウチ眠たなるんねぇ」
「知るか!」
主な原因はシャエラとソアンにあるらしい。
もうすぐ倉庫の主であるダイモンが帰ってくる。勝手に作戦会議の場として使ったと知れれば、原因はすべてシュウに集約され、タダでは済まないはずだった。
「お兄様、わたしも一緒に謝りますから……」
「うぅ、シャエルぅ……」
清掃員としては後輩でもあるシャエルに慰められてしまう。仕方なしに、ここからはリンに任せてシュウは清掃に向かうことにした。
「いってらっしゃいませ、お兄様っ!」
シャエルの笑顔は、最後まで眩しかった――
「――それでよリン、結局何人必要なんだ?」
「最低でも5人――でも、ここにいるみんなには参加して欲しいと思ってる」
集まったのはリンを含めて6人、これにシュウを加えてちょうど上限の7人になる。それに、各々の適性魔術が異なっていてバランス面も最良だった。
「あ、あの、あの……どんな大会、なんでしょぉ……」
「リオちゃんからは賞金が出るって聞いとるけど?」
リンが声を掛けるときにマジック・ボールについての話はしていた。全員競技未経験者だが、試合内容については把握してくれていた。問題としている『血の涙の仮面』についても話をしてある。
「親善大会だから、賞金はでないかな」
「おカネにならんのやったら帰ろかな」
「ま、まってソアンちゃん」
席から立ち上がるソアンを、リンは両手を使い慌てて引き留める。
ソアンは≪治癒魔術≫を得意とする。疲弊した体力を癒すサポート役として是非とも参加して欲しい人材だった。
「怪しい言うても、仮面が一緒なだけやろ? 関係ないなら大会に出るイミないねんなぁ」
「そう、そうなんだけど……」
「彼女たち5人は、去年急に現れたのよね?」
言葉に詰まるリンを見兼ね、エリスが助け舟を出す。リンにとっては、これ以上なく信頼の置ける舟だった。
「う、うん。正体についても色んな考察が行き交ってるんだけど、少なくとも現役のプロで思い当たる人物はいないって」
「それなのに突然有名になった。優勝するくらい強いなら、優勝するよりも前に有名になっても良いと思わない?」
「……どういう意味や?」
「世界1位に勝利する実力なのよ。チームの練習段階で誰かが目を付けて、もっと早くに有名になってると思うの」
「そんなん、こっそり練習してるか、練習してないだけちゃうん?」
「ええ、私もそう思ってる」
エリスの含みある言い方で空気がぐっと重くなる。ソアンは先が気になって仕方なさそうに席へと着き、ソアン以外のメンバーも突然の重い空気に圧されて息を飲んだ。
「でも、こっそり練習したところで、練習試合もこなさずに突然出てきて世界1位になれるとは到底思えない。経験者だとしても、実力をカバーする何かが必要だと私は思う」
「エリスちゃん、それってまさか――」
「ええ、血の金剛石が絡んでる可能性も疑うべきね」
「ぶ、ぶぶ、ぶらっでぃ……だい、や?」
ブラッディ・ダイヤは違法の魔法具であり、体内に含むことでロッドの何万倍も魔力を高めることができる――とは言え、市場に出回ってる量はごく僅かであり、存在を知るものも数少ない。
カホとソアンがまさにで、ブラッディ・ダイヤの存在自体を詳しく知らない。一方のリオラとシャエラは、そのダイヤ絡みの事件に巻き込まれたばかりであった。
「何ができるん? その、石……?」
「魔力を爆発的に高めることができるわ。ソアン、あなたも見たでしょ?」
「何をや?」
「女子寮を囲む強固な≪防壁≫、メイシアと呼ばれた女性が口元から放った≪波動≫――どれも常軌を逸した魔法だった」
「ブラッディ・ダイヤ……」
ソアンは、ダイヤの響きに予想以上の興味を示し、顎に手を当てて深く考え込む。
カホは理解しきれずに、相変わらず戸惑うことばかりだったが、芳しくない状況であることだけは把握した。自分でも手伝えることがあるなら、手伝いたい気持ちでいっぱいだった。
「そのブラッディ・ダイヤがあったら、不可能も可能になるかもしれんて?」
「まあ、そういうことね」
「わたくしも煮え湯を飲まされた以上、黙ったままではいられませんわ」
シャエラはキッチンで片づけをするシャエルを眺め、少し前の出来事思い出しながら悔しそうに呟いた。
その姿を見て、ついにソアンも覚悟を決めてくれる。
「分かった。でもウチは選手としては出らん。動くのは苦手やし、放課後も予定があるから練習は厳しい」
「構わないわ、ソアンさんは治癒に徹してくれればいい。そうよね、リンさん?」
「う、うん。ありがと」
「決まりだな」
もちろん、リオラは気合十分で立ち上がる。リオラにとっても、誰がブラッディ・ダイヤを横流しにしているか、その犯人の正体に対して並々ならぬ思いを抱えていた。
最後は全員が決心を固め、上手いこと1つに纏めてくれたエリス様々である。
こうして、本戦に出場する7名が決定した。試合まではあまり時間が残されてはいない――
早速、明日の放課後から練習を始めることを取り決め、一同は倉庫を訪れたときからそのままで後にした。
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