魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

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CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~

(07)最後の練習 ~pre-match~

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「ドルハさん、いらしてたんですね」

「レイジーか」

 レイジーは学校を休み、試合前最後の『アトラータフェレース』全体打合せに参加していた。選手だけでなく、マネージャや広報など他関係者も参加する面倒な会議だ。
 実力は高くてもまだまだ若い身――レイジーは打合せ場所に1番乗りで早く着いたつもりが、チームのエースであるドルハが先に待ち構えていた。ドルハはチーム最年長の「男性」でありながら、未だに選手としてマジック・ボールの最前線で活躍する。

「ドルハさんが1番先に着いちゃ、みんな萎縮いしゅくしちゃいますよ」

「知るか、下らないことに呼び出しやがって」

「ふ、ほんとですよね……」

 ドルハは己の強さだけでなく、全体を見渡した統率力にも優れている。リーダシップを遺憾なく発揮してチームを勝利に導く姿から、他メンバーの信頼も厚い。

「編成は決まりました?」

「キーパーにトピー、アタッカーにグロリア、シャクにはフェンダーからガンナーを担当してもらおうと思ってる。限界までこのメンバーで進む」

「……本気ですね」

「小娘たちに負けてられないからな」

「口が悪いですよ」

 今回の編成は、かつて『サンルナール』に苦汁を飲まされたメンバーだった。いつも冷静なドルハのはずが、レイジーには焦っているように見える。

「レイジー、こんな大会出る必要ないぞ? 学友にも誘われてるんだろ」

「やめてください。私だって本気なんです」

「そうか……」

 レイジーが『アトラータフェレース』と契約してからまだ日は浅い。それでもチームの一員として本気で取り組んでおり、前回の世界選手権での敗北はレイジー自身にも苦い経験だった。

「まずは決勝に行って奴らの仮面を引っぺがす。いいな?」

「はい!」

 例え小規模の大会であろうと、気合は十二分にあった。




 ○○○○○○




 練習も板につき、本番まで残り3日になったところで学園セントラルの面々は、グラウンドを貸し切って真ん中に集まっていた。グラウンドの両端には、マジック・ボールの本戦同等のゴールが設置してある。
 状況については、ルヴィが前に立って説明する。

「最後の練習試合よ。時間は半分にするけど、ゴールもコートの広さもより本番に近い形で行う。強力な助っ人にも来てもらったから覚悟してちょうだい」

「上等だ、ワクワクするぜ」

「本気で挑ませていただきますわ」

 学園セントラルの特進クラス暫定ざんていチーム――
 アタッカー:リオラ
 ガンナー :シャエラ
 フェンダー:エリス、シュウ
 キーパー :カホ

 不慣れなシュウをエリスがカバーする安定の布陣、分厚い攻撃陣に堅牢なキーパーに対するはマジック・ボール経験者チーム――
 ガンナーには≪変形≫を得意とするリンが、アタッカーをルヴィとロイが担い、後ろも同等の実力を持つ競技経験者が固める。

「……いくわよ?」

「いつでもいいぜ」

 リオラとルヴィ、アタッカーの2人が近づいて睨みあう。
 試合に使う魔法球は、コートの中央上空に射出され、アタッカー同士で球を奪い合うところから勝負は始まる。
 ルヴィがコート外に立つ生徒に合図し、破裂音に合わせて魔法球が勢いよくマシンから放たれる――


「はっ!」
「うりゃっ!」


 試合開始、マシンのタイミングを知り尽くしているルヴィがわずかに早く上空に飛び出した。
 2人とも足元に魔法陣を張って勢いよく宙に舞い上がる。

「うそっ?!」

 大きく差を広げていたはずが、いつの間にかリオラが先を越す。高くに浮かぶ魔法球を先に捉えたのはリオラだった。

「うーりゃぁあっ!」

 リオラは、ロッドを大きく振りかぶって魔法球に向ける。ロッドの先には赤い魔法陣が光り輝く。ルヴィのブロックも間に合わず、ロッドは勢いよく魔法球にぶつかった。

「ひいぃっ!」

 何故かリオラの後ろにいるカホが悲鳴を上げる。
 それほどの勢いで、魔法球は相手チームのゴールに向かって一直線に飛び込んでいく。ア然とする経験者たちの横を目にも止まらない速度で通り過ぎていく。
 当然、相手キーバーの≪防壁≫も間に合わない。


 ――プォン


 魔法球は、ゴールの青枠ブルーラインに直撃して力なく地面に落ちる。ゴールが青く光り、特進チームに2ptが入った。

「冗談だろ……」

 焦るロイを置いて、すぐに次の魔法球がマシンから放たれる。慌てて上空に構えていたルヴィが何とか魔法球を確保した。

「リン! 1回下げるわよ!」

 ルヴィの合図に合わせ、リンは一気にコートを駆ける。そのままルヴィのパスをロッドで受け取り、さらに前へと進む。

「行かせないぜっ」

 正面に立ちはだかるリオラに対し、リンは物怖じせずに距離を詰める。そして、ギリギリまで近づいたところで上空を進むルヴィにパスを送る。

「もらったっ!」

「ごめんね、リオラちゃん」

「あ? ――んあ゛!」

 魔法球を奪おうとしたリオラだが、そのリオラのロッドを≪変形≫したリンのロッドが掴んでいた。リオラの体制は崩れ、地面に顔から転んでしまう。
 リンはリオラの屍を超え、気にせず前に進む。

 上空では、魔法球を持つはずのルヴィにシャエラが近づいていた。

「通しませんわよ」

「残念、もう持ってないの」

 ルヴィは素早いパスを後ろにいるロイに出していた。ロイも魔法球を受け取ったあと、素早く地上のリンに向かってパスを回す。

「ありがとう!」

 順調にパスを受けて進み、ゴール近くにはエリスが堂々と待ち構える。

「エリスちゃん、負けないよ」

「私も、手加減しないわ」

 先に仕掛けたのはエリスだった。
 魔法球を抱えるロッドに向かい、エリスは短く≪変形≫させていたロッドを振るう。なるべく細かい動きが取れるようにした策略だった。
 リンは、一度魔法球を浮かせ、エリスのロッドと同じような形に自身も≪変形≫させる。ロッド同士が互角の力でぶつかり合い、2人とも体がのけ反ってしまう。そして、リンは後ろに近づいているロイの姿を捉えていた。

「えいっ……ロイくん、お願い!」

 今度はロッドを長く≪変形≫させて魔法級にぶつけ、後ろにいるロイに的確なパスを出す。
 しかし、ロイに気づいていたのはエリスも同じだった。それもリンより早く気づいていた。

 パスを出した方向に、緑色に光る≪相転≫の魔法陣が浮かぶ。

「そんな、これを見越してっ――」

 リンが気づいたときには遅かった。
 魔法球は≪相転≫の魔法陣を通り、同じくリンの近くに浮かんでいた魔法陣から勢いを落とすことなく飛び出してくる。

「あうっ……」

 魔法球はリンの体にぶつかり、力を失って地面に落ちる。『ノックポイント』を獲得した特進チームに、今度は1ptが入る。

「魔法陣と詠唱えいしょうの速さがプロ並み――いえ、プロ以上かも……」

 結局、20分という時間の中で経験者チームが得点を得ることはできなかった。
 最初で最後の練習試合は、特進チームの圧勝で幕を閉じた。




 ○○○○○○




「強すぎるわ……これなら決勝もも、優勝まであるかもしれない」

 試合後、ルヴィは満足気に頷いていた。当初は期待もせずに提案していたが、今では本気で優勝を狙えるかもと意気込んでいる。

「かか、かち、勝ちましたね」

「おれたちは何もしてないけどな」

 カホも嬉しそうにしていたが、うっかり水を差してしまった。
 事実、シュウとカホには試合中ほとんど球が回ってきていないのだから仕方ない。

「あとはパスワーク、チームの結束ね。残りの時間でそこを中心に教えるから、最後まで気を抜かないでちょうだい」

 ルヴィの監督コーチっぷりもすっかり板についていた。ひとまず今日の練習は終わりとし、各々が散らばって行動する。

「シュウ、少し話したいことが――」

「ぬあっ! こんな時間か、掃除しなきゃ……」

 エリスが声を掛けようとした瞬間に、シュウは慌ててその場から離れてしまう。
 シュウにも話を聞いてほしかったが仕方ない――

 エリスは、帰ろうとしていたシャエラに声をかけた。

「シャエラさん、ちょっと……」

「え? わたくし?」

 普段接点が少ないだけに、シャエラは戸惑っていた。
 エリスは、気にせずシャエラを連れて校舎に戻る――
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