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CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~
(19)仮面の下 ~face~
しおりを挟む決勝トーナメント準決勝の第2試合――
リリアナジェッツ VS サンルナール
試合は、序盤は互角だったはずが、中盤を機にサンルナール優勢で進む。まるでアトラータフェレースを下したときと同じように――リリアナジェッツのエースであるウルルは、試合中にも関わらず頭を抱えてしまう。
「負けたくないんだよ」
「私たちも同じよ」
相手チームのエース――アール選手は、ガンナーとは思えない俊敏な動きでコートを乱す。アルシア大陸仕込みの強アタックがまるで通用しなかった。
サンルナールの圧倒的強さ、圧倒的美しさに会場が魅了される。
「――完敗だよ」
ウルルは、悔しそうに呟いた。
結果、第2試合はサンルナールが圧勝し、決勝戦へと駒を進めた。
シュウたちは、口を開けて試合中継を眺めていた。
圧巻の試合運びで、さすがアトラータフェレースを下しただけある。
ルヴィは監督らしく真ん中に立ち、チームに向かって最後の言葉を掛ける。
「とりあえず目標は達成したわ。けど、私はここで満足して欲しくない。彼女たちに勝てないと、真実には近づかない気がするから……
アトラータと違って情報が少ないから、私からこれ以上のアドバイスはできない。私には応援することしかできないけれど、でもさっきの試合を見て、みんななら必ず勝てると信じてる。いえ、確信してる。
彼女たちの仮面の下、さらにその裏を暴くのよ! いいわね?!」
ここに来て最大級の熱意に戸惑いつつ、シュウたちは立ち上がる。リオラも最後の1口を頬張った。
控室からコートまでの道のり――
今までよりも遠く感じる。ついに決勝までたどり着いた。
「――レイジー? どうしてここに」
途中、アトラータフェレースのレイジーが壁に寄りかかっていた。シュウたちを見つけると、一息ついて口を開く。
「まさか負けるとはね。ドルハさんが満足そうだから良いけど、本来なら勝ち逃げなんて許さないからね」
「あはは、2回目は勘弁してほしいな」
リンだけでなく、他の出場メンバーも再戦して勝てる自信は無かった。
「次のサンルナール戦、私たちとは戦い方がまるで違う。平気よね?」
「対策はバッチリのつもりだ」
「負けないでよ? じゃないと今日の私たちが3番目だったってことになるから」
レイジーの激励を受け、気を引き締めてコートへ向かう。
コートに近づくにつれ、歓声も大きくなる――
○○○○○○
「もう決勝、早かったね」
「ジュリ、アトラータは負けたんでしょう?」
サンルナールの控室でリシェルは、仮面をかぶったままロッドの最終調整に取り組んでいた。もうすぐ試合開始の時間のようで、ジュリ以外の面々も集まってくる。
「うん。対戦相手は、学園だね」
「ふっ……」
運命は、どこまで私たちを弄ぶのか――
思わず笑みがこぼれてしまう。もちろん負けるつもりはない。
「今まで通りならデータ上負けはあり得ない」
「テイタムの言う通り――最後よ、全力で行く」
第1アタッカーのジェイ選手こと、ジュリ――
第2アタッカーのディ選手こと、ダナン――
フェンダーのケイ選手こと、カエラ――
キーパーののティ選手こと、テイタム――
「学園を真っ向から潰す、いいわね?」
サンルナールのエース――
ガンナーのアール選手こと、リシェルの掛け声にチームメンバー全員が呼応する。
○○○○○○
マジック・ボール親善大会・決勝戦――
国立魔法学中央学園 VS サンルナール
『さあ、いよいよ決勝戦です。ここまでの試合をどう見ますか、ベーネさん?』
『そうですねぇ。アトラータが負けたのは意外でした。この大会は公式じゃないですが、伝説に残っちゃいますよぉ』
『私もそう思います。おっと、サンルナールの選手も入場してきました。これで全員がそろったことになります。
果たしてサンルナールは、ついに素顔を見せるのでしょうか?!』
『たのしみ、たのしみぃ!』
開始メンバーは準決勝の最後と同じ、シュウとソアンは応援に徹することにした。コートでは今まで通り、リンが1歩前に立って向き合うが、仮面の5人組を前にして今までとは違う緊張感が走る。
「学園の皆さん、初めまして」
「は、はじめまして……」
「おい、仮面は取らないのかよ」
「り、リオラちゃんっ」
リオラは初対面にも関わらず、失礼を承知でサンルナールを挑発する。リンの前にいるエースの選手が仮面の下で笑っている。この時を待っていたと言わんばかりに――
「ずいぶんな態度ね、アトラータを倒しただけのことはある」
「まあな」
「リオラちゃん、褒められてないよ」
「言われなくても仮面はとるわ。約束だから、あんまり期待しないでね――」
サンルナールの5人が一斉に『血の涙の仮面』を取った。
仮面の下からは、5人の女性が顔を出す。特段有名でもない顔に、会場はザワザワと静かに騒ぐ。
『仮面の下には5人の美女――は、いったい誰なんでしょうか?』
『うーん、どこかで見覚えがあるようなぁ……』
『おっと、早速情報が入ってきました。彼女たちですが……なんと、学園の元生徒、それも特進性だったそうです!』
『まあ、運命的?!』
『かつて学生チームに所属し、プロ直前まで話が進んでいたとか……皆さんスポーツ賭博に関わった容疑で学園からは退いているとのことです』
『そうそう、そんな事件あったあったぁ。当時はたくさんの企業が契約を狙ってたとか……』
「――へぇ、先輩だったのか」
「全然知りませんでしたわ」
「あのあの、し、失礼とかなかったですかね……?」
「……聞いたでしょ? 特進クラスからは追放されたの。学もなければ、先輩でも無い。ただ――」
サンルナールの面々は、一気に気迫を高めた。現役の生徒たちを睨みつけ、競技用ロッドを構えてリンの目の前に向ける。
「ただ、学園を恨んでいることは間違いないわ」
リンは強い気迫に押され後ずさるが、エリスは負けじと見つめ返した。
「あなたたちの目的は? どこで『その仮面』を手に入れたんですか?」
「あら、仮面はとっても質問に答えるとは言ってない。そうね、私たちが負けたら何でも質問に答えてあげる」
「あなたたちが勝ったら?」
「質問には答えないと言ってるでしょ。私たちが勝ったら、みんなを出汁に使わせてもらう。それだけ言っとくわ」
「ワタシは塩辛くて喰えたもんじゃないぜ」
「まあ、わたくしからも味が出るのかしら」
「さあ、もう始まるわよ。もう1度言うけど私たちは先輩じゃない。覚悟してね」
「よ、よろしくお願いします」
『今、アール選手改めリシェル選手とリン選手が握手を交わしました! 各々が配置につきます』
『ジェイ……ジュリ選手はアトラータのレイジー選手に比べると魔力は控えめですねぇ。ファーストタッチはリオラ選手に決まると思いますが、どうなるかしらぁ』
「――プレイ見たよ。勝てるか心配だな」
「今のうちに後ろに下がっておきな? 怪我するぜ」
配置も前回同様、アタッカーにはリオラとシャエラが立つ。
ジュリは口では「自信が無い」と言うが、口元は微笑んでいて余裕の表情を崩さない。一筋縄では行かないと本能で感じる。
「くっ……」
きっかけがあるわけでもなく会場が静まり返り、リオラは自身の心臓の鼓動を生で感じる。
そして、決勝戦1発目の魔法球が天高く放たれる――
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