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CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~
(20)決勝戦・ノックポイント ~knock~
しおりを挟むマジック・ボール親善大会・決勝戦――
国立魔法学中央学園 VS サンルナール
魔法球が上空に放たれて、アタッカーのジュリとリオラが一斉に飛ぶ。ジュリの飛翔は、僅かな差でリオラに追いつかなかった。
「もらったぁ!」
リオラの先攻を確信したシャエラが前にでる。試合は学園が攻撃優勢で始まった。
「繋いでくれシャエラっ!」
「ナイスパスですわ」
魔法球を受け取ったシャエラの前に、ガンナーのリシェルが立ちふさがる。アトラータフェレース同様、プロならではの気迫を感じさせる。
「そのボール、貰うわ」
「譲りませんわよっ」
リシェルは、魔法球目掛けてロッドを容赦なく振り回してくる。シャエラは華麗に魔法球を浮かし、ロッドをロッドで打ち返す。
リシェルが怯んだ隙に魔法球を飛ばそうとロッドを振りかざす――
「ざんねん」
「も、もう1本ありましてっ?!」
リシェルは、もう一方の手にもロッドを握っていた。あらかじめ≪変形魔術≫でロッドを2本に分けていたのだ。
予想外の動きにシャエラは対応できず、もう1人のアタッカーであるダナンに向かってパスが渡される。
「わたしが抑えるっ!」
ダナンに1番近いリンが周りを抑えにかかる。
ダナンは落ち着いて、リンが来るよりも早く上空のジュリにパスを回す。
「取られたんなら、取り返すまでっ!」
ジュリの周りはリオラがカバーしていた。魔法球が渡った直後にリオラが勢いよく迫る。
「予習不足だよ、学生さん」
「んあっ?!」
ジュリはパスを出すでもなく、リオラに向かって一直線に魔法球を放った。
魔法球は光を失い、サンルナールに1ptの先制点が入る。
『決まったぁ! アール――リシェル選手の二刀流からのパス回し、そしてノックポイントでの先制点!』
『やーん、ほれぼれしちゃーうっ!』
サンルナールは、ノックポイントを中心に細かく得点を重ね、魔法球を奪われる機会を減らして点差を広げる戦法を得意としていた。珍しい戦法でもなく、ノックポイントを存分に利用した『マジック・ボール』ならではの戦い方とも言える。
リオラを含め、学園側がその戦法を知らなかったわけではない。ただ、あまりの展開の速さに付いていけていなかった。
覆面を被っていたとは言え、アトラータフェレースを下した「プロチーム」であることを改めて思い知らされる。
「リオラさん、次に備えてっ!」
「言われなくてもだっ……」
エリスは、薄々と危機感を感じ始める。
ノックポイントを中心に狙われるとなると、攻撃が後ろまで来ない分、ディフェンスとしての立ち位置が迷われる。
ここで前に出るのは、敵の思うツボではないか――とは言え、このまま後ろで突っ立ってるわけにもいかない。
シャエラもリンも、近くにいるリシェルとダナンにマークされる。リオラが魔法球を取れたところでパスの出し先が無い。
「――リオラさんっ!」
エリスは、ディフェンスながら前線に飛び込んだ。シャエラの近くにいたリシェルは、狙い通りと言わんばかりに微笑む。
「いけませんわっ、エリスさん!」
リシェルとダナンは、一気にコートを駆け上がってエリスを通り越す。エリスは戸惑いながらも、ここで立ち止まっては意味が無かった。
「要は取られなきゃいんだろ」
リオラを信じるしかない。
魔法球には、リオラとジュリが同時に手を伸ばす。
「――強いけど、足りない」
「なっ、ロッドに直接だってっ……?」
ジュリは、魔法球ではなくリオラのロッドを狙って≪衝撃≫を繰り出す。魔法球を無視して放った≪衝撃≫は、確かにリオラのロッドをのけ反らせるが、反動で自身のロッドも後ろに弾かれる。
「決定的に足りてないの」
「そういう、ことかっ……!」
リオラが気づいたときには、手遅れだった。
目の前に≪相転≫の魔方陣が張られ、魔法球が吸い込まれていく。
リオラの背後では、いつの間にかフェンダーのカエラが魔法を唱えていた。
魔法球は、前線を進むリシェルの前に送られる。
「そう、足りてないの……」
「わわっ、あわわわっ」
ジュリの後を引き継いだリシェルが、キーパーのカホに向かう。焦るカホだが、ここまででキーパーの動きを全身に叩き込んでいた。
集中してリシェルの動きを目で追いかける。
「――経験がねっ!」
リシェルが強く魔法球を放つ。
その先はゴールではなく、別方向にいたアタッカーのダナン――
ダナンが流れるように魔法球を放ち、ゴールへと角度を変える。
「はぅっ!」
想定外から飛んできた魔法球にカホは成す術がない。ゴールが青く光り、サンルナールに追加点が入る。
「あなたたちには実践が足りてなさすぎる。アトラータには運よく勝てたみたいだけど、その強運もそこまでよ」
リシェルとダナンは、すぐにコート中央に向かう。
実践が少ない学園は、戦法を変えられると柔軟には対応できない。エリスは焦りつつも打開策を考える。
アトラータフェレースとサンルナールは、実力的には大差ないはずである。それでいて、学園がアトラータフェレースに勝利できたのは何故か――
「リオラさんっ! とにかく動き回って!」
「りょーかい」
それは、魔力の違いである。
プロチームであろうと追随を許さない、特進クラスの圧倒的魔力――
特にリオラの≪衝撃魔術≫は、得点力に大きく繋がっていた。今回もその点は外せない。
「フェンダーなのに、よくここまで来たね」
「力で勝つ気はないわ」
シャエラとリンは相手チームのカバーに回り、中央に放たれる魔法球にはエリスが向かう。対するはアタッカーのジュリだが、当然≪衝撃≫の強さでは勝てるはずがない。
だからこそ、ここでも圧倒的な魔力を見せつける。
「見事にやり返されたね」
エリスは、誰よりも早く≪相転≫の魔方陣を発現し、的確にリオラがいる場所へと送る。
「さすがだぜっ……おりゃっ!」
リオラの鋭い一撃が魔法球を吹き飛ばす。
一直線にゴールに向かって突き進むが、運悪くキーパーのテイタム自身に当たってしまう。
「ちぇっ、」
「リオラさん、急いで動いて……シャエラさんも!」
「分かりましてよ」
何とか稼いだ1pt――
ひとまずは、リオラとシャエラの2人を何とかフリーにして得点を稼ぐしか考えが思いつかない。
守備が弱くなり、失点も増えてしまうがエリスは魔法球に向かって飛び込んだ。リンには引き続きサポートと抑えを頼む。
「何か忘れてない?」
そうして攻撃に集中していると、魔法球を奪おうとした瞬間にノックポイントを獲られる。サンルナールに細かい点が積み重なり、エリスたちは徐々に追い込まれていく。
第1クォータは、常に苦しい戦いが続く――
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