魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)

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CHAPTER_04 マジック・ボール ~the moon sets and the sun rises~

(21)仕返しの仕返し ~imitate~

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「――作戦を変えましょう」

 試合開始後、最初のインターバルでエリスは思い切って提案した。
 第1クォータ終了時点で点差は10pt近くに上り、このまま何も対策を打たなければ負けは必至だった。

「ひとまずはフォーメーションを元に戻す。やっぱりディフェンスが薄いのには問題がある」

「わたくしも同意見ですわ。お相手もバランスよく配置しているようですし」

「でも、それだと点を取れへんとちゃうん?」

「ソアンさんの言う通り――だからもう1つ、方針を変える」

「「方針?」」

 エリス以外の全員が声を揃える。
 エリスの言葉に集中して静かに耳を傾ける。

「――ワタシが得意とするやつだな」

「り、リオラちゃん……お手柔らかにね」

「や、やや優しくですよっ」

「おもしろくなりそうですわ」


 作戦会議も一段落付き、シュウはふと時計に目を向けた。

「エリス、もう時間が」

「そうね――」

 シュウの声掛けに生返事のエリス――
 コート中央をまっすぐ見据える。

「目には目を、歯には歯を……ここからが勝負どころよ」

 メンバー交代は無しに、エリスが先頭となってコートに進む。
 影のエースとしてチームを引っ張るエリスは、実に楽しそうな笑みを浮かべていた。




 ○○○○○○




 第2クォータ――
 今回も先攻はリオラが獲った。
 だが、先ほどとは様子が違う。1番近くにいたジュリは、すぐにその異変に気付いた。

「まずいっ、この子たちっ――」

「遅いねぇっ!」

 ジュリが気づいたときには、既にリオラは魔法球を打ち飛ばしていた。ジュリの顔面のすぐ横を、魔法球が豪速で突き進む。

「いけないっ! ダナン、にげてっ!」

 大きな声を上げても間に合わない。既に魔法球はダナンの体にぶつかっていた。魔法球は弱々しく地面に落ちて、ダナンは呆然と立ち尽くす。

「ダナン、次が来るわよっ!」

 ガンナーのリシェルが前に上がる。ダナンもリシェルの声に応じて次の魔法球に向かう。学園セントラル側の狙いはすぐに気付かれた。


 ――とにかく魔法球を獲らせてはいけない


 その一心で、ジュリもリオラに立ち向かった。

「わたくしをお忘れでして?」

 その3人の合間を縫うように、魔法球に向かって≪波動≫の線が突き進む。その≪波動≫を見越して距離を取っていたリオラのもとに魔法球が飛ばされる。

「みんなっ、構えてっ!」

 リシェルたちは一斉にに≪防壁≫を張るが、リオラが放つ≪衝撃≫の前では気休めにもならなかった。魔法球は≪防壁≫を軽々と突き破ってジュリの体にぶち当たる。
 再びチーム学園セントラルに1ptが入る。

 ジュリたちは、今度こそ魔法球を奪いに掛かる。

「ずいぶん野蛮ね」

「ワタシには向いてるかもな」

 ノックポイントは、リオラの≪衝撃魔術ウェイトブレイカ≫と相性がいい。それに――

「ごめんあそばせ?」

 シャエラの≪波動魔術ジグラクタブレイカ≫とも相性がいい。もっと早くに気づくべきだった。
 エリスは守備に戻り、失点もなるべく抑えていく。得点力は低いが、ノックポイントだけで徐々に点差を縮めていった。

「ふざけないでっ!」

 リシェルは声を張り上げてジュリにパスを送る。ジュリは冷静にパスを受け流して、リオラの体に向けた。久しぶりで油断したリオラは、うっかりノックポイントを許してしまう。

「リシェル、落ち着いて行こ!」

「……そうね――」

 まだセカンド、焦るときではない。現状で互角なのだ。
 依然優勢なのは、サンルナールに違いなかった。




 ○○○○○○




「あとちょっとだな」

「でも、まだ届かへんなぁ……」

 サンルナールとの点差は3ptにまで近づいていた。しかし、あと1歩で魔法球を奪われ、ノックポイントを奪い返されてしまう。
 シュウは2回目のインターバルの間、エリスが前線に戻ることも提案した。エリスとしては守備を疎かにして2ptを奪われる方が危険と判断し、結局は作戦を変えないでいた。

 メンバーも変えず、まもなくして第3クォータが始まる。


『さあ、ベーネさん。いよいよ決勝戦も折り返しですが、ここまでの試合をどう見ますか?』

『そうねぇ、学園セントラルの子たちはアトラータに勝ったということもあって互角に見える勝負だけど、サンルナールの方がまだ余裕がありそうねぇ』

『この第3クォータで試合が動きそうですね』

『どうだろ~ みんな頑張ってぇ~』


 リオラが先頭に立つのも、これで何度目だろう――
 さすがに疲れの色を隠せない。それでも、ジュリを前にしてひたむきに余裕を演じる。

「アトラータ戦でもたくさん動いていたもんね。休んだ方がいいんじゃないかな?」

「余計なお世話だ」

「そっか。じゃあ、容赦しないね」

 ジュリと睨み合ったまま、リオラは今までとは違う雰囲気を感じる。

 ドロドロと粘り強く、暗くて怪しい雰囲気オーラ――
 リオラは、以前にもその雰囲気を感じたことがあった。それは、久しぶりに再開した兄弟子タケルと同じ――

「おまえ、まさかっ!」

「始まるよっ」

 リオラの戸惑いを余所に、魔法球が高く放たれる。

 第3クォータ――
 リオラは1対1の奪い合いで、初めて圧倒されることになる。

「こんのっ、速すぎだっ!」

「ふふっ、着いてこれるかな?」

 今までのサンルナールは手加減だったのか――
 ジュリは圧倒的な速度で魔法球に到達し、前に出たダナンに素早くパスを回す。ダナンの動きも今までとは段違いで素早かった。

「ゴーッ! 進んでっ!」

 後ろにいるリシェルの合図に合わせ、ジュリとダナンはパスを回しながら、一気にゴールまで突き進む。

「エリスちゃんっ! ごめんっ!」

 リンはどうすることもできず、魔法球を持ったジュリがエリスに迫る。エリスにも、すぐには守る手立てが思い浮かばなかった。

「だめっ、パスも早い」

 ジュリとダナンの間に≪防壁≫を張るが、魔法陣が浮かぶ前にパスを出されてしまう。
 残された守備はカホだけ――

「え、えーいっ!」

 カホのキーパーも慣れたものだった。
 離れたところから打たれた魔法球を、ゴール外に弾くよう的確な位置に≪防壁≫を張る。
 その≪防壁≫はカホならではで、常人よりも頑丈な固さを見せる。

 そんな魔法陣が、いともたやすく打ち破られる――

「ご、ごめんなさいぃ」

「カホさん、気にしないでっ!」

 開始早々2ptを奪われ、エリスは確信した。リオラも早い段階で気付いていた。
 カホを除く学園セントラルの面々が、不安な表情で見つめ合う。


 ――ブラッディ・ダイヤ


「ついに正体を現しやがったな」

 リオラは、悔しい気持ちで次の魔法球に向かった。シャエラも同じ気持ちで配置に向かう。そのシャエラの周りを、ガンナーのリシェルがカバーする。

「分かったでしょ? 後追いノックポイントだけでは勝てないのよ?」

「……あなた方には、負けられない理由ができましてよ?」

「え? 今なんて……」

 シャエラは、今まで以上に集中して体内の魔力を高めていく。まがい物の力なんかには、負けられなかった。

 ここからが「本当の」勝負どころ――
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