18 / 40
不死鳥といやしの子守歌
2.お金持ちのお客さん
しおりを挟む
預かり屋さんの裏方で、ポポがお掃除や預かっているモンスターたちのお世話を再開した頃、表の方ではメイプルたちが男性のお客さんの応対をしていました。
光の国の住民で、名前はデーツ。ピカピカの派手な衣装に身を包むお金持ちでした。
彼の傍らにいるパートナー妖精の名前はハニー。アゲハチョウの羽を持っている妖精で、やはりデーツと同じようにピカピカの派手な衣装に身を包んでいました。そんな彼らが持ち込んできたのは鳥かごでした。キラキラと輝く星屑のようなラメ生地のカバーで覆われているのですが、それをそっとカウンターに置くと、デーツはおそるおそる周囲を見渡しました。
「他にお客さんはいないようだね?」
声を潜める彼に対し、メイプルたちもまたひそひそ声でうなずきました。
「はい、誰もおりませんよ」
すると、デーツはじっとメイプルとシロップを見つめると、二人に対して確認するように言いました。
「これからお話すること、見せることを、どうか誰にも言わないと約束してくれるかね?」
どうやら訳アリのようです。
シロップはすぐに難しい顔になってしまいましたが、メイプルは違いました。フェンネルにポポのことがあったからです。
何か困っているのならば、ひとまず話だけでも聞いてみようという姿勢で、彼女はデーツに言いました。
「お約束します」
デーツはその言葉にホッとしたようで、ハニーと目配せするとようやくカバーを外しました。その途端、メイプルとシロップは目を見張りました。鳥かごの中にいたのは、とてもキレイな不死鳥だったのです。
デーツは言いました。
「名前はハイビスカス。私の娘のような存在だよ。どうか、この子を預かってくれないか」
すっかり追い詰められたその様子に、メイプルとシロップは思わず顔を見合わせました。メイプルはおそるおそる彼にたずねました。
「期間はどのくらいでしょうか?」
すると、デーツはうんと声を潜めてささやきかけるように答えました。
「この戦争が終わるまでだ」
その意味をシロップはすぐに察しました。
そして、あわてたようにデーツとメイプルの間に割って入りました。
「ちょっとお待ちください、デーツさん。それってつまり──」
けれど全てを言わないうちに、さらに割り込んできたのがハニーでした。
「お願いよ。デーツの願いを聞いてあげて」
「頼む、この通りだ。金ならいくらでもある。頼むから、この子をかくまっておくれ」
その様子にメイプルもシロップもすっかり困ってしまいました。というのも、ここ最近の新聞でふたりとも、あるニュースを知っていたからです。不死鳥に関するニュースです。
それによると、国内でペットとして飼われている不死鳥もまた、不死鳥隊に加わり、戦地で活躍させることが決まったというのです。
どうやらデーツはそれを嫌っていたようでした。
「不死鳥隊に入れば、よく切れるナイフで体を刻んで血を抜くのだという。そんな恐ろしいことをハイビスカスにさせられるわけがない……」
なげく彼に対し、シロップはたずねました。
「だけど、不死鳥って痛みを感じないんじゃないの? だから、問題ないって聞いたのだけれど」
「いやいや、そんなのはウソさ。たとえ大多数がそうであっても、少なくとも、うちのハイビスカスはそうじゃない。ハイビスカスは痛みを怖がるんだ。それに、争いも大嫌いだ。うちでちょっと揉め事があると、すぐに怖がってしまってね、いやしの歌をいっぱい歌って場をなごませようとする子なんだよ。そんな子が戦地でやっていけるはずがない……」
デーツの言葉を聞いて、メイプルはじっと鳥かごの中のハイビスカスを見つめました。ハイビスカスはきょろきょろと周囲を見渡すと、悲しそうなデーツに気づき心配そうにさえずりました。その声のなんと素晴らしい事。
ハニーがハイビスカスの眼差しに気づくと、そっと鳥かごの外から手を伸ばし、ハイビスカスのくちばしをなでながら、メイプルにささやきかけました。
「デーツはね、心の底からハイビスカスのことを愛しているの。本当の娘のように。だから、不死鳥の常識はもちろん知っているけれど、ハイビスカス自身のこともちゃんといつも見ている。だからこそ、行かせたくないの。それはわたしも同じ」
ハニーの言葉を聞き、メイプルはしばらく考えました。
国のお知らせを無視するということは、あまり褒められたことではありません。
だけど、デーツの悲しみと、それに寄り添うハニーを見ていると、どうしても彼らに協力したくなってきたのです。
「分かりました。お預かりします」
メイプルがそう言うと、デーツとハニーは途端に明るい表情になりました。
シロップは少しだけ不満そうに腰に手を当てましたが、しかし、そうは言ってもメイプルの答えなんて初めから分かっていたのでしょう。つんとした態度ながらも反対などはせず、小声で「全く仕方ないわね」と呟くにとどまりました。
光の国の住民で、名前はデーツ。ピカピカの派手な衣装に身を包むお金持ちでした。
彼の傍らにいるパートナー妖精の名前はハニー。アゲハチョウの羽を持っている妖精で、やはりデーツと同じようにピカピカの派手な衣装に身を包んでいました。そんな彼らが持ち込んできたのは鳥かごでした。キラキラと輝く星屑のようなラメ生地のカバーで覆われているのですが、それをそっとカウンターに置くと、デーツはおそるおそる周囲を見渡しました。
「他にお客さんはいないようだね?」
声を潜める彼に対し、メイプルたちもまたひそひそ声でうなずきました。
「はい、誰もおりませんよ」
すると、デーツはじっとメイプルとシロップを見つめると、二人に対して確認するように言いました。
「これからお話すること、見せることを、どうか誰にも言わないと約束してくれるかね?」
どうやら訳アリのようです。
シロップはすぐに難しい顔になってしまいましたが、メイプルは違いました。フェンネルにポポのことがあったからです。
何か困っているのならば、ひとまず話だけでも聞いてみようという姿勢で、彼女はデーツに言いました。
「お約束します」
デーツはその言葉にホッとしたようで、ハニーと目配せするとようやくカバーを外しました。その途端、メイプルとシロップは目を見張りました。鳥かごの中にいたのは、とてもキレイな不死鳥だったのです。
デーツは言いました。
「名前はハイビスカス。私の娘のような存在だよ。どうか、この子を預かってくれないか」
すっかり追い詰められたその様子に、メイプルとシロップは思わず顔を見合わせました。メイプルはおそるおそる彼にたずねました。
「期間はどのくらいでしょうか?」
すると、デーツはうんと声を潜めてささやきかけるように答えました。
「この戦争が終わるまでだ」
その意味をシロップはすぐに察しました。
そして、あわてたようにデーツとメイプルの間に割って入りました。
「ちょっとお待ちください、デーツさん。それってつまり──」
けれど全てを言わないうちに、さらに割り込んできたのがハニーでした。
「お願いよ。デーツの願いを聞いてあげて」
「頼む、この通りだ。金ならいくらでもある。頼むから、この子をかくまっておくれ」
その様子にメイプルもシロップもすっかり困ってしまいました。というのも、ここ最近の新聞でふたりとも、あるニュースを知っていたからです。不死鳥に関するニュースです。
それによると、国内でペットとして飼われている不死鳥もまた、不死鳥隊に加わり、戦地で活躍させることが決まったというのです。
どうやらデーツはそれを嫌っていたようでした。
「不死鳥隊に入れば、よく切れるナイフで体を刻んで血を抜くのだという。そんな恐ろしいことをハイビスカスにさせられるわけがない……」
なげく彼に対し、シロップはたずねました。
「だけど、不死鳥って痛みを感じないんじゃないの? だから、問題ないって聞いたのだけれど」
「いやいや、そんなのはウソさ。たとえ大多数がそうであっても、少なくとも、うちのハイビスカスはそうじゃない。ハイビスカスは痛みを怖がるんだ。それに、争いも大嫌いだ。うちでちょっと揉め事があると、すぐに怖がってしまってね、いやしの歌をいっぱい歌って場をなごませようとする子なんだよ。そんな子が戦地でやっていけるはずがない……」
デーツの言葉を聞いて、メイプルはじっと鳥かごの中のハイビスカスを見つめました。ハイビスカスはきょろきょろと周囲を見渡すと、悲しそうなデーツに気づき心配そうにさえずりました。その声のなんと素晴らしい事。
ハニーがハイビスカスの眼差しに気づくと、そっと鳥かごの外から手を伸ばし、ハイビスカスのくちばしをなでながら、メイプルにささやきかけました。
「デーツはね、心の底からハイビスカスのことを愛しているの。本当の娘のように。だから、不死鳥の常識はもちろん知っているけれど、ハイビスカス自身のこともちゃんといつも見ている。だからこそ、行かせたくないの。それはわたしも同じ」
ハニーの言葉を聞き、メイプルはしばらく考えました。
国のお知らせを無視するということは、あまり褒められたことではありません。
だけど、デーツの悲しみと、それに寄り添うハニーを見ていると、どうしても彼らに協力したくなってきたのです。
「分かりました。お預かりします」
メイプルがそう言うと、デーツとハニーは途端に明るい表情になりました。
シロップは少しだけ不満そうに腰に手を当てましたが、しかし、そうは言ってもメイプルの答えなんて初めから分かっていたのでしょう。つんとした態度ながらも反対などはせず、小声で「全く仕方ないわね」と呟くにとどまりました。
0
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
6桁の数字と幻影ビルの金塊 〜化け猫ミッケと黒い天使2〜
ひろみ透夏
児童書・童話
ねこ目線のミステリー&ホラー&ファンタジー。知恵と根性だけでどうにかする少女《黒崎美玲》と化け猫《ミッケ》は、家出の途中で怪奇クラブ部長《綾小路薫》と遭遇。朝まで一緒に過ごす約束である場所へ向かった。それはある条件の夜にしか現れない幻影ビル。十億円以上の旧日本軍の金塊が隠されているという都市伝説のビルだった。足を踏み入れた二人と一匹。彼らの前に突如現れた男の正体と、怪奇的な6つの世界が混在する幻影ビルの真実とは……。戦後80年。昭和と令和のキャラが織りなす、現代の子どもたちに届けたい物語です。
※ 演出上の理由により算用数字を使用しています。
※ すでに完結済みですが、推敲しながら毎日1〜3話づつ投稿します。
今、この瞬間を走りゆく
佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】
皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!
小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。
「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」
合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──
ひと夏の冒険ファンタジー
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる