モンスターの預かり屋さん

ねこじゃ・じぇねこ

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不死鳥といやしの子守歌

2.お金持ちのお客さん

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 預かり屋さんの裏方うらかたで、ポポがお掃除そうじや預かっているモンスターたちのお世話を再開さいかいした頃、表の方ではメイプルたちが男性だんせいのお客さんの応対おうたいをしていました。
 光の国の住民で、名前はデーツ。ピカピカの派手はで衣装いしょうに身を包むお金持ちでした。
 彼のかたわらにいるパートナー妖精の名前はハニー。アゲハチョウの羽を持っている妖精で、やはりデーツと同じようにピカピカの派手な衣装に身を包んでいました。そんな彼らが持ちんできたのは鳥かごでした。キラキラとかがや星屑ほしくずのようなラメ生地のカバーでおおわれているのですが、それをそっとカウンターに置くと、デーツはおそるおそる周囲しゅうい見渡みわたしました。

「他にお客さんはいないようだね?」

 声をひそめる彼に対し、メイプルたちもまたひそひそ声でうなずきました。

「はい、誰もおりませんよ」

 すると、デーツはじっとメイプルとシロップを見つめると、二人に対して確認するように言いました。

「これからお話すること、見せることを、どうか誰にも言わないと約束してくれるかね?」

 どうやらわけアリのようです。
 シロップはすぐにむずかしい顔になってしまいましたが、メイプルはちがいました。フェンネルにポポのことがあったからです。
 何か困っているのならば、ひとまず話だけでも聞いてみようという姿勢で、彼女はデーツに言いました。

「お約束します」

 デーツはその言葉にホッとしたようで、ハニーと目配せするとようやくカバーを外しました。その途端、メイプルとシロップは目を見張りました。鳥かごの中にいたのは、とてもキレイな不死鳥だったのです。
 デーツは言いました。

「名前はハイビスカス。わたしむすめのような存在だよ。どうか、この子を預かってくれないか」

 すっかり追いめられたその様子に、メイプルとシロップは思わず顔を見合わせました。メイプルはおそるおそる彼にたずねました。

「期間はどのくらいでしょうか?」

 すると、デーツはうんと声を潜めてささやきかけるように答えました。

「この戦争が終わるまでだ」

 その意味をシロップはすぐに察しました。
 そして、あわてたようにデーツとメイプルの間にって入りました。

「ちょっとお待ちください、デーツさん。それってつまり──」

 けれど全てを言わないうちに、さらに割り込んできたのがハニーでした。

「お願いよ。デーツの願いを聞いてあげて」
たのむ、この通りだ。金ならいくらでもある。頼むから、この子をかくまっておくれ」

 その様子にメイプルもシロップもすっかり困ってしまいました。というのも、ここ最近の新聞でふたりとも、あるニュースを知っていたからです。不死鳥に関するニュースです。
 それによると、国内でペットとして飼われている不死鳥もまた、不死鳥隊にくわわり、戦地で活躍かつやくさせることが決まったというのです。
 どうやらデーツはそれをきらっていたようでした。

「不死鳥隊に入れば、よく切れるナイフで体をきざんで血を抜くのだという。そんな恐ろしいことをハイビスカスにさせられるわけがない……」

 なげく彼に対し、シロップはたずねました。

「だけど、不死鳥っていたみを感じないんじゃないの? だから、問題ないって聞いたのだけれど」
「いやいや、そんなのはウソさ。たとえ大多数がそうであっても、少なくとも、うちのハイビスカスはそうじゃない。ハイビスカスは痛みを怖がるんだ。それに、争いも大嫌いだ。うちでちょっとめ事があると、すぐに怖がってしまってね、いやしの歌をいっぱい歌って場をなごませようとする子なんだよ。そんな子が戦地でやっていけるはずがない……」

 デーツの言葉を聞いて、メイプルはじっと鳥かごの中のハイビスカスを見つめました。ハイビスカスはきょろきょろと周囲を見渡すと、悲しそうなデーツに気づき心配そうにさえずりました。その声のなんと素晴すばららしい事。
 ハニーがハイビスカスの眼差しに気づくと、そっと鳥かごの外から手を伸ばし、ハイビスカスのくちばしをなでながら、メイプルにささやきかけました。

「デーツはね、心の底からハイビスカスのことを愛しているの。本当の娘のように。だから、不死鳥の常識じょうしきはもちろん知っているけれど、ハイビスカス自身のこともちゃんといつも見ている。だからこそ、行かせたくないの。それはわたしも同じ」

 ハニーの言葉を聞き、メイプルはしばらく考えました。
 国のお知らせを無視むしするということは、あまりめられたことではありません。
 だけど、デーツの悲しみと、それに寄りうハニーを見ていると、どうしても彼らに協力したくなってきたのです。

「分かりました。お預かりします」

 メイプルがそう言うと、デーツとハニーは途端に明るい表情になりました。
 シロップは少しだけ不満そうにこしに手を当てましたが、しかし、そうは言ってもメイプルの答えなんて初めから分かっていたのでしょう。つんとした態度ながらも反対などはせず、小声で「全く仕方ないわね」とつぶやくにとどまりました。
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