モンスターの預かり屋さん

ねこじゃ・じぇねこ

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傷だらけの人魚姫

3.子守歌にいやされて

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 ハイビスカスが歌い始めると、その体は暗やみの中で桃色の輝きを放ちました。輝きはやがて小さなあわのようになり、シャボン玉のように空中をただよいはじめ、傷ついて動けない人魚の体を包み込みました。
 すると、人魚の体のあちこちにあった傷が光りはじめ、まだ血の流れていたらしい生傷も、すぐに血が止まり、かさぶたになりました。はがれかけていたウロコもキレイにととのい、小さなすり傷などにいたっては、何ともなかったかのようになくなってしまいました。
 こうして、人魚の体がすっかりキレイになると、ハイビスカスは歌うのをやめました。それと同時に桃色の輝きも消え、あたりには暗がりと静けさが戻ってきました。
 その後もメイプルたちがしばらく固唾かたずを飲んで見守っていると、やがて、人魚の体がぴくりと動きました。重たそうな両目のまぶたが開かれると、美しい海の底を思わせる青い目で周囲を見渡みわたしました。

「気づいたのね」

 シロップが真っ先にそう言うと、人魚は途端に青ざめた顔になりました。

「よ、妖精!」

 そうさけんだかと思うと、あわてたように水中へともぐると、少しはなれた場所から再び顔を出して、おびえた様子でメイプルたちをうかがいました。

「ここは……まだ光の国なのか……?」

 絶望したようにつぶやく彼女に対し、メイプルはすかさず語りかけました。

「その通りだけれど落ち着いて。わたし達はてきじゃないの。どうか信じて」

 その真面目な表情を見ると、人魚は少しだけ警戒を解きました。けれど、まだ不安そうです。そこで次に前へ出たのがフェンネルでした。

「ねえ、ボクを見て。ほら」

 背中せなかつばさとワニのような手の平を広げるその姿に、人魚はこれまた違った意味で目を丸くしました。

「ドラゴン……? どうしてここに……君たちは一体……」

 不思議そうな彼女の前に今度はポポがぴょんと飛び出しました。
 ケロケロなきながら、ポポは人魚に言いました。

「オイラたちは預かり屋さんだ。光の国のモンスターたちを預かる仕事をしているのさ」
「預かり屋さん……?」

 不思議そうに繰り返した人魚でしたが、すぐにポポの姿に注目しました。

「か、カエルがしゃべった?」
「おっと、それについては話が長くなっちまう。しかし、人魚さんや。ドラゴンの存在に安心材料をもう一つ加えておこう。今でこそ、こんな姿をしているけれどね、オイラは闇の国の人間なんだ」
「闇の国の人間だって?」
「ああ、だから心配はいらない。あんたが人魚だからってだけで突き出すようなやつはここにはいないよ」

 ポポがそう言うと、少し安心したのでしょうか、人魚はじっとメイプルたちの様子を確認かくにんしてから、スーッと水の中を移動いどうして近づいてきました。
 そんな彼女の動きを興味深く見つめるハイビスカスの姿に気づくと、ようやく彼女は心を開いてくれました。

「ああ、私を救ってくれたのは、君の歌声だったんだね」

 水中からそっと手を伸ばす人魚に、ハイビスカスはくちばしを近づけてふれました。

「その子はハイビスカスっていうの」

 メイプルは言いました。

「彼女のおかげであなたがここにいた事がちゃんと分かった。もし分からなかったら、助からなかったかも。ねえ、人魚さん。どうか教えて。いったい何があったの?」

 そっとしゃがんでうかがうメイプルに、人魚はしばらくだまって考え込みました。
 やがて、青い目で今一度、メイプルの顔を見つめると、納得したようにうなずきました。

「どうやら君は優しい光の持ち主らしい」
「優しい光?」

 シロップがたずねると、人魚は苦笑いを浮かべながら答えました。

「この国の人々は誰も彼も激しすぎる光を持っているようだった。人魚だって光は好きだが、強すぎる光は何のためらいもなく人魚の体を傷つける。それにくらべると君の光は優しい。まるで、水中で感じるほのかな輝きのよう」
「よく分からないけれど、メイプルのことをほめてくれているのならいいわ」

 そう言って、シロップは飛びつかれたのかメイプルの肩へと座りました。
 そんな二人を見つめると、人魚は一瞬だけ切なそうに笑ってから、すぐにきりっとした表情へと変わりました。そして、姿勢を正しながら言ったのです。

「助けていただき感謝かんしゃする。私の名はローズマリー。水の国の騎士きしの一人だ」

 騎士。その言葉に、メイプルたちの間には緊張が走りました。スパイどころではありません。光の国と戦っている相手国の騎士なのですから。
 けれど、ローズマリーが隠さずにその身分を明かしてくれたことに気づき、メイプルはすぐに警戒を解きました。ローズマリーはそんなメイプルたちのとまどいに気づいたのか、静かに目を細めてから言いました。

おどろかしてすまない。しかし、命をすくってくれた恩人おんじんかくし事はできない。だから、全て話すよ。ここに来るまでの事を全て」

 そして、ローズマリーは語り始めました。
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