あの頃の君に…

百千藤(もちと)

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第五話

歔欷

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あの日以来、学校に彼女の姿はない…
それでも僕は、朝と昼休みに彼女が登校していないかを確認するために六組のクラスに顔を出していた。
そんな姿に呆れたのか、佑が僕に言ってきた。

佑「おい…葉!!お前もうそろそろ良いじゃねーか?」

葉「なにが?」

本当は分かっている…


佑「何がって!あの女の事に決まってんだろ!!もうほっとけよあんな奴。お前らもそう思うだろ?」

剣「まあ確かにちょっと執着しすぎなとこもあるけど…」

真白「そろそろ二ヶ月くらいだっけ?あの子が学校に来ていないの。てかそんな気になるような子か?」

薺「…」


佑が言ってることも、みんなが言いたい事も十分に分かっている
それでも、僕は彼女のことが気になって仕方がなかった。

彼女に逢いたい

できる事なら僕が守ってあげたい、救ってあげたい、そして…側にいたいと
そう思うのは僕のわがままだろうか?

星「別にいいだろ!?葉が勝手にやってるんだから好きにさせろよ。」

佑「でもよー流石に二ヶ月だぜ!いくら何でも来ないのはおかしいだろ?」

星「それも俺達には関係ない事だ。葉!お前自身が何か決めてるんなら貫けよ!」

葉「ありがとう…星」

そう言って教室を後にした。


六組の教室を覗くと皆昼ご飯を食べていてそこに彼女の姿はなくとりあえず僕は、保健室へと足を進めた。向かっている途中一階にある保健室の階段を下っていると椛先生と偶然鉢合わせた。

椛「わ!楸君」

葉「先生!ちょうど良かった!今から保健室に行こうとしてたんです。」

椛先「またサボり?!ほどほどにしないと駄目よ。先生は、今から職員室に行くから勝手に保健室に居なさい」

そう言って先生は階段を上がって行き、僕も下ろうした時職員室へと向かった先生が走って僕の元へ戻って呼び止めて来た。

椛「楸君!!」

葉「何すか?」

椛「言い忘れてた!!彼女…一本さん朝保健室に居たの!」

葉「…え!!?」

思考より先に体が反応し急いで保健室に行こうとしがまたしても先生に呼び止められた。

椛「待って!!もうとっくに一本さんはいないわ。もしかして彼女を探してたの?」

僕は何も言わずに下向いたままだった。

椛「そうなのね。でもまだ学校にいるかも知れないわ!彼女、今日大事な用事があるから学校に来たと言っていたわ!昼には終わるからそれから帰るって。」

葉「じゃあ探せばまだ間に合うかもしれない。ありがとう先生!!」

僕は、そのまま走り駆け下りた。


椛「楸君…あの子を助けて。」
階段を駆け下りていった僕に向かって先生が小さく呟いてた。


葉「はぁはぁ!どこにいる?」

頼む!どこにも行ってないでくれ。
一階から順番に探して行ったがどこにも見つからない。
どこだ?体育館にも居ない、図書室にも居ない、他に一人になれそうな所はどこだ?

屋上?あそこは確か鍵が掛けられてて行けないはずだ!
でも一応行ってみるか。
そう思い僕は、五階にある屋上に足を運ぼうとした時、四階の音楽室からピアノの音が聞こえてきた。

この学園は、本来四階は移動教室でしか生徒はほとんど上がって来ないはずだ!
実際に今、四階に僕以外周りに人はいない。
僕は、ゆっくりと音楽室へと歩き始め近ずくに連れてピアノの音が段々と大きくなっていく


僕は、なぜだか分からないが確信していた。
彼女がここに居ると。
そして、見つけたんだ!!


葉「やっと逢えた…一本さん。」

演奏を止めた彼女がそっと振り返る

百合依「見つかっちゃった…楸君。」

そう言って意地悪そうな顔をして微笑んでいる彼女の顔はとても綺麗だった。

百合依「ここで何してるの?」

葉「こっちのセリフなんだけど。」

百合依「私は、ここでいつもピアノ弾いてるだけだよ。」

葉「え…?いつも?!」

頭が真っ白になりそうだ

百合依「そうだよ!」

葉「じゃあこの二ヶ月ここに居たの?」

百合依「うん!あーいつもじゃないか。でもほとんどかな。」
   
   「どーしてそんな事聞くの?」

   「もしかして…やっと逢えたって言ってたけど私を探してたとか?ってそんな事ないかw」

   「いくら何でも二ヶ月も」

葉「そうだよ!」

百合依「え?…は?ちょっと冗談でしょ?」

葉「冗談なんて言うと思うか?」

僕の放った言葉に目を見開いてびっくりした顔でこっちを見ている。

百合依「アンタ…本当に馬鹿じゃないの。」

葉「久しぶりに聞いたな。」

百合依「本当に私を探してたの?どーして?」

葉「…」

もう、変に戯けて茶化すのはやめよう…

葉「君を…守りに来た。」

百合依「っ!?」

彼女は、またもや目を見開いていた

百合依「今…なんて言ったの?」

葉「君を守りに来た!」

次は真っ直ぐに彼女の目を見てハッキリと口にし彼女に告げた。

すると、彼女の目から一粒また一粒と涙が溢れ出しそのまましゃがみ込み膝を抱えて泣き出した。
僕は、彼女の元に近づき頭に手を置いた。

百合依「だから優しくしないで…」


壊れるくらいのとても弱い声だった。

葉「もう大丈夫だよ!僕が君の居場所になる。」

百合依「ほんとに?」

葉「あぁ!これから僕らは、きっと上手くいくし何があっても大丈夫!この僕が言ってるんだから大丈夫。」
 
 「だから僕のこの手を絶対に離しちゃ駄目だよ。」

そう言って手を握りしめ笑うと今度は大粒の涙を流し始めた。

葉「おいおい!泣き顔は酷過ぎて見てらんねーなw」

百合依「うるさい馬鹿!死ね!」

葉「ひでー女!かわいくねーw」

そう言うと涙目で睨みながら少し頬を膨らます顔に堪らなく愛しくなり額にそっとキスをした。

彼女はびっくりとしながらも直ぐに表情を戻しゆっくりと微笑み口を開き

百合依「知らないよ!私に関わったこと後悔しても。」

葉「もうおせーよ!」

そう言い二人は笑った。







この時の僕は、これからもこうして居られると思っていたんだ。
やっと始まったと思っていたのは僕だけで百合依はわかっていたんだよね…

もう終わりに近づいていた事を…
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