最強スキルは勇者でも聖女でも賢者でもなく肝っ玉母ちゃん!?

紅葉ももな(くれはももな)

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第九話『荒ぶる星夜の鎮め方!?』

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 夜中に発生した爆発事件のせいで、やっぱりというかなんというか……案の定城の廊下は蜂の巣を突いたみたいにパニック状態に陥っていた。

 せっかくなら兄弟まとめて近くの部屋にしてくれれば楽だったのだけれど、各自に用意された部屋へと案内してくれた侍女長いわく……

「魔族による襲撃を受けた際に、勇者様方が一所に密集していては反撃も叶わずに全滅してしまうおそれもございますから、有事の際にそれぞれの教師兼補佐役の護衛の者が駆け付けられる場所にお部屋を準備させて頂きました」

 とのこと……由紀も一応、指導役となるらしい下女長の暮らしている使用人部屋の一角に三畳位のワンルームを賜ったのだけど……

「いや! ぼくはおねぇちゃんと一緒のお部屋がいいの!」

 と奏音が泣き喚いた事で奏音用の……勇者仕様の何部屋あるのかわからない広いお部屋で過ごすことになったんだけど……ジョブスキルによる待遇の格差が酷すぎません?

 そんなわけで兄弟で用意されは部屋はみんなバラバラ、そして星夜に用意されたのは王城の中でも奥の方にある王族居住区の近く。

 嫌な予感しかしないんだけど!?

 事前に案内された時は昼間で明るかったのでわかりやすかったけれど、真夜中の王城は最低限の燭台に明かりがついているだけだったりする。

 それでも外には名前がわからない惑星が色味が違う月のように三つ浮かんでいるためその明かりが窓から入って来ており真っ暗な廊下にならずにすんでいるから助かるわぁ。

 逃げていく使用人達とは逆に、現場に向かうのだろう騎士たちに着いていくと、星夜の部屋の前には騎士団の黒を基調にした制服を纏った男性達が沢山いた。

 ちらほら見える白い制服は王族の居室が近いため駆けつけた近衛騎士かな?

 緑色のローブを纏っている人達が数人いて最前線で部屋の方に手を向けて何やらキラキラと光を放つ壁のようなものを張っているけど……もしかして結界か何かかな?

「すいませーん、通りまーす。 道を開けてくださーい」

 声を掛けながら人混みに突撃して少しずつ前に進んでいく。

 これしきの人の壁を突破できないようでは、タイムセール中のお肉や特売の卵なんて到底手に入れることは出来ないのだ。

 ふふふっ、近所のおばちゃんたちにあらぁ~由紀ちゃん凄いわねぇと言われた人混み突破術を、まさか異世界で披露することになるとは思ってなかったけどね。

「すいませーん、通してくださーい!」

「姉ちゃんこっち!」 

 私の声を聞きつけたのか先行していたらしく、蒼汰がこちらへと手をふるとそれまで鮨詰だった人混みに道ができた。

 モーゼかな? まぁおかげで楽にたどりつけるからいいんだけどね。

「蒼汰、大丈夫だった?」

「あぁ、本当は避難するように言われたんだけど、爆発の原因が星夜だって聞いて駆けつけたんだけど……」

 ちらりと星夜の部屋の方に視線を向けた蒼汰につられて室内に目を向ける。

 本来ならば廊下と室内を隔てる壁があったはずなのだが、爆発の衝撃によって吹き飛んでしまっているのか室内は丸見えだ。

 爆発に巻き込まれて壊れた家具の上に素足で歩いたのか星夜の足元には怪我による血が滲んでいる。

 そしてよく見れば寝室と思わしき奥の部屋もこちらから部分的に壁が崩れていて、誰かが崩れ落ちるように壁に添うようにして床に倒れ込んでいた。
 
 寝室とは違う手前側の部屋にも何人か不用意に踏み込んだことで返り討ち……

 二次災害に遭遇したであろうこちらの世界の人達が意識を失っていたり怪我で動けずにいるようだ。

「うわぁ~やっぱり大惨事」

「だろう? これは流石に俺じゃぁこの状態の星夜の相手は荷が重いから、姉ちゃんを呼んできてくれって近衛騎士の人に頼んだんだけど……」

「そうなのね、会ってないからもしかしたら私の割り当てられた部屋に向かったのかな? 私今は奏音の部屋にいるからすれ違ったのかも」      

 蒼汰と話をしていると、結界を張っていた魔導師のうちの一人が吹き飛ばされた。
  
「おふたりとも! 可能であるならばすぐにセイヤ殿を止めてください!」

 どうやらこの結界とかいう物もあまり長くはもたないらしい。

「はぁーじゃぁ行ってくるよ」

「すまない姉ちゃん」

 心配そうな蒼汰に手を振って、結界に恐る恐る手を近づける。

 多少静電気みたいにピリッしたけど、どうやら通り抜けることはできそうね。

 そのままえいやっ!と結界を飛び越えて内側へ入ると冷蔵庫の中でした……じゃなくて雪が降ってないだけで部屋自体がキンキンに冷えてやがるコンチクショー。

 どうやら異世界転生したせいで星夜の暴走は悪い方にレベルアップしてしまったらしい。
 
 これは早く止めて室内に取り残された人を救出しなければ低体温症になってしまうかもしれない。

「星夜、せいやー!」

 ぼうっとしたまま意識なく立っている星夜へと声を掛ける。

 きっと星夜のこれは夢遊病に近いのかもしれない、視点の定まらない無表情で立っているだけに見える。

「あっ、危ない! セイヤ殿に近付かれてはなりません!」

「大丈夫ですよ! 慣れてますから」

 にっこり微笑み心配してくれた騎士に頷き返す。

「さーてと……」

 それではちゃっちゃとやりますかー! 

 右手に持った水挿しと左手に持った銀盆を両手に構え直す。

「せーのー!」

 打ち付けられた銀器からガシャーンと金属特有の音が室内にこだまする。

「星夜はいい子だねんねこや~♪」

 正直言えばこの大衆の面前で、由紀の下手くそな歌を披露するのはスッゴークハズカシイ!
 
 だかしかし、星夜の暴走を止めるためには恥ずかしいなんて言ってはいられないのだ!

 星夜の暴走を確実に止める方法は二つ……星夜に返り討ちにされる前に物理的に意識を刈り取ること、地球ではアルトリード父さんにしか出来なかった。

 ちなみに小学生の時はまだ物理的に止められる人もちらほらいたのだけど、大人と大差ない体格に育った星夜を止めるのはなかなか大変だと思う。

 最近は寝ぼけた状態で迎撃を覚えたらしくアルトリード父さんが、物理的に意識を刈り取るのに苦労するようになったらしい。

 そしてもう一つ……それは由紀の子守唄……です。

 
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