最強スキルは勇者でも聖女でも賢者でもなく肝っ玉母ちゃん!?

紅葉ももな(くれはももな)

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第十話『星夜を回収いたしました』

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 陸斗いわく……由紀の子守唄は願いを叶えてくれる青いネコ型ロボの登場人物のガキ大将顔負けの音痴らしい。

 由紀としては、きちんとお母さんが歌ってくれた子守唄を歌っているつもりなんだけど……
 
「ぐぁ……何だこの歌は!?」

「もしや新しい闇魔法ではないのか!?」

「呪いだ! これは魔族による攻撃に違いない!」 

 私が星夜を鎮めるために歌い始めた直後から、周りに集まっていた近衛騎士団やら魔導師やら騎士団の団員たちが、自らの耳を塞いで呻き出した。

 まったく失礼しちゃうわ! 普通に歌ってるだけなのに!

 ぷりぷりと内心で憤りながら両手の打楽器と化した銀器を打ち鳴らす。

 フライパンとお玉が欲しい、銀器じゃ音が違うんだよね。

 歌いながら星夜の様子を伺うとふらりふらりとこちらへと歩いてくる。

 こちらから不用意に近づくのは危険なので、星夜から来るまでひたすら歌い続けるのだ。

「ねぇ……ちゃん?」

「うんそうだよ? もう大丈夫だからほらおいで?」

 夢遊状態から言葉を話し始めたらもう大丈夫。

 抱きついてきた星夜のを抱きしめ返して、背中をぽんぽんと優しく叩きなだめる。

 どうやら強張っていた身体の力が抜けたのか、周囲の寒気が薄れてきたことにホッ安堵して結界の外にいる蒼汰へと合図を送る。

 蒼汰が何か告げたのだろう、結界が消えて騎士たちが残骸とかした部屋へと踏み込んできた。

「ねぇちゃん星夜のやつは?」

「うん、とりあえず落ち着いたみたい……蒼ちゃん、怪我をした人達を治せる?」

 ツンツンして見えるが、星夜はこう見えても人一倍優しいのだ、自分のせいで人が傷つくのを恐れて修学旅行へ行くのを躊躇うほどに……

「あぁジョブスキルを駆使して星夜が目が覚めるまでにみんな治してみせるさ!」

 ニカッと笑う蒼汰へこの場をお願いし、由紀の背中に張り付いて、すっかりおんぶおばけと化した星夜を連れてこの場を離れる。

 なるべく由紀達が現場から出たほうが、救出や後処理は円滑に遂行されるだろうから。

 縋るようにして私に抱きつく星夜を促しながら廊下を進む。

 自分よりも身長が高い星夜に覆いかぶさられれば、重くて動けないはずなのに全く苦にならないのはジョブスキル『肝っ玉母ちゃん』のおかげだろうか?

 そんなことをつらつらと考えていたら、ピコンとどこかから音がなった。

「なんの音!?」

 キョロキョロと周りを見たけれど、そんな音がなりそうな物は見当たらない。

 アレ?気の所為かな?

「あー、何だっけ? ジョブスキル見るの……『ステータスオープン』?」

 うろ覚えに呪文を口に出して発音すると、目の前にA4サイズのステータス画面が現れた。

 【三ツ塚由紀(みつづかゆき)】 

 16歳 (♀) 状態異常ナシ
 ジョブ(職業) 『肝っ玉母ちゃん……』
 体力   328
 魔力   364
 かしこさ 200
 魔法適正  生活魔法
 スキル(特殊技能)
 料理(Level 3) 掃除(Level 2) 洗濯(Level 3) 解体(Level 2)  異世界言語(Level 2) 
生活魔法(Max)
new! 肝っ玉母ちゃん魔法!(Level 1)
 
 相変わらずジョブスキルは『肝っ玉母ちゃん……』だけど、その下の方にnew!と書かれた一文があった。
 
「なにこれ?『肝っ玉母ちゃん魔法』って何なのよ!?」

 自分のジョブスキルのはずなのに、全く持って意味がわからない。

「どうせならこう、説明機能とかないわけ?」

 ブツブツと文句を言いながら、画面を見ながらズルズル星夜を引きずってズシズシと廊下を歩いていく。

 由紀の愚痴に反応したのかピコンと音がなり、肝っ玉母ちゃん魔法に紐づけされていたらしい項目が目の前に映し出される。
 
「うわっ、なんか出た!」
 
new! 肝っ玉母ちゃん魔法!(Level 1)
・肝っ玉母ちゃんの子守唄(ララバイ)
 現在値マイナス74
・肝っ玉母ちゃんの火事場の馬鹿力

 他、条件未達成につき非表示
  
「なによマイナス74って!」

 色々ツッコミどころ満載だけれど、とりあえず星夜を引き摺って歩ける理由はわかった気がする。

 二つ目の肝っ玉母ちゃんの火事場の馬鹿力ってやつだこれ。

「なになに? 肝っ玉母ちゃんの子守唄(ララバイ)は歌い手の歌唱力により効果が異なります……」

 これはなにか、由紀の歌唱力がマイナス74だって言いたいのかな?

 ステータス画面の癖に失礼すぎない?

 ブツブツと文句を言いながら歩き回り気がつけば、由紀と奏音が生活している部屋へと戻ってきた。

「ただい……」
  
「おねぇちゃーん!」

「うぉ!?」

 部屋の扉を開けるなり、お腹に突撃してきた奏音を受け止め切れずに星夜ごとひっくり返った。
 
「大丈夫ですか!?」  

 慌てた様子でディートヘルムが駆け寄ってきて、由紀の膝の上で甘えるように頭を胸にぐりぐりと押し付けている奏音を抱き上げようと、手を伸ばした。

 しかし由紀の寝間着を震える手で、しっかりと握りしめているため、全くビクトもしない。

「かなちゃんただいまぁ~もう大丈夫だよ?」

 まだ小さなその身体を抱きしめて、背中をポンポンとあやすようにリズムを取りながら優しく叩く。

 赤ちゃんの頃からグズった時のいつものリズムであやしたからか、はたまた夜中に驚いて飛び起きたせいか、由紀が戻ってきた事で安心したのかすぐに腕の中で寝息を立て始めた。

「ディートヘルムさん、すみません奏音をお願いできますか? このままだと動けなくて……」

「あぁ」

 私のお願いにディートヘルムが眠ったままの奏音を抱き上げて、ベッドへ横たえた。

「ありがとうございます、よっ!っとこしょ!」
 
 なんとか体勢を直して意識的に肝っ玉母ちゃん魔法を発動すれば、星夜を背負ったまま立ち上がれた。

 そのまま星夜を続き部屋となっている従者用の小さな寝室へと連れていき、ベッドへと寝かせ上掛けをしっかりと掛けた。

 そのまま部屋を締め切りとりあえず星夜を隔離することに成功した。

「ふぅ~、これでひとまず安心かな?」

 これからを考えると気は重いけれど、こうなってしまったものは仕方ないか。

 星夜の暴走を止められただけ良しとしよう!
 
「ユキ殿……」
 
             
   
 
   
    
  
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