46 / 65
45
しおりを挟む
口に温かいものが触れる。乾いた体に魔力が染み込んでいき、私の身体を巡るのが分かる。
生きてる。
細胞が少しずつ動き出す。
だけど、この魔力は違う。
私が欲しい物じゃ無い。これは嫌だ。
私が欲しいのは
「リ、オネット、さ、ま」
呻く程度の声しか出せないけれど、私は彼を呼んだ。
苦しい。
どこ?
「……カリン」
彼の声が聞こえて、私はようやく安心して眠りに落ちた。
――――――――――――――――――――――――――
「いつまで寝とんねん!起き起きぃー!」
雨情の聞き慣れた声で私は飛び起きた。ら、痛い!物凄く痛い!しかも全身!全身全霊をかけての激痛!
「い、いたたたたっ!」
「嘘やん。ほんまに起きた」
どうゆう事?てゆーか何呑気な声で?!っと声のする方を見たら、雨情が笑っていた。左目には眼帯をして。
「雨情!目!」
「おう、命は取られへんだで!ラッキー!」
「その目、まさか」
「カリンのせいちゃうし、気にしたらあかん。ほんまギリ危ない所でリオネット様達に助けてもろてん」
「私のせいじゃない、訳ない、でしょ……?」
「と思うやろ、ちゃうねんで。エイス、俺の事ちょろっと切った後、残った奴らに拷問しろって命令してからカリン追っかけにいきよってん。ほんで、残った三下がナイフ顔に突きつけて来よったから、隙つくったろー、びびらしたろー思って目に自分で刺したってん。目からナイフがびよーんって出てるとこにリオネット様ご登場!あほやん自分!みたいな」
笑い話にしてしまおうと雨情がすればするほど、取り返しがつかない事をさせてしまった真実味が増す。雨情は私に何かを背負わすことを極端に嫌う性だ。
「それよか、全身痛いやろ?横になっとれ。今リオネット様呼んでくるし」
言われてから周りを見ると、マンチェスターの方の城に帰って来たのだと気がついた。私は長く眠っていたの?
「ご気分はいかがですか?」
現れたリオネット様は不自然なくらい爽やかにこやかな笑顔だった。でも、視線は合わず、目の色が深く暗い。
「リオネット様。ごめんなさい」
「何故、謝るのですか」
目を合わせないまま、彼はベッドの側の椅子に腰掛けた。
「だってリオネット様にそんな顔をさせてしまったので」
「本当に貴女は私の事をよく見ている」
ようやく目が合うと、彼は酷く切なげだった。一旦、彼の口は開かれ、そして閉じる。小さく息を吐いてリオネット様はわたしを抱きしめた。
「……3日も意識が戻らなかった。生きた心地がしませんでした」
「心配かけてごめんなさい」
「許しませんよ。貴女が二度と私と離れる事は認めません」
優しいキスには魔力が乗っている。何となく、雨情に起こされる直前までリオネット様に魔力をもらっていたのだと感じる。
「あ、アンズは?」
「眠っています。貴女の影の中で、魔力をすべて貴女に注ぐために」
今度は強く吸われた。甘くて激しくて、戸惑ってしまう。
「カリンの意識の中が私だけで埋め尽くされれば良いのに」
「リオネット、さま?」
「……すみません。嫉妬です。私は相当に嫉妬深いのだと、貴女に教えてもらいました」
酷く心配をかけてしまったのは間違いない。私はリオネット様のキスを受け入れた。
「……貴女はまだ消耗が激しい。すみません無理をさせる所でした」
「平気です。それだけリオネット様が私の事を大切に思ってくださってるという事ですから」
「人がせっかく自重しようと努力している所を背中から打つ様な事はしないでほしい物ですね」
「はい?」
「その笑顔は、今の私には毒です」
リオネット様はそう言って私から離れた。彼は、私が伏せっていたからと言う以外で何かとても不安定になっている様に思えた。
「貴女はまだ回復しきっておりません。なので、回復系以外の加護を一時的に弱めています。しばらくアッシャーとナルニッサには会わない方がいいでしょう」
「何故ですか?」
「……ナルニッサは色香というスキルがあり、アッシャーもその耐性をつける訓練をした時に弱いながら色香のスキルが付きました。私は嗜好に偏りがあるので2人の色香はほぼ無効ですが、今のカリンには刺激が強すぎる」
「……あの、アッシャーの様子は?」
「表面上に変わりはありませんが、じきに峠を越えそうです。自力で乗り越えられるまで、もう少し」
「分かりました。私も信じて待ちます」
リオネット様がそう仰るなら大丈夫だろう。
祈る事しか出来なくて、弟としての至らなさが悔しいけれど。
「そうだ。雨情を助けてくださってありがとうございました。彼はの目は?」
リオネット様は首をゆっくりと振った。
目に刺したと言っていたのだから、やはり無理か。
「他に怪我は?」
「……擦り傷程度です。目も化膿はしていません。脳と繋がっているので、菌毒が一番危険でしたが、それも防いだ」
「ありがとう、ございます」
「それに、本人もやる気があるようなので魔具の義眼を準備しています。手術は必要ですが、目は見えるようになるでしょう」
「ほんと、ですか?」
「ええ」
「ありがとうございます!」
痛みを忘れて、リオネット様に抱きついた。
「貴女にあの者への負い目を感じさせる訳にはいきませんので」
「リオネット様」
「カリンを助けてもらった恩は、私が返します」
「リオネット様っ」
「そんなに強く抱きつくと、貴女の腕が傷む……、カリン、雨情とは何もありませんね?」
「何もって何ですか?」
「男女の話です。少し彼はカリンに親切すぎると言う気がして」
目が点になる。よりによっての、雨情。
「無いです。無い無い。雨情は自分から行くタイプじゃないですし、そっち方面にトラウマもあるし……、相手の性別種族を超えてどがつくお人好しな感じですね」
「お人好し……」
「女性に3回騙されてるので、慎重なんです。でも義理人情に厚いので子供はほっとけないって」
「そうですか」
リオネット様の目が少し柔らかくなってきた。2ヶ月の間の出来事を埋めたいと感じる。
「そういえばナルさんはお変わりありませんか?」
その名前を私が出した途端、リオネット様は席を立った。
「流石に話過ぎました。まだ、貴女は寝てなくてはならない。失礼します」
「え?」
本当に唐突に出て行ってしまった。
ナルさんと喧嘩でもしてしまったのだろうか?
生きてる。
細胞が少しずつ動き出す。
だけど、この魔力は違う。
私が欲しい物じゃ無い。これは嫌だ。
私が欲しいのは
「リ、オネット、さ、ま」
呻く程度の声しか出せないけれど、私は彼を呼んだ。
苦しい。
どこ?
「……カリン」
彼の声が聞こえて、私はようやく安心して眠りに落ちた。
――――――――――――――――――――――――――
「いつまで寝とんねん!起き起きぃー!」
雨情の聞き慣れた声で私は飛び起きた。ら、痛い!物凄く痛い!しかも全身!全身全霊をかけての激痛!
「い、いたたたたっ!」
「嘘やん。ほんまに起きた」
どうゆう事?てゆーか何呑気な声で?!っと声のする方を見たら、雨情が笑っていた。左目には眼帯をして。
「雨情!目!」
「おう、命は取られへんだで!ラッキー!」
「その目、まさか」
「カリンのせいちゃうし、気にしたらあかん。ほんまギリ危ない所でリオネット様達に助けてもろてん」
「私のせいじゃない、訳ない、でしょ……?」
「と思うやろ、ちゃうねんで。エイス、俺の事ちょろっと切った後、残った奴らに拷問しろって命令してからカリン追っかけにいきよってん。ほんで、残った三下がナイフ顔に突きつけて来よったから、隙つくったろー、びびらしたろー思って目に自分で刺したってん。目からナイフがびよーんって出てるとこにリオネット様ご登場!あほやん自分!みたいな」
笑い話にしてしまおうと雨情がすればするほど、取り返しがつかない事をさせてしまった真実味が増す。雨情は私に何かを背負わすことを極端に嫌う性だ。
「それよか、全身痛いやろ?横になっとれ。今リオネット様呼んでくるし」
言われてから周りを見ると、マンチェスターの方の城に帰って来たのだと気がついた。私は長く眠っていたの?
「ご気分はいかがですか?」
現れたリオネット様は不自然なくらい爽やかにこやかな笑顔だった。でも、視線は合わず、目の色が深く暗い。
「リオネット様。ごめんなさい」
「何故、謝るのですか」
目を合わせないまま、彼はベッドの側の椅子に腰掛けた。
「だってリオネット様にそんな顔をさせてしまったので」
「本当に貴女は私の事をよく見ている」
ようやく目が合うと、彼は酷く切なげだった。一旦、彼の口は開かれ、そして閉じる。小さく息を吐いてリオネット様はわたしを抱きしめた。
「……3日も意識が戻らなかった。生きた心地がしませんでした」
「心配かけてごめんなさい」
「許しませんよ。貴女が二度と私と離れる事は認めません」
優しいキスには魔力が乗っている。何となく、雨情に起こされる直前までリオネット様に魔力をもらっていたのだと感じる。
「あ、アンズは?」
「眠っています。貴女の影の中で、魔力をすべて貴女に注ぐために」
今度は強く吸われた。甘くて激しくて、戸惑ってしまう。
「カリンの意識の中が私だけで埋め尽くされれば良いのに」
「リオネット、さま?」
「……すみません。嫉妬です。私は相当に嫉妬深いのだと、貴女に教えてもらいました」
酷く心配をかけてしまったのは間違いない。私はリオネット様のキスを受け入れた。
「……貴女はまだ消耗が激しい。すみません無理をさせる所でした」
「平気です。それだけリオネット様が私の事を大切に思ってくださってるという事ですから」
「人がせっかく自重しようと努力している所を背中から打つ様な事はしないでほしい物ですね」
「はい?」
「その笑顔は、今の私には毒です」
リオネット様はそう言って私から離れた。彼は、私が伏せっていたからと言う以外で何かとても不安定になっている様に思えた。
「貴女はまだ回復しきっておりません。なので、回復系以外の加護を一時的に弱めています。しばらくアッシャーとナルニッサには会わない方がいいでしょう」
「何故ですか?」
「……ナルニッサは色香というスキルがあり、アッシャーもその耐性をつける訓練をした時に弱いながら色香のスキルが付きました。私は嗜好に偏りがあるので2人の色香はほぼ無効ですが、今のカリンには刺激が強すぎる」
「……あの、アッシャーの様子は?」
「表面上に変わりはありませんが、じきに峠を越えそうです。自力で乗り越えられるまで、もう少し」
「分かりました。私も信じて待ちます」
リオネット様がそう仰るなら大丈夫だろう。
祈る事しか出来なくて、弟としての至らなさが悔しいけれど。
「そうだ。雨情を助けてくださってありがとうございました。彼はの目は?」
リオネット様は首をゆっくりと振った。
目に刺したと言っていたのだから、やはり無理か。
「他に怪我は?」
「……擦り傷程度です。目も化膿はしていません。脳と繋がっているので、菌毒が一番危険でしたが、それも防いだ」
「ありがとう、ございます」
「それに、本人もやる気があるようなので魔具の義眼を準備しています。手術は必要ですが、目は見えるようになるでしょう」
「ほんと、ですか?」
「ええ」
「ありがとうございます!」
痛みを忘れて、リオネット様に抱きついた。
「貴女にあの者への負い目を感じさせる訳にはいきませんので」
「リオネット様」
「カリンを助けてもらった恩は、私が返します」
「リオネット様っ」
「そんなに強く抱きつくと、貴女の腕が傷む……、カリン、雨情とは何もありませんね?」
「何もって何ですか?」
「男女の話です。少し彼はカリンに親切すぎると言う気がして」
目が点になる。よりによっての、雨情。
「無いです。無い無い。雨情は自分から行くタイプじゃないですし、そっち方面にトラウマもあるし……、相手の性別種族を超えてどがつくお人好しな感じですね」
「お人好し……」
「女性に3回騙されてるので、慎重なんです。でも義理人情に厚いので子供はほっとけないって」
「そうですか」
リオネット様の目が少し柔らかくなってきた。2ヶ月の間の出来事を埋めたいと感じる。
「そういえばナルさんはお変わりありませんか?」
その名前を私が出した途端、リオネット様は席を立った。
「流石に話過ぎました。まだ、貴女は寝てなくてはならない。失礼します」
「え?」
本当に唐突に出て行ってしまった。
ナルさんと喧嘩でもしてしまったのだろうか?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる