二回目の異世界では見た目で勇者判定くらいました。ところで私は女です。逆ハー状態なのに獣に落とされた話。

吉瀬

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「アンズ!大丈夫?」
「う、うん、平気……」

 と言いながら、アンズは目も合わせない。

「身体に害が出る類の物では無い。心配するな」

 そんな事言っても。

「大丈夫、ちょっと頭パンパンなだけ」

 私の想いで?それってどんなだ?
 混乱する私を見てアンズはニコッと笑った。

「カリンが僕の事好きなのが伝わってきただけだよ。だから、心配しないで」

 不自然な笑顔だけど、それ以上は聞いても教えてもらえなさそうだった。

 ヤキモキしながらも作業は進む。次は転送を行う結界の解除だ。それは五芒星になっていて、同時に押さなくてはならず、思いがけず私も役にたてた。

「これ、な。クラリス女王陛下の印や。陛下か遠隔操作しとる証拠」

 解除した装置には独特の模様が彫ってあって、それは確かに召喚の間で見た事があったと思う。

「西の、森にもあったと思う。私が飛ばされた時の。目立つ印だし、あの時私は確かに見たのに気に留めてなかった」
「加護の力だの、仕方無し」

 索冥にフォローしてもらったが、私は唇を噛んで、兄様達が危ないものは無効化するのを眺めていた。
 どうやら、証拠のために一部は持ち帰るらしい。

「結構簡単だったね。兄様がすごいのかもだけど」
「アホ抜かせ、まだまだやぞ?」
「え?」
「広大な土地だ。まだあの規模の物がある方が道理だろう」

 あれが、沢山?

 見回しても辺りは全て砂。

「さて、次は何時間飛ぶのかの?」

 索冥の言葉に背中に汗をかいた。

 結局一週間ほどを全ての解除と往復に要した。アンズはあれから少しぎこちないけど、大きな問題も無く過ごしている。
 小狐スタイルでのハグはあるし、時々「カリン好き」とか言い出したりして、多少不安定ではありそうに思えて心配にはなるけど、SOSが出てないなら少しは放っておいた方が良いかも、と思う様にした。

 雨情の言う通り、私は未熟だ。アンズの全てを心配して手や足を出すのもアンズのために良くない。
 そのためには焦らず時間が必要なのかもしれない、と思うようになれた。やっぱり、周りに恵まれていて……、甘えてる。

 森に戻ると、リオネット様達は出ていった後だった。モフモフにまみれた真面目な顔のナルさんに報告によると……

 私達が出た後、リオネット様は瑞獣の子供を一時的な使令にして、魔力を高めたそうだ。
 街で異変が起きたのは、それから間も無く。ロイヤルグレイスのあちこちで、一斉に怨嗟が発露し、それを皮切りに国の東の領地は怨嗟が伝染していったらしい。

「何故そんな?」
「女王が我々の裏切りに気が付いたようです。それで各地域に置いた怨嗟を取り除く装置を外させた。女王はあの装置が怨嗟を払うのではなく、弾いて他の地域に飛ばす物だと公表しました。ロイヤルグレイス領での貴族の求心力も落ちたのも後押しになった様です」
「ひどい。そんな、弾いて他の地域に飛ばすなんて嘘……」
「それが嘘では無い当たりが、リオネットの恐ろしきところよの」

 マジですか。

「飛ばし先は白魔道士のいる王都の貴族街にしてたそうです。消し去るには魔力が多く必要で、国中に設置するのは物理的に無理だったと」
「ほんまかいな」

 雨情の突っ込みに心から同意したい。

「ともかく、ロイヤルグレイス公は女王命で装置を取り払いました。あれは我々が設置した事をロイヤルグレイスの民は知っています。それを取り除いたら怨嗟が広がった。そして、事前に渡した怨嗟を取り除く機械も尽きつつありました。……それを今リオネットは救いに行っております」

 ここまで見越してロイヤルグレイスの人達に尽くしてたなんて、もう完全に悪役にしか思えない。

「私達は?」
「今戻った事はリオネットに伝えました。後は指示を待ちましょう」

 程なくしてロイヤルグレイス城が落ちた事が使令を介して知らされた。公は旗色が悪くなると早々に王都へ逃げ出したらしい。
 すぐにマンチェスターから怨嗟を弾く装置は運び入れられ、再設置。それによりロイヤルグレイス以外の東の地域の状況は悪化。
 1人が力を求めて怨嗟が発露すれば、それへの恐れにより周りも次々と怨嗟が波及して行く地獄と化す。リオネット様は足元を固めつつ、各地の怨嗟を払った。現れるときは十数匹に瑞獣を引き連れ空から舞い降り、神々しく怨嗟を払う。
 元々女王、貴族などを神々しいと言う理由で敬っていた者達は、実際に見て触れたリオネット様に宗旨を鞍替え。リオネット様自身が人を傷つけられない白魔道士と言うこともあり、「女王陛下に直訴しようとしたら敵と見なされ面会もできない。女陛下と話をしたいだけなんです」と言う言葉に転がされた諸侯もいたようだ。

 遠い森の中で聞く使令による報告は常軌を逸している。

「北は……マンチェスターとサンダーランドの影響が大きいから装置が外されたりし無いのはわかる。でもなぜ東だけこんななの?怨嗟の発露の被害は東に比べると西はずいぶん少ない……」

「それな、魔石ハンターと異世界人の情報網のせいやで」
「どういう事?」
「アレがどんなもんかは、俺から情報回してあんねん。西の者からしたら、弾いて貴族街に落としてるは理に叶っとるやん、でしまいや。ついでに俺の目で見た南の記録もそいつらに流した。西では貴族はお飾りや。街のもんは魔具をそこそこ使使つこてるし、貴族は単なるお金持ってる阿呆みたいなもんや。上の役人もどっちが強いか知っとる。そこに『魔王の寝ぐらに突撃してみた件。魔王はいませんでした。代わりにあったのはまさか女王陛下の?』の映像が広まっとるはず。大規模な魔法陣は誰が作ったか判るヒントがいっぱいやねん。もちろん、それでも女王の命令でなんぼかは装置外されとるけど、外した所にもっかい設置できるようにマンチェスターから装置は融通してもらえる」

 そんな事までやってたの?

「もちろん、リオネット様の指示やで」
「でしょうね」

 何が怖いってリオネット様が怖い。

「明日、ロイヤルグレイス城まで来てください。みんなで女王陛下に謁見しましょう」

 その使令は夜遅くにやってきた。
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