Grow 〜異世界群像成長譚〜

おっさん。

文字の大きさ
42 / 132
ダメ!それは私の!

第41話 メグルと頼れるお兄ちゃん

しおりを挟む
 …いた。シバだ。

 今日は遅くなると言って家を出てきた僕には、こんな昼間から家に帰る度胸はなかった。
 その為、シバの残した魔力を見つけた時には良い暇つぶしになると思ったのだ。

 しかし、魔力痕まりょくこん辿たどっていけば簡単にシバを見つける事ができた為、拍子ひょうし抜けした。
 いつもならば僕の追跡に気づいて追いかけっこが始まるのに…。

 まぁいい。シバが油断している事などそうそうないのだ。
 このまま驚かしてやろう。

 僕はシバに飛びついた。
 避けられる事は織り込み済みなので、いつでも受け身を取れる準備はしておく。

 「え?」

 しかし、避けられると思ったその抱擁は予想に反して成功してしまった。
 驚いたシバは抱き着いた僕を背中に乗せたまま、その場に崩れ落ちてしまう。

「…えっと…ごめん。大丈夫だった?」

 あまりに間抜けなこの状況に気まずくなって謝ってしまう。

 シバはこちらをジト目でにらむと、不服そうに「ワゥ」と鳴いた。
 僕はゆっくりとシバの上から身を起こす。

「どうしたの。ぼーっとして。らしくないよ?」
 僕はシバの見つめていた方向に目を向ける。
 そこには濃厚で特徴的な香りの魔力が漂っていた。
 これはシバの物ではないだろう。

「これなに?」

 シバに問いかけるが首を振られた。
 …しかし目を合わそうとしない所、本当に知らないのかは怪しい。

 しかし、聞いたところで答えてはくれないだろう。
 魔力の香り自体が濃厚なのであって、量はそれほどでもない。
 魔力の才能を持った初心者と言った所か。

 多分、シバの仲間か何かなのだろう。
 僕はシバが秘密裏に他の群れに接触している事は知っている。

 ただその殆どは獲物を狩れないような弱い群れなのだ。
 詰る所、シバは施しを与えているのである。

 この殺すか殺されるかの世界で、相手を助ける事がどれほど尊い事か。

 そしてシバはそんな自己犠牲で満足するような奴ではない。
 狩りも教えているし、今回に至っては魔法の訓練でもしていたのではないだろうか?
 そう考えれば納得いく。

 きっと僕から教わった魔法を勝手に教えていた事が後ろめたかったのだろう。
 それならば言及しないというのが、師である僕のとるべき行動だ。

「そうだ、シバ。今日は相談があってきたんだよ。少し話聞いてくれる?」
 シバは面倒くさそうな表情をしながらもその場に伏せた。
 素直じゃない奴だ。

 僕はシバの体にそっとよりかかると口を開いた。

「今日村で母さんに似た女の子を見つけたんだ。あ、似ていると言っても雰囲気の話で、女の子は僕と同じぐらいの歳の子なんだけどね」
 シバは相槌あいづちを打つわけでもなく、遠くを見ていた。

 ただ、耳がこちらに向いてぴくぴくと動いているので、聞いてくれてはいるのだろう。
 視線を感じない分、僕は独り言のように気軽に話すことができた。

「その女の子を見るとね…。こう…。ドキドキしちゃうんだ。雰囲気は母さんに似ているし、僕が見栄を張っちゃうのも同じなんだけどね…。なんでだろ?」
 僕は首を傾けシバの顔を見つめる。
 シバは暫く遠くを見続けた後、呆れて様に溜息を吐いて、前足を動かした。
 いつも通り地面に爪で文字を書いてくれるらしい。

『それは、好きだから。好きだから好かれたい。好きだから嫌われたくない』
 …確かにそうだ。

 でも、それだとドキドキする理由にはならない。
 現に母さんには安心感を覚えるのに、あの子の前だと頭がぐちゃぐちゃになる。

 その事を端的たんてきにシバに伝える。
 すると、シバは暫く考えるようにして、再び前足を動かした。

『母さんは家族。良く知っている、信頼もできる。だから安心。その子は他人。何も知らない。裏切るかもしれない。だから不安』
 …成程。納得がいった。

 確かに母さんは大抵の事では僕を嫌わない。
 離れて行かないと、心の底から言える。
 だから見栄を張って失敗したって別に怖くはないのだ。

 でも、あの子の事は分からない。
 僕を好きになってもらいたいが、変な事をして失敗したら嫌われてしまうかもしれない。
 何もしなくても離れて行ってしまうかもしれない。
 そう言う事が不安なのだ。

「流石シバだね!頼れる僕のお兄ちゃんだ!」
 僕がわざとらしくシバに抱き着く。
 するとシバは面倒くさそうな表情をして顔を逸らした。

 僕はその左右に揺れる尻尾を見て、クスリと笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...