123 / 172
崩壊
第122話
しおりを挟む
「じゃあ、この問題は……。クリア」
問題を書き上げたルリ様が、回答者にクリアを指名する。
「36、です」
クリアは初めに教えられた通り、指名されると、その場で立ち上がって、問題に回答した。
クリアは、ルリ様達の持つ、知識だけは持ち合わせている様なので、簡単な問題なら、即座に正解を導き出す事が出来るらしい。
「流石、クリア!正解だ!」
ルリ様は、問題に正解したクリアを撫でる。
問題に正解できると言うのは、当然の結果なのだが、ルリ様は皆と同じ事をやらせ、同じように褒める事で、感情を戻そうと試みているらしい。
しかし、まだその効果は表れていないのか、クリアの顔は相変わらず無表情。
その瞳からは、一切の感情を垣間見る事は出来ず、撫でられている間も、されるがまま。
まるで、人形の様だった。
「んじゃ……。次は、この問題だ。ゴブリン」
「ンヴゥ……」
ゴブリンは木の板に白い石で数字を書くと、それをルリに見えるように掲げた。
「おぉ!正解だ!お前も、すごいな!」
純粋にゴブリンの成長を喜ぶルリ様。
その喜び加減は、クリアに見せた物と大差ない様に見える。
何も知らないゴブリンも、嬉しそうだった。
本人がそう見える様にしていると言ってこなければ、私でも、気に留めは、しなかっただろう。
入れ物の成長としてではなく、実は、本当に、クリアの成長を喜んでいるのではないかと言う、淡い期待が胸を掠める。
そうなれば、ルリ様が正気に戻りかけていると言う事だ。
……でも、それは、同時に、ルリ様を苦しめる結果にもなる。
何故ならば、お嬢様を復活させるためには、クリアを育て、入れ物として使う外、ないからだ。
消えてしまった、お嬢様を取るか。今を生きるクリアを取るか。
そんな辛い選択をするぐらいなら、壊れたままでいるのも、ルリ様の為なのかもしれない。
「んじゃ、次、コグモな」
「は、はい!」
ルリ様の黒い板を見ていなかった私は、急いで立ち上がると、問題を読む。
「56……ですか?」
自身の板で、視界の下半分を隠しつつ、伺うように答える私。
「……正解だ。……では、次の問題に移る」
その答えに、私は、ホッと安堵の息を吐く。
……それにしても、私の正解の時だけ、対応がドライではないだろうか?
別に良いのだが、なんか、こう……。もやもやする。
「……ん?どうしたんだ?コグモ」
私の視線に気が付いたのか、不思議そうに質問してくるルリ様。
「別に……。何でもないです」
私は、もやもやを抑え込むと、その場にしゃがんだ。
しかし、他の子が褒められる度に、そのもやもやは大きくなる。
結局、今日の座学には、あまり集中できなかった事は勿論、その他の考え事も、気付いた頃には頭から消えてなくなっていた。
問題を書き上げたルリ様が、回答者にクリアを指名する。
「36、です」
クリアは初めに教えられた通り、指名されると、その場で立ち上がって、問題に回答した。
クリアは、ルリ様達の持つ、知識だけは持ち合わせている様なので、簡単な問題なら、即座に正解を導き出す事が出来るらしい。
「流石、クリア!正解だ!」
ルリ様は、問題に正解したクリアを撫でる。
問題に正解できると言うのは、当然の結果なのだが、ルリ様は皆と同じ事をやらせ、同じように褒める事で、感情を戻そうと試みているらしい。
しかし、まだその効果は表れていないのか、クリアの顔は相変わらず無表情。
その瞳からは、一切の感情を垣間見る事は出来ず、撫でられている間も、されるがまま。
まるで、人形の様だった。
「んじゃ……。次は、この問題だ。ゴブリン」
「ンヴゥ……」
ゴブリンは木の板に白い石で数字を書くと、それをルリに見えるように掲げた。
「おぉ!正解だ!お前も、すごいな!」
純粋にゴブリンの成長を喜ぶルリ様。
その喜び加減は、クリアに見せた物と大差ない様に見える。
何も知らないゴブリンも、嬉しそうだった。
本人がそう見える様にしていると言ってこなければ、私でも、気に留めは、しなかっただろう。
入れ物の成長としてではなく、実は、本当に、クリアの成長を喜んでいるのではないかと言う、淡い期待が胸を掠める。
そうなれば、ルリ様が正気に戻りかけていると言う事だ。
……でも、それは、同時に、ルリ様を苦しめる結果にもなる。
何故ならば、お嬢様を復活させるためには、クリアを育て、入れ物として使う外、ないからだ。
消えてしまった、お嬢様を取るか。今を生きるクリアを取るか。
そんな辛い選択をするぐらいなら、壊れたままでいるのも、ルリ様の為なのかもしれない。
「んじゃ、次、コグモな」
「は、はい!」
ルリ様の黒い板を見ていなかった私は、急いで立ち上がると、問題を読む。
「56……ですか?」
自身の板で、視界の下半分を隠しつつ、伺うように答える私。
「……正解だ。……では、次の問題に移る」
その答えに、私は、ホッと安堵の息を吐く。
……それにしても、私の正解の時だけ、対応がドライではないだろうか?
別に良いのだが、なんか、こう……。もやもやする。
「……ん?どうしたんだ?コグモ」
私の視線に気が付いたのか、不思議そうに質問してくるルリ様。
「別に……。何でもないです」
私は、もやもやを抑え込むと、その場にしゃがんだ。
しかし、他の子が褒められる度に、そのもやもやは大きくなる。
結局、今日の座学には、あまり集中できなかった事は勿論、その他の考え事も、気付いた頃には頭から消えてなくなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる