異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

文字の大きさ
129 / 172
崩壊

第128話

しおりを挟む
 「狩りの時は、こうやって、木の上からだな……」
 クリアに狩りの基本を教えながら、私達の頭上の木を移動していく、ルリ様。
 クリアはその言葉にコクコクと頷きながら、その後を付いて行く。
 ルリ様を信頼しているのか、それしか方法を知らないのか……。
 
 私はゴブリンさんの肩の上に乗りながら、ウサギさんと一緒にその後を、ゆっくりと追っていた。
 
 「……今日はコトリの監視が無かったんですか?」
 沈黙が嫌で、ウサギさんに話しかける私。

 本当はルリ様やクリアについての意見を貰いたかったのだが、空気が重くなりそうなうえに、ゴブリンさんや、当の二人に聞かれても、気まずい為、適当な話題を振った。
 
 「そうなんッスよね。いつも、ご主人とリミア、じゃなかった、クリアを監視してるはずなんッスけど、今日は姿が見えなかったッス」
 頭の後ろで腕を組みながら「何かあったんッスかね?」と、興味なさげに呟くウサギさん。

 興味が無いと言うよりは、あいつなら大丈夫だろう。と言う信頼から来る余裕なのかもしれない。
 ……まぁ、実際に興味が無いと言う線も考えられるが……。
 
 「そうですか。それは、心配ですね」
 正直、私も、そこまで事態を深刻には捉えていなかった。
 まぁ、精々、食事や休憩に席を外しただけだろう。
 仮に何かあっても、お嬢様を除けば、戦闘力として、ずば抜けて最強なコトリなら、なんとかできる気がした。
 
 「……あ、獲物を見つけた様です」
 ルリ様から糸を通して発せられた信号を、ウサギさんに伝え、その場で足を止める。

 木の上を見上げてみれば、ルリ様とクリアが二人で、遠くの一点を見下ろしていた。
 きっと、あの視線の先に標的がいるのだろう。
 
 「便利ッスよね。その糸。何でご主人はボクに繋げてくれないんッスかね?」
 私は試しに、糸を通してルリ様に聞いてみる。
 
 「……なんか気持ち悪いから。らしいです」
 私がストレートにルリ様からの返答を伝えると、ウサギさんは「なんスかそれ……」と言って、項垂れた。
 
 「……ルリ様って、ウサギさんに対しては、いつも素直ですよね」
 感謝なども含め、感じた事を率直に伝えるルリ様。
 これ程、気を遣わずに、思いを相手に伝えるなんて、ルリ様はウサギさんの事を、相当信頼しているに違いない。
 少なくとも、私を信頼する以上には……。

 「扱いがぞんざいなだけッスよ。まぁ、ボクもその方が気が楽で良いッスけどね」
 溜息を吐きながら、諦めた様に呟くウサギさん。
 
 何を言われても、余裕そうに見える態度……。
 ハッ!これが、男同士の友情と言う奴なのだろうか?!
 
 お嬢様から、男同士の友情から愛へ発展する話を何度か聞いた事がある。
 
 よく見れば、ウサギさんは美人さんに見える上に、自由奔放に見え、ムードメーカーでありながらも、ちゃんと筋は通す、良い人だ。
 加えて、ルリ様が心を許しているとなれば……。

 もし、ウサギさんがライバルになれば、かなりの強敵かも知れない。
 
 「……?どうしたッスか?」
 警戒する私の心を見抜いたのか、小首を傾げるウサギさん。
 大人びた体型から繰り出される、子どもの様な動作は、その落差から、一段と可愛らしく見えた。
 
 「い、いえ……。何でもありません……。あ!ルリ様達が行ってしまいますよ!」
 私は話をはぐらかすと、森の奥へ消えたルリ様達の後を追う。

 私はただ、お嬢様から聞いた物語の人物の様に、二人の間に愛が芽生えない事を祈るばかりだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...