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崩壊
第128話
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「狩りの時は、こうやって、木の上からだな……」
クリアに狩りの基本を教えながら、私達の頭上の木を移動していく、ルリ様。
クリアはその言葉にコクコクと頷きながら、その後を付いて行く。
ルリ様を信頼しているのか、それしか方法を知らないのか……。
私はゴブリンさんの肩の上に乗りながら、ウサギさんと一緒にその後を、ゆっくりと追っていた。
「……今日はコトリの監視が無かったんですか?」
沈黙が嫌で、ウサギさんに話しかける私。
本当はルリ様やクリアについての意見を貰いたかったのだが、空気が重くなりそうなうえに、ゴブリンさんや、当の二人に聞かれても、気まずい為、適当な話題を振った。
「そうなんッスよね。いつも、ご主人とリミア、じゃなかった、クリアを監視してるはずなんッスけど、今日は姿が見えなかったッス」
頭の後ろで腕を組みながら「何かあったんッスかね?」と、興味なさげに呟くウサギさん。
興味が無いと言うよりは、あいつなら大丈夫だろう。と言う信頼から来る余裕なのかもしれない。
……まぁ、実際に興味が無いと言う線も考えられるが……。
「そうですか。それは、心配ですね」
正直、私も、そこまで事態を深刻には捉えていなかった。
まぁ、精々、食事や休憩に席を外しただけだろう。
仮に何かあっても、お嬢様を除けば、戦闘力として、ずば抜けて最強なコトリなら、なんとかできる気がした。
「……あ、獲物を見つけた様です」
ルリ様から糸を通して発せられた信号を、ウサギさんに伝え、その場で足を止める。
木の上を見上げてみれば、ルリ様とクリアが二人で、遠くの一点を見下ろしていた。
きっと、あの視線の先に標的がいるのだろう。
「便利ッスよね。その糸。何でご主人はボクに繋げてくれないんッスかね?」
私は試しに、糸を通してルリ様に聞いてみる。
「……なんか気持ち悪いから。らしいです」
私がストレートにルリ様からの返答を伝えると、ウサギさんは「なんスかそれ……」と言って、項垂れた。
「……ルリ様って、ウサギさんに対しては、いつも素直ですよね」
感謝なども含め、感じた事を率直に伝えるルリ様。
これ程、気を遣わずに、思いを相手に伝えるなんて、ルリ様はウサギさんの事を、相当信頼しているに違いない。
少なくとも、私を信頼する以上には……。
「扱いがぞんざいなだけッスよ。まぁ、ボクもその方が気が楽で良いッスけどね」
溜息を吐きながら、諦めた様に呟くウサギさん。
何を言われても、余裕そうに見える態度……。
ハッ!これが、男同士の友情と言う奴なのだろうか?!
お嬢様から、男同士の友情から愛へ発展する話を何度か聞いた事がある。
よく見れば、ウサギさんは美人さんに見える上に、自由奔放に見え、ムードメーカーでありながらも、ちゃんと筋は通す、良い人だ。
加えて、ルリ様が心を許しているとなれば……。
もし、ウサギさんがライバルになれば、かなりの強敵かも知れない。
「……?どうしたッスか?」
警戒する私の心を見抜いたのか、小首を傾げるウサギさん。
大人びた体型から繰り出される、子どもの様な動作は、その落差から、一段と可愛らしく見えた。
「い、いえ……。何でもありません……。あ!ルリ様達が行ってしまいますよ!」
私は話をはぐらかすと、森の奥へ消えたルリ様達の後を追う。
私はただ、お嬢様から聞いた物語の人物の様に、二人の間に愛が芽生えない事を祈るばかりだった。
クリアに狩りの基本を教えながら、私達の頭上の木を移動していく、ルリ様。
クリアはその言葉にコクコクと頷きながら、その後を付いて行く。
ルリ様を信頼しているのか、それしか方法を知らないのか……。
私はゴブリンさんの肩の上に乗りながら、ウサギさんと一緒にその後を、ゆっくりと追っていた。
「……今日はコトリの監視が無かったんですか?」
沈黙が嫌で、ウサギさんに話しかける私。
本当はルリ様やクリアについての意見を貰いたかったのだが、空気が重くなりそうなうえに、ゴブリンさんや、当の二人に聞かれても、気まずい為、適当な話題を振った。
「そうなんッスよね。いつも、ご主人とリミア、じゃなかった、クリアを監視してるはずなんッスけど、今日は姿が見えなかったッス」
頭の後ろで腕を組みながら「何かあったんッスかね?」と、興味なさげに呟くウサギさん。
興味が無いと言うよりは、あいつなら大丈夫だろう。と言う信頼から来る余裕なのかもしれない。
……まぁ、実際に興味が無いと言う線も考えられるが……。
「そうですか。それは、心配ですね」
正直、私も、そこまで事態を深刻には捉えていなかった。
まぁ、精々、食事や休憩に席を外しただけだろう。
仮に何かあっても、お嬢様を除けば、戦闘力として、ずば抜けて最強なコトリなら、なんとかできる気がした。
「……あ、獲物を見つけた様です」
ルリ様から糸を通して発せられた信号を、ウサギさんに伝え、その場で足を止める。
木の上を見上げてみれば、ルリ様とクリアが二人で、遠くの一点を見下ろしていた。
きっと、あの視線の先に標的がいるのだろう。
「便利ッスよね。その糸。何でご主人はボクに繋げてくれないんッスかね?」
私は試しに、糸を通してルリ様に聞いてみる。
「……なんか気持ち悪いから。らしいです」
私がストレートにルリ様からの返答を伝えると、ウサギさんは「なんスかそれ……」と言って、項垂れた。
「……ルリ様って、ウサギさんに対しては、いつも素直ですよね」
感謝なども含め、感じた事を率直に伝えるルリ様。
これ程、気を遣わずに、思いを相手に伝えるなんて、ルリ様はウサギさんの事を、相当信頼しているに違いない。
少なくとも、私を信頼する以上には……。
「扱いがぞんざいなだけッスよ。まぁ、ボクもその方が気が楽で良いッスけどね」
溜息を吐きながら、諦めた様に呟くウサギさん。
何を言われても、余裕そうに見える態度……。
ハッ!これが、男同士の友情と言う奴なのだろうか?!
お嬢様から、男同士の友情から愛へ発展する話を何度か聞いた事がある。
よく見れば、ウサギさんは美人さんに見える上に、自由奔放に見え、ムードメーカーでありながらも、ちゃんと筋は通す、良い人だ。
加えて、ルリ様が心を許しているとなれば……。
もし、ウサギさんがライバルになれば、かなりの強敵かも知れない。
「……?どうしたッスか?」
警戒する私の心を見抜いたのか、小首を傾げるウサギさん。
大人びた体型から繰り出される、子どもの様な動作は、その落差から、一段と可愛らしく見えた。
「い、いえ……。何でもありません……。あ!ルリ様達が行ってしまいますよ!」
私は話をはぐらかすと、森の奥へ消えたルリ様達の後を追う。
私はただ、お嬢様から聞いた物語の人物の様に、二人の間に愛が芽生えない事を祈るばかりだった。
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