異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

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崩壊

第129話

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 「確かこの辺りに……」
 ルリ様はよく動くので、すぐに糸が切れ、連絡が取れなくなってしまう。
 木の上に上り、ルリ様達が消えた方向へ向かって行くと、視界の隅で、何か、大きな物が動いた気がした。
 
 改めて辺りを見回してみるが、何もいない。見間違いだろうか?
 
 「あ、多分、あそこッスよ」
 ウサギさんが指さす方向、そこには地面に倒れるシカがいた。
 私達は顔を見合わせると、頷いて、木の上を伝って、そちらの方向へ近寄る。
 
 「おぅ!お前ら!遅かったな!」
 目的の場所に近づくと、案の定、倒れたシカの近くに立っていたルリが、地面から木の上の私達に向かって、手を振って来た。
 
 ……どうやら、本当に、生き物を抵抗なく、殺せるようになったらしい。
 私は、複雑な気分になったが、このままボーッとしている訳にもいかないので、木の上から飛び降り、ルリの元へ向かう。
 
 ツンツン……。
 そんなルリの傍で、不思議そうにシカの死体を、木の枝で突っつくクリア。
 そう言えば、先程のイノシシの死骸にも、同じような事をしていた様な……。
 
 「どうしたんだ、クリア?」
 私の視線につられ、クリアを見たルリ様が、クリアに質問する。
 
 「……起きない」
 シカの死体を見つめたまま、小さく呟くクリア。
 もしかしたら、寝ていると、勘違いしているのかもしれない。
 
 「まぁ、そりゃぁ、死んでるからな……」
 当然の事を、当然の様に語るルリ様。
 しかし、平然とそんな事を言えるルリ様は、やはりルリ様じゃないような気がして、苦手だった。
 
 「死んでる……」
 死体を突っつくのを辞めたクリアは、何を考えているのか、それでも死体を、じっと見つめ続ける。

 死と言う概念は彼女の記憶の中にある為、理解できないという訳ではないのだろうが、何か感じるものがあったのだろうか?
 
 「……んで、このシカはどうするんだ?ここでバラしていくのか?」
 クリアからウサギさんへ視線を移して、質問するルリ様。
 
 「ん~……。それも良いんすけど、汚れるんで、いつも川で洗い流しながらさばくんッスよね。なんか、そっちの方が、身が締まって、美味しくなる気がするッスし」
 元、草食動物とは思えない発言だが、まぁ、私たち虫も主食だったことを考えるに、彼は肉食にも適用出来ているのかもしれない。
 
 「まぁ、ボク、生肉食うと、腹壊すんッスけどね!」
 気持ちの良い笑顔で答える彼。
 
 「じゃあ食うなよ!」
 私の心の声と、ルリ様の声が一致した。
 
 「だって、この体のせいか、草だけじゃ、お腹が満たされなくなって来たッスし、ボクだって、皆と同じもの食べたいッスもん!挑戦して行かないと、進化って、出来ないんすよ?!」
 最後は、とても子どもっぽい理由だが、彼の言う事には一理あった。

 挑戦しないと進化は出来ない。挑戦しないと成長は出来ない。
 リスクを冒したくない私には、耳が痛くなる言葉だ。
 
 「お前はすごいなぁ……。向上心があって」
 素直に感心を表すルリ様。
 
 「そりゃあそうッスよ!現状に甘んじて、ぬくぬくしているご主人様なんて、すぐに追い抜いて、主従関係を逆転させてやるッス!」
 真っ向から勝負を挑んで行く、ウサギさん。
 
 「ほぅ……。それは楽しみだな、奴隷ウサギよ……。ここでその心の牙を折ってやるのは簡単だが、我はそのような無粋な真似などせぬ……。その時が来れば、正々堂々勝負しようではないか!」
 ルリ様は気分が乗って来たのか、子どもの様に、はしゃぎ出す。
 私に対しては、絶対に見せないような側面だ。
 
 「いや、そこは調教し直して、折って欲しいッス……」
 突然、冷静な態度をとるウサギさんに、ルリ様は恥ずかしさからか、肩を震わせていた。

 彼をここまで振り回せるのは、ウサギさんだけではないだろうか?
 二人はそれだけ、深い関係なのかもしれない。
 ……やはり、ルリ様争奪戦の敵には、回したくない相手だった。
 
 そんな騒がしい彼らの横で、それでも、クリアはシカの死体を見つめ続けていた。
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