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向上心
第139話
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「あ。どういたしましてッス……」
俺からタオルを受け取ろうとして、こちらを振り向いたウサギ。
しかし、次の瞬間、その動きが止まった。
「……って!素っ裸じゃないッスか!」
俺の姿を見て、飛び跳ねる様に距離を取ったウサギ。
服は血で真っ黒に染まってしまったので、着る気にならず、かと言って、素早く、しっかりとした服を縫えるほど、俺の糸の操作技術は高くなかったのだ。それに何より、糸が勿体ないし、面倒くさい。
それに、大事な所は、髪と俺に抱き着いているクリアが隠している。
ただ、これは………。面白い。
「まぁ、良いじゃねぇか。お前ウサギだし、俺、中身男だし、よく考えてみれば、この体だって、感覚があるだけの、ただの糸だろ?」
俺が、意地悪な笑みを浮かべながら近寄って行くと、ウサギは「そう言う問題じゃないッス!」と言って、目を手で覆いながら、後ろへ下がって行く。
「なんだ?ウサギは、俺の裸に興奮するのか?」
更に楽しくなって来た俺は、挑発的な声色で質問する。
「興奮するッス!興奮するから止めるッス!」
一瞬で敗北を認めるウサギ。
もっと粘るかと思っていたのだが、こうも、あっさり認められてしまうと、熱が冷めてしまう。
「これを羽織るッス!」
目を覆いながら、いつも背負っている吊る下げ式の、サンドバックの様な袋から、動物の皮を取り出し、俺にかぶせて来るウサギ。
「あ、あぁ……。ありがとう」
俺はそれを素直に受け取ると、羽織った。
……なんだか、そんな反応をされると、俺まで恥ずかしくなってくる。
「……羽織ったぞ」
俺はウサギのせいで赤くなってしまった顔を、背ける様にして、答える。
「…………本当ッスか?」
それでも、こちらを向かないウサギ。疑り深い奴なのか、ただ単に、俺に信用が無いだけなのか。
……なんか、そう考えると、ムカついて来たな。
俺はお前を信頼していると言うのに……。
「知らん!嘘だと思うなら、一生そうしてろ!俺は行くからな!」
ウサギの横を通り過ぎながら、捨て台詞を吐く俺。
「え?えぇ?!それは、毛皮を羽織っていても、羽織っていなくても、困るッス!」
抵抗を諦めたのか、俺のほうを見て、駆け寄ってくるウサギ。
そうだ、最初から、素直にそうしていれば良いのだ。
「じゃま」
毛皮の下で、俺に引っ付いていたクリアが、何かを呟いた。
と、その瞬間、俺の羽織っていた毛皮が宙を舞う。
俺達は予想外の事態に、固まってしまった。
「キャァァァァッス!」
正気に戻ったウサギが脱兎のごとく森の奥へ消え去って行く。
「………クリア?」
俺は、抱き着いて離れない、小さな悪魔に声を掛ける。
「パパ。服いらないって言った。それに、私にぶつかって邪魔」
悪意を感じさせない、その瞳。
「…………はぁ」
俺は大きくため息を吐いた。
俺からタオルを受け取ろうとして、こちらを振り向いたウサギ。
しかし、次の瞬間、その動きが止まった。
「……って!素っ裸じゃないッスか!」
俺の姿を見て、飛び跳ねる様に距離を取ったウサギ。
服は血で真っ黒に染まってしまったので、着る気にならず、かと言って、素早く、しっかりとした服を縫えるほど、俺の糸の操作技術は高くなかったのだ。それに何より、糸が勿体ないし、面倒くさい。
それに、大事な所は、髪と俺に抱き着いているクリアが隠している。
ただ、これは………。面白い。
「まぁ、良いじゃねぇか。お前ウサギだし、俺、中身男だし、よく考えてみれば、この体だって、感覚があるだけの、ただの糸だろ?」
俺が、意地悪な笑みを浮かべながら近寄って行くと、ウサギは「そう言う問題じゃないッス!」と言って、目を手で覆いながら、後ろへ下がって行く。
「なんだ?ウサギは、俺の裸に興奮するのか?」
更に楽しくなって来た俺は、挑発的な声色で質問する。
「興奮するッス!興奮するから止めるッス!」
一瞬で敗北を認めるウサギ。
もっと粘るかと思っていたのだが、こうも、あっさり認められてしまうと、熱が冷めてしまう。
「これを羽織るッス!」
目を覆いながら、いつも背負っている吊る下げ式の、サンドバックの様な袋から、動物の皮を取り出し、俺にかぶせて来るウサギ。
「あ、あぁ……。ありがとう」
俺はそれを素直に受け取ると、羽織った。
……なんだか、そんな反応をされると、俺まで恥ずかしくなってくる。
「……羽織ったぞ」
俺はウサギのせいで赤くなってしまった顔を、背ける様にして、答える。
「…………本当ッスか?」
それでも、こちらを向かないウサギ。疑り深い奴なのか、ただ単に、俺に信用が無いだけなのか。
……なんか、そう考えると、ムカついて来たな。
俺はお前を信頼していると言うのに……。
「知らん!嘘だと思うなら、一生そうしてろ!俺は行くからな!」
ウサギの横を通り過ぎながら、捨て台詞を吐く俺。
「え?えぇ?!それは、毛皮を羽織っていても、羽織っていなくても、困るッス!」
抵抗を諦めたのか、俺のほうを見て、駆け寄ってくるウサギ。
そうだ、最初から、素直にそうしていれば良いのだ。
「じゃま」
毛皮の下で、俺に引っ付いていたクリアが、何かを呟いた。
と、その瞬間、俺の羽織っていた毛皮が宙を舞う。
俺達は予想外の事態に、固まってしまった。
「キャァァァァッス!」
正気に戻ったウサギが脱兎のごとく森の奥へ消え去って行く。
「………クリア?」
俺は、抱き着いて離れない、小さな悪魔に声を掛ける。
「パパ。服いらないって言った。それに、私にぶつかって邪魔」
悪意を感じさせない、その瞳。
「…………はぁ」
俺は大きくため息を吐いた。
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