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向上心
第144話
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「ヴワゥ!」
シカを見かけた地点へと、たどり着いた俺達。
すると、地面の方から、ゴブリン達が、余裕そうに声を掛けて来た。
「おぉ……。すごいな」
ゴブリン達の傍には、見事に、首を上から下に、石刃の槍で貫かれたシカが倒れていた。
きっと、あの木の上から、シカの首目掛けて、槍を投げたのだろう。
一撃で致命傷を与えられるとは、流石、やり投げの名手、ゴブスケだ。
一応、その槍の尾尻には、俺の糸で出来た縄が、括り付けられている。
万が一、獲物が暴れても、その縄の先を木の幹などに結び付け、獲物を逃がさない為の物だが、どうやら、ゴブスケには不要な代物だったらしい。
俺はシカに手を合わせると、ゴブスケを通して、ゴブリン達にシカを川まで輸送するように頼む。
川へ向かうまでの道では、シカの死体を引きながら、ゴブリン達が興奮したように何かを話し合っていた。
きっと、狩りが予想以上に上手く行って、喜んでいるのだろう。
「……ルリ様。問題ないですか?」
子どもの様に燥いでいるゴブリン達を横目に歩いていると、コグモが話しかけて来た。
「ん?何の問題だ?」
ゴブリン達には、特に問題は無いと思うが……。
「あの……。狩りの件です」
言いにくそうにしながらも、言わずに放って置く事は出来なかったらしい。
「あぁ、大丈夫だ。慣れた……って、言えばそこまでだが、まぁ、必要な犠牲と割り切れる様になったよ。……たとえ、奴らに意思があったとしても、仲間の命には代えられないからな」
勿論、無駄な犠牲を出す気も無い。
自分達が食べる分だけ、生きるのに必要とする分だけだ。
「……そうですか。……私はルリ様が自身で納得して、傷つくようなことが無ければ、それで良いです」
複雑な感情を隠す様に笑う彼女。
多分、彼女にも何が正解なのかは分からないのだろう。
見方次第で、正解はいくらでも変わるのだ。仕方が無い。
「……でも、まぁ、犠牲を出さない方法も考えて行きたいな」
俺は前を向いたまま、呟く。
「そうですね……。そうなれば、一番良いですね」
隣を歩くコグモも、前を向いたまま、独り言のように呟いた。
誰も傷つかずに済む方法……。
たとえば、脳の無い、植物だけを食べて生きる事ができれば、それも可能な気がする。
……そうだな。そう言う研究をするのも有りなのかも知れない。
飽く迄、俺達の納得の行く方法だと言うだけで、植物からしたら堪ったものではないだろう。
しかし、極論、世界はすべては原子の塊にしか過ぎないし、前世の世界で携帯に使われる1gのレアメタルを採取する為に、貧民の子ども3人分以上の命が使われていようと、何食わぬ顔で、買い替えるのだ。
結局、他人がいくら不幸になろうと、俺達がどう感じて、どう考えるかだけの問題でしかない。
そして、その傲慢さを常に忘れないように、生きて行こう。
そうすれば、少なくとも、俺達が後悔する事は減るだろうから……。
「犠牲にした分、俺達は幸せに生きような」
何となく、思った事を口に出す俺。
「そんなの嫌ですよ……。だって、私達の人生じゃないですか」
コグモが苦虫を噛み潰した様な、それでいて、精一杯に明るい笑みで笑いかけて来る。
「……そうだな」
結局俺達は、自分が一番可愛い。
他人の命よりも、自分の命よりも、自分の心が、価値観が可愛い。
だから、俺は、自分に胸を張って可愛がれる心を育てよう。
そう思った。
シカを見かけた地点へと、たどり着いた俺達。
すると、地面の方から、ゴブリン達が、余裕そうに声を掛けて来た。
「おぉ……。すごいな」
ゴブリン達の傍には、見事に、首を上から下に、石刃の槍で貫かれたシカが倒れていた。
きっと、あの木の上から、シカの首目掛けて、槍を投げたのだろう。
一撃で致命傷を与えられるとは、流石、やり投げの名手、ゴブスケだ。
一応、その槍の尾尻には、俺の糸で出来た縄が、括り付けられている。
万が一、獲物が暴れても、その縄の先を木の幹などに結び付け、獲物を逃がさない為の物だが、どうやら、ゴブスケには不要な代物だったらしい。
俺はシカに手を合わせると、ゴブスケを通して、ゴブリン達にシカを川まで輸送するように頼む。
川へ向かうまでの道では、シカの死体を引きながら、ゴブリン達が興奮したように何かを話し合っていた。
きっと、狩りが予想以上に上手く行って、喜んでいるのだろう。
「……ルリ様。問題ないですか?」
子どもの様に燥いでいるゴブリン達を横目に歩いていると、コグモが話しかけて来た。
「ん?何の問題だ?」
ゴブリン達には、特に問題は無いと思うが……。
「あの……。狩りの件です」
言いにくそうにしながらも、言わずに放って置く事は出来なかったらしい。
「あぁ、大丈夫だ。慣れた……って、言えばそこまでだが、まぁ、必要な犠牲と割り切れる様になったよ。……たとえ、奴らに意思があったとしても、仲間の命には代えられないからな」
勿論、無駄な犠牲を出す気も無い。
自分達が食べる分だけ、生きるのに必要とする分だけだ。
「……そうですか。……私はルリ様が自身で納得して、傷つくようなことが無ければ、それで良いです」
複雑な感情を隠す様に笑う彼女。
多分、彼女にも何が正解なのかは分からないのだろう。
見方次第で、正解はいくらでも変わるのだ。仕方が無い。
「……でも、まぁ、犠牲を出さない方法も考えて行きたいな」
俺は前を向いたまま、呟く。
「そうですね……。そうなれば、一番良いですね」
隣を歩くコグモも、前を向いたまま、独り言のように呟いた。
誰も傷つかずに済む方法……。
たとえば、脳の無い、植物だけを食べて生きる事ができれば、それも可能な気がする。
……そうだな。そう言う研究をするのも有りなのかも知れない。
飽く迄、俺達の納得の行く方法だと言うだけで、植物からしたら堪ったものではないだろう。
しかし、極論、世界はすべては原子の塊にしか過ぎないし、前世の世界で携帯に使われる1gのレアメタルを採取する為に、貧民の子ども3人分以上の命が使われていようと、何食わぬ顔で、買い替えるのだ。
結局、他人がいくら不幸になろうと、俺達がどう感じて、どう考えるかだけの問題でしかない。
そして、その傲慢さを常に忘れないように、生きて行こう。
そうすれば、少なくとも、俺達が後悔する事は減るだろうから……。
「犠牲にした分、俺達は幸せに生きような」
何となく、思った事を口に出す俺。
「そんなの嫌ですよ……。だって、私達の人生じゃないですか」
コグモが苦虫を噛み潰した様な、それでいて、精一杯に明るい笑みで笑いかけて来る。
「……そうだな」
結局俺達は、自分が一番可愛い。
他人の命よりも、自分の命よりも、自分の心が、価値観が可愛い。
だから、俺は、自分に胸を張って可愛がれる心を育てよう。
そう思った。
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