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向上心
第165話
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「助走無しで飛び上がるのは大変だが、風に歯向かわない様に走って、翼を広げながら、空気に乗る様に羽ばたけば……。こうやって、高い所から出なくても、飛ぶことができる」
そう言って、河原から飛び立つパパ。
今は、飛び降りれるような場所が無い、開けた場所での離陸を練習していた。
「コツは、地面を足でけるのではなく、翼を使って全身を空中へゆっくりと上げて行く感覚を掴むことだ!下手に地面を蹴ると、バランスを崩して、せっかく掴んだペースを逃してしまうからな!」
パパは空中で私達の周りを旋回しながら、伝えて来る。
私はパパの指示通り、翼を広げて走る。
走って羽ばたいて、走って羽ばたいて……。
……うう~ん……。
走りながら、風を生み出す様に、翼をテンポよく動かすのは、思った以上に、難しかった。
「……あ。……見てください!私飛べましたよ!」
そんな私と比べて、すぐに飛び立つコグモさん。
その速度にはパパも驚いたようで「おぉ~」と、目を丸くして、感心していた。
「よく、そんなに簡単に飛び立てたな。走るのと、翼で風を生むのとを同時で進行させるのは、かなり難しいんだが……」
やはり、パパもそう感じていた様で、空中で旋回しながらコグモさんに話しかけていた。
「そうなのですか?うう~ん、そうですね……。普段から色々なパーツを、意識的に使っているので、脳が作業の並行処理に慣れているのかもしれません」
「なるほどな……。流石コグモだ」
「いえ……。それほどでも……」
恥ずかしそうに顔を赤らめるコグモさん。
その後も、二人は楽しそうに会話をしながら空中を旋回し続ける。
完全に、二人だけの世界だった。
「んぐぐぐぐぅっ……」
思わず私は顔を俯け、片手でこぶしを握る。
単純に、あの女に負けた事が悔しかった。
そして、何より、私がこんなに心配しているのに、敵と戯れるパパが憎らしかった。
パパは私だけに構っていれば良いのに……。
私はイライラを力に変えると、飛行の訓練を再開する。
走る事よりも、翼をバタつかせ、イラつきを発散させる事に重点を置くと、思った以上に、すんなりと体が持ち上がった。
そうか、本当に、走る事には集中する必要が無かったんだ……。
「パパー!みて!私も飛べたよ!」
一生懸命に羽ばたいて、二人の元へ向かう。
「ほら、一回転だ。凄いだろ?」
「それぐらい。私に出だって出来ます!……ほら!」
私の存在を忘れ去って、楽しそうにする二人。
私はハチドリの要領で空中に停止すると、糸で投網を作り出す。
「パパのバカ~~~!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
それをパパめがけて投げつけると、当然の様にパパは糸に絡まって落ちて行く。
ふと我に返って、ひやりとするが、パパの体はただの糸だ。落ちた所で死ぬ事は愚か、骨折する事も無いだろう。
そもそも、私を忘れて、敵と仲良くしているパパが悪いのだ。
一度、地面に叩きつけられて反省すると良い。
その場に停滞して、パパが落ちて行く姿を観察していると、コグモさんがこちらを見て、苦笑しているのに気が付いた。
考えてみれば、コグモさんに当てればよかったのだ。
何故、パパに向かって投げてしまったのだろう。
我ながら、馬鹿な事をしてしまったと後悔する。
「パパー!待ってー!」
私はコグモさんと二人のフライトに耐えられなくなり、自ら墜落させたパパの後を、まるで、他人の仕業のようなリアクションを取って追いかけた。
そう言って、河原から飛び立つパパ。
今は、飛び降りれるような場所が無い、開けた場所での離陸を練習していた。
「コツは、地面を足でけるのではなく、翼を使って全身を空中へゆっくりと上げて行く感覚を掴むことだ!下手に地面を蹴ると、バランスを崩して、せっかく掴んだペースを逃してしまうからな!」
パパは空中で私達の周りを旋回しながら、伝えて来る。
私はパパの指示通り、翼を広げて走る。
走って羽ばたいて、走って羽ばたいて……。
……うう~ん……。
走りながら、風を生み出す様に、翼をテンポよく動かすのは、思った以上に、難しかった。
「……あ。……見てください!私飛べましたよ!」
そんな私と比べて、すぐに飛び立つコグモさん。
その速度にはパパも驚いたようで「おぉ~」と、目を丸くして、感心していた。
「よく、そんなに簡単に飛び立てたな。走るのと、翼で風を生むのとを同時で進行させるのは、かなり難しいんだが……」
やはり、パパもそう感じていた様で、空中で旋回しながらコグモさんに話しかけていた。
「そうなのですか?うう~ん、そうですね……。普段から色々なパーツを、意識的に使っているので、脳が作業の並行処理に慣れているのかもしれません」
「なるほどな……。流石コグモだ」
「いえ……。それほどでも……」
恥ずかしそうに顔を赤らめるコグモさん。
その後も、二人は楽しそうに会話をしながら空中を旋回し続ける。
完全に、二人だけの世界だった。
「んぐぐぐぐぅっ……」
思わず私は顔を俯け、片手でこぶしを握る。
単純に、あの女に負けた事が悔しかった。
そして、何より、私がこんなに心配しているのに、敵と戯れるパパが憎らしかった。
パパは私だけに構っていれば良いのに……。
私はイライラを力に変えると、飛行の訓練を再開する。
走る事よりも、翼をバタつかせ、イラつきを発散させる事に重点を置くと、思った以上に、すんなりと体が持ち上がった。
そうか、本当に、走る事には集中する必要が無かったんだ……。
「パパー!みて!私も飛べたよ!」
一生懸命に羽ばたいて、二人の元へ向かう。
「ほら、一回転だ。凄いだろ?」
「それぐらい。私に出だって出来ます!……ほら!」
私の存在を忘れ去って、楽しそうにする二人。
私はハチドリの要領で空中に停止すると、糸で投網を作り出す。
「パパのバカ~~~!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
それをパパめがけて投げつけると、当然の様にパパは糸に絡まって落ちて行く。
ふと我に返って、ひやりとするが、パパの体はただの糸だ。落ちた所で死ぬ事は愚か、骨折する事も無いだろう。
そもそも、私を忘れて、敵と仲良くしているパパが悪いのだ。
一度、地面に叩きつけられて反省すると良い。
その場に停滞して、パパが落ちて行く姿を観察していると、コグモさんがこちらを見て、苦笑しているのに気が付いた。
考えてみれば、コグモさんに当てればよかったのだ。
何故、パパに向かって投げてしまったのだろう。
我ながら、馬鹿な事をしてしまったと後悔する。
「パパー!待ってー!」
私はコグモさんと二人のフライトに耐えられなくなり、自ら墜落させたパパの後を、まるで、他人の仕業のようなリアクションを取って追いかけた。
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