異世界転生 ~生まれ変わったら、社会性昆虫モンスターでした~

おっさん。

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向上心

第166話

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 「まぁ、今回は放置した俺も悪かったが、俺以外の人に、こう言う事しちゃ、駄目だからな……」
 自らに絡まった糸を解きながら、それ程怒った風も無く、呟くパパ。

 それ程すんなりと、自身の間違いを認められてしまうと、私もそれ以上、文句を言う気にはなれず、素直に「はい……」と答えるしかなかった。
 
 「分かってくれれば良いんだ……。よし、解けたぞ」
 そう言って、パパは私の作り出した、即興の投網を返してくる。
 
 「あ、ありがとう、ございます……?」
 なんと言って、受け取れば良いのか分からず、尻すぼみになってしまう声。
 
 「ん……。ちゃんと、お礼言えたな。偉い偉い」
 パパは優しく声でそう言うと、私の頭を撫でてくれる。

 気持ちが良い。安心する。いつまでも、こうされていたい。
 それだけで、私は今までの色々がどうでも良くなって、目を細めながら、その手の動きに、身を任せた。
 
 「もう、あまり甘やかしては駄目ですよ。怒るところは怒らないと……」
 私達の空間に、呆れた様な声を上げて、コグモさんが入って来る。
 そのせいでパパの手は止まってしまった。
 
 邪魔な奴だ。……いや、きっと邪魔をしているのだ。
 この人はこうやって、私とパパの中を引き裂こうとしているに違いない。
 私はパパの後ろに隠れながら、恨めしい視線でコグモさんを睨みつける。
 
 「良いだろ、別に。俺しか困ってないんだから」
 私を抱き寄せる様にして、かばってくれるパパ。
 嬉しくなった私は、パパの体に抱き着きながら、ざまぁ見ろと、コグモさんに挑発的な視線を送る。
 
 「……ほら、ルリ様が甘やかすから、クリア様、悪い顔、してますよ?」
 そう言って、パパに報告するコグモさん。
 本当に、意地の悪い奴だ。

 その声につられて、パパが横にいた私の顔を見る事は予想出来ていたので、私は満面の笑みで、その視線に答えた。
 
 「ん~………」
 私の笑顔を見て、渋い顔をするパパ。
 今見ている私の笑顔よりも、あの女の話を信用しているらしい。
 
 ありえない。あの女は敵なのに。
 ありえない。私より、他の人を信じるなんて。
 私のパパなのに。私だけのパパなのに……。
 イライラする……。イライラするぅ!!
 
 ガブッ!
 「いてっ!」
 私は近くにあったパパの手を思いっきり噛む。
 当然、パパはそれを振り払うように手を振った。

 「コラ!クリア!」
 怒るように声を上げるパパ。
 私は怯んでしまいそうになるが、寸での所で持ちこたえると、二人から距離を取る。
 
 「バーカ!パパなんて、その女に食われて死んじゃえば良いんだ!バーカ!バーカ!パパのバーカ!」
 私は捨て台詞を吐くと、森に向かって走り出す。

 悔しい。怖い。悲しい。寂しい。いろんな気持ちが心の中でぐちゃぐちゃに混ざり合って、思考や行動を制御できない。

 目的地なんてない。何かを考えての行動でもない。
 ただ、不安を振り切る様に、脚を動かす。ただそれだけだった。
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