ふたりでゲーム

るふぃーあ

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「ケンローンの角折りは10分かからなかったのに・・・・・・」

女神はその時のことを思い出したのか、ため息をつく。

「ですよね。バトルハンマーもうまくなりましたね」

風が強くなり、女神は軽く髪留めを押さえた。いちいち動作が絵になる人だ。

「教官がうまく、振り向きでスタン取ってくれたから。スタン行くよーって言ってくれたから溜めてたし」
「あとの二人は麻痺無しでしたからね、ちょうどタイミング合わせたんですよ」
「うん・・・・・・ってだから教官、敬語はいいって言ってるのに」
「ここはリアルですから」
「じゃあ、ゲーム内でもやめてくれる?」
「いやあ、中の人が誰かって分かっちゃうと、どうしても、ですね」
「むかしみたいなので良かったのに・・・・・・おいJJ!次、閃光弾用意!みたいな」
「はは。そうもいきませんよ」

じっとりと汗が出る。
普段あまり女の子と話す機会も少ないというのに、学園の頂点に立つ美少女が目の前なんて、緊張するなという方が間違っている。
JJだと思えばいいんだろうけど。

「ちゃんと、前みたいな命令口調でお願いします」

にこ。
初めてこちらをまっすぐに見つめてくる。いや反則だろこれ。見とれちゃうだろ。

「ど、努力します・・・・・・」
「ほんとにー?」

口元をすぼめて、人差し指の先を軽く唇に押し当てる。もうたまりません。
努力はしますが、畏れ多くてできません。ていうか、女神とほぼ毎日スカチャしながらゲームしてるってバレただけで、二年や三年生の怖い人達からどんな目にあうやら。

「だ、だから、リアルでは知らんぷりってことで、お願いしたはずなんですが」
「ああ、そうそう。ごめんね、呼び出しちゃって。カノジョさんに怒られるね」
「いませんし、これからもありえません」
「そうなの?かのん教官、優しいのにね。って、もう予鈴か」

タイミング良く、きーんこーんかーん、と予鈴が鳴り響いた。

「教室、戻りますか」
「ん。じゃ、要件だけ。これパパにもらったチケット。今週日曜、朝9時に大宮駅集合、誰にも言わないこと。いいですか?」

手のひらに細長い紙切れが押し付けられる。は?ナニコレ?

「がんばろうね、教官!」



四限目は数学だった。好きな分野のはずだったが、うまく頭に入らない。
机の下から、何度目か分からないがチケットをそっと取り出して見る。

「モンバスフェスタ 2022 最強バスター決定戦!」

場所は東京ビッグサイト、受け付け時間は10時から。
フェスタってのは知ってる。二人一組で、会場に設けられたブースでモンスターを倒す。
より短時間でモンスターを討伐できたものが勝ち。
ウワサには聞いていたが、まさか自分が出場することになるとは思わなかった。

それも、女神と。
というか、だ。
ビッグサイトまででかける、ということは。
デート、だ。たぶん二人で。

女神とデート。女神とデート。デートが女神。
人生初デートが、女神と。
この学園の男ドモの、誰もが一度は夢想した「女神とデート」のチケットが、いま僕の手の中にある。

休み時間が終わって、教室に帰ってきた時に浴びせられた痛い視線を思い返す。
嫉妬、興味、怒り、羨望、それらがないまぜになった視線という名のレーザービーム。このチケットは誰も見せられない。周囲の全てが敵だ。
そっとサイフを取り出し、チケットを一番奥にしまう。

「直樹、なに話してたの?女神センパイと」

数学の授業が終わり、昼メシ時になってから、二つ隣の席の美沙がやってきた。

「おうおう。オメーに女神様がなんの用があるってんだ?」

少し離れたところから、タカシまでやってくる。

「いや、その、生徒会に出す文化祭の企画プリント、無くしちゃったもんで」
「は?それだけでわざわざ副会長が会いに来るの?なんで?」

美沙は詰め寄ってくる。

「ハハハ。おい美沙、油断したら女神様に直樹がとられちゃうぜ?」
「な、なにいってんのよっ!そんなわけないでしょっ!」

美沙が、いつもどおりのデカイ声で叫ぶ。

「怒んなよ・・・・・・まあ、女神様はカレシ作らないって断言してるしな。残念ながら」

タカシがややひるんだように言う。

「別にあたしは直樹がどうってんんじゃないわよ!心配しただけなの!」
「はいはい分かってますって。で、ホントにそんな用事だけで女神がわざわざ?」
「あ、ああ。うん。昨日生徒会室に行ったら、明日渡しますって言われたから」

タカシはふんふんと頷いているが、美沙はまだ疑っているような顔つきだ。

「あの人も義理堅いお方だねえ・・・・・・しかしまだこのオレの魅力に気づかないとは・・・・・・くーっ、もったいねーぜ!」
「あんたの魅力なんてどこにあるのよ?」

美沙の一言に、タカシは動じる様子もない。

「おめえみたいなお子ちゃまには、オレみたいな大人の男が醸しだす、深い味わいにはだな・・・・・・」
「加齢臭の間違いじゃないの?最近アンタ、ちょっとクサイわよ?」

さすがにこれには傷付いたのか、タカシはぐっ、と変な声を出して黙りこむ。

「直樹、嘘ついてないよね?」

美沙はまっすぐな瞳で見つめてくる。ごめん、美沙。

「うん、本当ホント」
「そ。じゃあいいけど」

他にも聞き耳を立てていた奴らがいたが、概ね納得したらしく、みんなパラパラと弁当を広げだす。
なんとなく居心地が悪くなり、中庭の木陰で食べるか、と弁当を持って立ち上がった。
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