ふたりでゲーム

るふぃーあ

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それから2時間、時刻が23時を回るまで、女神はゆっくりと話をした。

それは、彼女がまだ芸能界にいる頃の話。
小さい頃からモデル学校に行き、ようやく雑誌に載るようになるまでの苦労、母親の狂気じみた芸能界への熱望、トップの座を巡る、子供ながらの嫌がらせ、先輩からの圧力。

そして、性的搾取。
途中から、女神はティッシュで目を拭いながら、話し続けた。

「・・・・・・お母さんは、私の仕事がうまくいくととっても喜んでくれて、それを励みに頑張ってた。楽しいこともたくさんあったし。有名な人に会えたりして、私も舞い上がってた。でも、ある時から、それが始まったの。・・・・・・怖かった。とても」

見知らぬ男と二人にされ、これも仕事だから、と二人で風呂に入れられて。
いろいろなところをいたずらされて。そして。

「・・・・・・だからって、もう、どうせ綺麗な身体じゃないんだからって、何度も・・・・・・相手をさせられて、すっごく痛くて、その仕事をさせられた日は、毎晩泣いたの。・・・・・・口の中に、しろ、とか言われて」

途中から、涙声でうまく話せない。

「生理が来てないからって中に出されて、マネージャーさんがあとで拭いてくれたけど、食べ物も喉を通らなかったの。何かを口に入れるとそのことを思い出して、無理矢理食べなさいって言われたけど、食べてはトイレで嘔吐して、また食べて、吐いて・・・・・・」

女神の独白は続く。

「とうとう、収録の後で倒れちゃって、それで一度お家に帰ったの。それで、お父さんとお姉ちゃんが一体どうしたの、って聞いてくれて、やっとお話が出来て・・・・・・」

父親は、全てを母親に任せて安心し切っていた。
それまで一切怒ったことのなかった穏やかな父親はその場で激昂し、母親を何度も殴りつけたのだという。

「お父さんとお姉ちゃんは、私がそんなことさせられてるのを知らなくて、もうこれからそんなことは絶対にさせないって・・・・・・事務書の人に電話して、病気で引退する、ってことになったの。お母さんも、私が入院している間にベッドのところについてくれて、ずっと謝ってくれた。ううん、お母さんのことは恨んでないの。お母さんは私のことを思ってやってくれてたんだし、なんであんなことを承知してしまったのか、今では本当に馬鹿な親だった、て今も言ってくれてる。でも」

ひと呼吸置く。

「でも、ね、その時に何度かそういう事があって、病院で検査したら、病気に、えっと、せ、性病にかかってる、て診断されたの。卵管が細くなってしまって、もう治らないそう。今後も妊娠しにくい身体になる可能性が高いです、ってお医者様は言ってた。お父さんも、お母さんも、その時は中学生だったお姉ちゃんも、みんな一緒に泣いたの」

・・・・・・それはそうだろうな。まだ小学生の、幼い女の子の将来を奪ってしまったのだから。

「それからは、もう一切を辞めて、この埼玉の小学校へ転校した。最初はうまく話せないこともあったけど、まわりの友達もみんないい人ばっかりで、だんだんと辛い記憶は無くなっていった。・・・・・・でも、私は男の人が怖かった。今でもまだ、お父さん以外の人はちょっと怖い。それとは別に、周りの男の子も怖かった。小学生の頃はまだそうでもなかったけど、中学になり、高校生になって、みんなが噂するようになったの。あいつ、絶対処女じゃないぞーって。芸能界だからさ、やりまくりだったんじゃね?とか、そんな風に。全部当たってたし、それを知られるのが怖かった」
「・・・・・・」
「もし誰かを好きになったとしても、私はこんなに汚れた身体になってる。それを知って、その人に軽蔑されたり、落胆させてしまうのが怖かった。もしかして、優しい人ならそれでもいいよ、そんなふうに言ってくれる人がいるかもしれない、でも、学校の人に言いふらされちゃうかもしれない。ある日、学校にいくとみんなが本当の私を知ってしまって、男の子も、女の子の友達もみんなが軽蔑の眼差しで私のことを見る、そんな夢を何度も見た。だから決めたの、もう私は誰かを好きになる資格はない、誰かに愛される資格もない、もし許してくれる人がいたとしても、それは結果的に、その人を穢すことになるんだって」
「・・・・・・・」
「だから、私はずっと一人でこれからも生きていくつもりだった。お父さん、お母さん、お姉ちゃんがいてくれて、守ってくれるあの家で。高校を出たらあの家にひっそりと暮らして、優しいおばあちゃんのお世話をしようって。おばあちゃんは知らないの、こんな私の本当の姿を。だから今でも優しくしてくれる。おばあちゃんが知ったら、きっと可哀想な子、って思ってくれるけど、やっぱり汚れた自分を知られるのは嫌だったの。友達も、親友も、誰にもこんな事話せなかった。・・・・・・ごめんなさい」

最後のは、涙声になったことへの謝罪だ。

「でも、でもね、昨日かのんくんにあっためてもらって、すごく嬉しかったの。ああ、やっぱり人と触れ合うのって楽しいし、温かいし、なんていうか、溶かされちゃうなあーって。でもね、お姉ちゃんにあのあと言われたの、本当の事を隠している間に、相手の人に誤解を与えちゃって、それが深まれば深まるほど、後々その人を苦しめる事になるからって。優しい男の子はきっと、そんなのいいよ、僕が許してあげるからって、そう言うかもしれない。でも、それはきっとその人を将来を奪ってしまう。・・・・・・いつか、性病にかかったような女と一緒にいる事を・・・・・・後悔する、こど、子供も産めないような女であることが、重荷になる時がやって来る、それはもう分かっていた・・・・・・こと。かのんくんに言わなくてもいいけど、これ以上のおつき合い、は、出来ない、ってこと、を、ちゃんと、伝え、て、き、きなさい、って」

最後はもう、言葉になってない。
抱きしめた腕の中で、彼女は本気で泣き始めた。もう、これ以上話すのは無理だろう。
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